ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2017-04-17 23:57:29 |
X.復旧方法
1.犀角山トンネル(参考資料 P13) 変状状況に応じた覆工補強、剥落対策を行うとともに、高森方出口から40mまでについては地山の切り取り撤去を行い、坑門を再設置する。 ・高森方40m付近においては、トンネル内に 490mm程度の横ずれが生じており、修復するためにはトンネル断面の大幅な拡幅が必要である。一方、トンネル周辺の地山及びトンネル出口斜面の地質は脆弱であること、第一白川橋りょうの復旧にあたり施工ヤードとして平場を確保しなければならないことから、トンネル出口方(高森側)の地山を切り取り撤去した上で、高森方の坑門を40mセットバックして、再設置する。また、第一白川橋りょう側の斜面については、動態観測の継続とともに、吹付枠工やグランドアンカー工による斜面補強を行う。 ・その他の箇所のうち、変状の大きい箇所については、補強対策として、ロックボルトやインバートの設置、既存内巻(鋼製支保工や吹きつけモルタル)の撤去、再構築を行う。変状の小さい箇所においては、浮き上がったコンクリートのたたき落とし、ひび割れ箇所の補修を行った上で、剥落対策としてFRP(繊維補強プラスチック)帯板及びFRPネットの設置等を実施する。 2.第一白川橋りょう(参考資料 P14) 復旧に当たっては、 ・起点方の側径間(1A−1P間)の一部の部材では、座屈変形や降伏応力に達する変形が生じており、架け替えが避けられない程の甚大な損傷を受けていこと ・上部工全体にわたり、支点の変位に伴い部材に大きな応力が発生し、特に、下弦材に引張降伏応力及び座屈応力が働いている可能性が高いことが構造解析により確認され、橋りょうの広範囲で部材の耐力が低下している可能性が高いこと ・仮に各部材を補強や交換する場合、支点変位による部材にかかる応力を解放した後、部材の残留応力や残存耐力を評価する必要があり、これに非常に多くの時間を要すること等の理由により、早期復旧を図る観点からは、上部工全体を架け替えざるを得ない と考える。 復旧に当たっては、以下の手順で進めることとなる。 @施工ヤードの整備 犀角山トンネルの出口方(高森側)地山を切り取り撤去し、橋りょう架け替え工事のための施工ヤードを整備する。 A斜面の補強及びブロックの設置工事 崩壊した斜面を補強するとともに、橋りょう撤去の準備作業として、橋りょうの下弦材を支えるブロックを斜面上に設置する。 B橋りょう下部工の補強工事 損傷した橋りょうの下部工(基礎部)を補強するため、コンクリート及び増し杭(マイクロパイル)を打設する。 C鉄塔及びケーブルの設置工事 橋りょう撤去の準備作業として、上弦材を支える鉄塔及びケーブルを設置するとともに、橋りょうの部材を撤去するためのワイヤー式つり上げクレーンを設置する。 D橋りょう部材の撤去 E橋りょうの新設 ・橋りょうの下部工については、基礎部に対する補強を行えば、上部工を支持するのに必要な性能まで回復できるものと考えられる。 3.戸下トンネル(参考資料 P15) 変状状況に応じた覆工補強、剥落対策、トンネル全長にわたる排水溝の再構築をそれぞれ実施する。 ・トンネル入口から約60m付近までは、大きな変状や覆工背面に空洞が見受けられることから、内巻、ロックボルト、裏込め注入を実施する。 ・その他の箇所においては、浮き上がったコンクリートのたたき落としやひび割れ箇所の補修を行った上で、剥落対策としてFRP帯板及びFRPネットの設置等を実施する。 ・トンネル全長にわたり、中央にある排水溝の撤去、再構築を行うとともに、道床交換を実施する。 ・第一白川橋りょう側の斜面については、トンネル坑口の上方、下方を含めて一体的な対策(石積擁壁の改修や吹付工等)が必要と考えられる。 4.立野橋りょう(参考資料 P10) 1P〜4Pの各橋脚について、以下の通り補修を行う。 1P:橋脚の全周を鋼板による巻き立て 2P:基礎コンクリートの拡幅、アンカーの再設置 3P、4P:ひび割れ箇所、ブロックが浮いている箇所に鋼板を当てて補修 5.斜面・擁壁(参考資料 P11) ・石積み擁壁については、ブロック積み擁壁に再構築する。なお、軽微なものについては鋼材で固定する。 ・崩壊した斜面については吹付枠工を、落石が懸念される箇所には落石防護柵等の設置を行う。 6.長陽駅〜中松駅間(参考資料 P12) ・被害の大きい 2箇所の盛土は、現盛土を撤去して、良質土を用いて安定勾配(斜面の崩壊が生じにくい勾配)により再構築する。その他、軌道陥没箇所の復旧や軌道整正等を実施する。 Y.復旧見通し・復旧費用 X.の復旧方法を前提として設計・工事が実施された場合の復旧見通し(設計・工事期間)及び復旧費用(概算)について検討したところ、以下の通りの結果となった。 最も復旧に時間を要するのは第一白川橋りょうの5年程度となっている。これは、架け替えが必要となるとともに、その前工程として、施工ヤードの整備等犀角山トンネルの工事を先行して実施する必要があるためである。 復旧費用については、全体で約65〜70億円と試算された。これは原形復旧を基本とした場合の概算工事費である。 今後、詳細設計等を行うことにより、工期や費用等について精査されるものと考えられる。 表 南阿蘇鉄道の復旧見通し、復旧費用(概算) ┌─────┬────────┬─────────┬────────┐ │ │ 被災箇所 │ 復旧見通し │復旧費用(概算)│ │ │ │(設計・工事期間)│ │ ├─────┼────────┼─────────┼────────┤ │立野〜長陽│第一白川橋りょう│ 5年程度 │約40億円 │ │ ├────────┼─────────┼────────┤ │ │犀角山トンネル │ 3年程度 │約20〜25億円│ │ │戸下トンネル │ │ │ │ ├────────┼─────────┼────────┤ │ │立野橋りょう │ 1年程度 │約5億円 │ │ │擁壁の損傷・斜面│ │ │ │ │の崩壊等(18箇所)│ │ │ ├─────┼────────┤ │ │ │長陽〜中松│軌道の変状等 │ │ │ │ │ (20箇所)│ │ │ ├─────┴────────┴─────────┼────────┤ │ 合 計 │約65〜70億円│ └────────────────────────┴────────┘ Z.その他 南阿蘇鉄道の復旧に当たっては、地域公共交通としての役割・機能や観光圏や広域周遊ルートにおける位置付け等を踏まえ、当該鉄道路線を将来にわたり復興後の南阿蘇地域の地方創生等に資するものとする必要がある。このため、他地域において地域鉄道の活性化に成功している事例等も参考にしつつ、長期的なビジョンを持って、復旧の在り方を検討することが重要であると考えられる。 |
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