ほりうち(ccbu8181) 2017-10-31 22:57:57 |
[別紙資料]
海底観測網データが初めて鉄道の地震防災対策に活用開始へ 【背景】 海域で発生する巨大地震は我が国に甚大な被害をもたらしており、平成23年東北地方太平洋沖地震に引き続き危惧される東日本太平洋沖の地震や近い将来に高い確率で発生が懸念される南海トラフ巨大地震への対策は、我が国にとって重要課題の一つであります。国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)では、海域で発生する地震・津波を広域かつ多点でリアルタイムに観測するため、東日本太平洋沖を中心とする日本海溝沿いに日本海溝海底地震津波観測網(S-net:※1)を、南海トラフ巨大地震の想定震源域に地震・津波観測監視システム(DONET:※2)を整備・運用しています。これらの海底地震津波観測網を活用し、海域で発生する地震を早期に検知して迅速な情報伝達を行うことにより、我が国の地震防災対策の向上への貢献を目指しています。 【鉄道での地震防災対策】 東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)、東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)、西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)ではそれぞれ、地震時の新幹線の安全確保のために、地震を早期検知し緊急停止する地震防災システム(※3)を導入しています。これまでの地震防災システムでは陸上に設置された地震計の情報が用いられてきました。防災科研と公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)では、海底地震観測網の情報により地震を早期検知し列車の制御に活用することを目的とした共同研究を実施し、活用手法や情報処理・配信方法についての提案を行いました。 【S-net データの利活用】 S-net 海底地震計データの地震防災対策での活用に向けて、防災科研とJR東日本及びJR東海は、平成26年度に海底地震計データの試験的な配信に関する協力協定を締結し、防災科研と鉄道総研の共同研究の成果であるデータ伝送方式を活用して、平成28年度より房総沖の海域での加速度計データの試験配信を開始しました。試験配信データを用いた列車の運行制御に活用する検証ができたことから、今回防災科研とJR東日本及びJR東海はそれぞれ、実際に地震時の列車の運行制御に活用するための安定的なデータの実配信に関して相互協力協定を締結いたしました。これに基づき平成29年11月1日より房総沖の海域のS-net データの実配信を開始し、JR東日本における新幹線の地震防災システムでの海底地震計データの活用が始まります。 【DONET データの利活用】 地震の際にDONET 海底地震計データを地震防災対策へ活用することを目的としたデータ配信に向けて、今回防災科研とJR東海及びJR西日本はそれぞれ相互協力協定を締結いたしました。この協定に基づき、防災科研と鉄道総研の共同研究の成果を活用して、防災科研は平成30年度にかけてDONET 加速度計データを配信するシステムを構築し、平成30年度中に試験配信を開始する予定です。そして平成31年度よりDONET データの新幹線の運行制御への活用を目指しています。 【まとめと今後の展望】 これらの取組は、世界最大規模の海底地震津波観測網及びそれを活用するための共同研究の成果が、社会基盤である新幹線をはじめとする鉄道の安全性の向上のために実装される初めての事例となります。 防災科研は我が国の防災力向上に向けて、地震津波観測網を活用した成果の社会実装をさらに進めてまいります。 【協力内容】 防災科研―鉄道総研:海底地震観測網の地震早期検知への活用のための共同研究 防災科研―JR東日本:S-net データの利活用 防災科研―JR東海:S-net データ及びDONET データの利活用 防災科研―JR西日本:DONET データの利活用 ※1:日本海溝海底地震津波観測網(S-net) 2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生、房総半島から東北地方一帯にかけて甚大な被害が発生しました。これを受けて防災科研は、関東から東北、北海道に至る日本海溝・千島海溝南部に沿ってS-net(Seafloorobservation Network for Earthquakes andTsunamis along the Japan Trench)と呼ぶケーブル式の地震計・津波計から構成されるリアルタイムの連続観測を行うシステムを構築しました。観測網は観測装置と海底ケーブル及び陸上局からなり、太平洋沖の5 つの海域(@:房総沖 A:茨城・福島沖 B:宮城・岩手沖 C:三陸沖北部 D:釧路・青森沖)と日本海溝の E:海溝軸外側の計6海域の150カ所に観測点を整備しています。観測装置は地震計(速度計、加速度計)と津波計(水圧計)等で構成され、水深8,000m まで設置可能な耐圧容器に収納されています、各観測点のデータは光ファイバー海底ケーブルで伝送され、さらにそこから地上通信回線網で防災科研や気象庁等の関係機関に送信されています。 ※2:地震・津波観測監視システム(DONET) 南海トラフ海域では近い将来巨大地震の発生が懸念されています。過去に発生した巨大地震の想定震源域のうち、紀伊半島沖から室戸岬沖にかけての海域にDONET(Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)と呼ばれる海底観測網を展開しています。これは国立研究開発法人海洋研究開発機構が開発・整備したもので、現在は防災科研に移管・運用されています。計51 カ所の観測点が構築されており、各観測装置は小さい振動や大きい振動、地殻変動のようなゆっくりとした変動から地震のような細かい振動まで、あらゆる種類の信号をキャッチできるよう、多種類のセンサー(強震計、広帯域地震計、水圧計、ハイドロフォン、微差圧計、温度計)から構成されています。データ伝送方法はS-net と同様で、リアルタイムで関係機関に送られています。DONET は海中ロボットで観測機器を設置し、コンセントの役割を果たすノードと呼ばれる機器や海底ケーブルに接続することで観測点を構築します。センサーの交換や観測点の増設など、拡張性と置換性に優れているところが特徴です。 ※3:新幹線の地震防災システム 高速で走行する新幹線では、地震の発生を早期に検知し、いち早く列車を停止させることを目的として、各鉄道事業者が地震防災システムを構築しています。このシステムでは、早期に地震を検知するために鉄道沿線だけでなく、海岸や内陸部の鉄道沿線から離れた箇所にも各鉄道事業者が地震計を配置しています。地震発生時には、各地震計が検知した情報および緊急地震速報(気象庁)の情報より列車緊急停止の警報を発報し、変電所にて送電を停止することで、大きな揺れが到達する前に緊急のブレーキ動作を行う仕組みとしています。 |
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