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No.1538 (Re:232) 【国土交通省】旅客フェリー火災の安全対策をIMOで検討
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2016-11-28 22:01:14
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省                          PressRelease
MinistryofLand,Infrastructure,TransportandTourism

                          平成28年11月28日
                          海事局安全政策課
                          船員政策課

 旅客フェリーの火災安全対策を国際海事機関(IMO)で検討することが決定
        〜IMO第97回海上安全委員会の結果概要〜


 平成28年11月21日から25日にかけて,英国ロンドン国際海事機関(IMO)本部にて,第97回海上安全委員会(※1)が開催されました。主な審議結果は以下のとおりです。
1.旅客フェリー(※2)の火災安全対策について,今後IMOで検討を進めることが合意されました。
2.旅客船の損傷時復原性基準(※3)について,適切な強化度合いとすべきという日本の懸念が理解され,継続審議されることとなりました。
3.救命艇に換気機能を設けるべきという日本提案が採用され,今後IMOで検討を進めることが合意されました。
4.極域航行船舶に乗組む船員の訓練及び資格要件について、この海域の特性に対する教育訓練等に関するSTCW条約附属書改正案が採択されました。

(※1)海上安全委員会は,船舶の構造・設備,危険物の取扱い,海上の安全に関する手続,安全の見地からの配員,その他海上の安全に直接影響のある事項を審議し,関連する国際条約の採択,改正及び各国への通報,条約の実施を促進する措置の検討等を実施する委員会です。
(※2)旅客フェリーは,自動車等が自走して船内に入れるように,船舶の全長の相当の部分にわたって区画の無い区域を有する旅客船のことをいいます。
(※3)損傷時復原性基準は,座礁・衝突等による損傷箇所からの浸水が発生した際に,船舶の転覆・沈没を防ぐための構造基準を意味します。

1.旅客フェリーの火災安全対策
(1)背景

 今次会合において,欧州連合加盟28カ国から,旅客フェリーの車両積載区域の防火基準の見直しについて,今後IMOで検討を行うよう提案がありました。
 欧州連合加盟28カ国は,旅客フェリーの車両甲板で火災が発生した際に,車両が密接していたため,消火活動時に発火源にスプリンクラー水が届かない,機動性が制限される等の問題や,船側開口部からの火災の拡大により救命設備を利用できない等の問題事例が認められたと報告しており,これら問題事例を解決するための対策をIMOで検討することを求めています。
 我が国も,昨年北海道苫小牧沖でフェリー火災事故が発生しており,これを受けてとりまとめた旅客フェリーの火災対策を紹介する文書をIMOに提出しております。

(2)審議の結果
 今後IMOにおいて旅客船の車両積載区域の防火基準の強化に関する検討を進めることが合意され,平成29年3月に開催される第4回船舶設備小委員会から審議が始まる予定です。今後,IMOにおいて合理的な国際規制案が策定されるよう,貢献してまいります。

2.旅客船損傷時復原性基準
(1)背景

 2012年にイタリアで起きたコスタ・コンコルディア号の座礁・転覆事故を受けて,IMOでは,旅客船の損傷時復原性要件の強化に向け座礁・衝突等による損傷浸水時の非転覆確率に関する要件について審議が行われています。
 2016年5月に開催された第96回海上安全委員会において,旅客船の損傷時復原性基準の改正案が承認されましたが,現行基準を大幅に高める内容であり,特に最大搭載人員が1000人以下の新造旅客船の設計が困難になる恐れがあることに加え,費用対効果が低いとの問題がありました。
 このため,今次会合において,我が国は同じ懸念を有する諸国と連携して,合理的な基準修正案を提案しました。

(2)審議の結果
 最大搭載人員が1000人以下の新造旅客船への設計影響及び安全性と経済性の両立の重要性を主張した日本提案に対し,各国から支持が集まり,今次会合においては,旅客船の損傷時復原性基準の改正案は採択されず,次回会合(2017年6月開催予定)にて再度審議されることとなりました。

3.救命艇の換気要件
(1)背景

 2013年にインド洋で大型コンテナ船が折損事故を起こした際に,退船に使用された救命艇が完全密閉構造であったため,艇内の二酸化炭素濃度が上昇し,具合を悪くした乗組員が複数いたとの証言がありました。
 このため,救命艇に乗艇時の乗組員の安全を確保する観点から,全閉囲型救命艇に適切な換気機能を備えることを要件化する提案を日本から行いました。

(2)審議の結果
 上記日本提案が大多数の支持を受け,平成29年3月に開催される第4回船舶設備小委員会から具体的な要件についての検討を開始することが決定されました。

4.極海における船舶の運航に係る1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約(STCW条約)附属書及びコードの改正案の採択
(1)背景

 近年,北極海の海氷の減少に伴い,北極海航路の活用の可能性が高まっているほか,クルーズ船等の航行海域も南極海にまで広がりを見せています。
 このため,IMOでは,極海を航行する船舶の安全確保及び環境保護を目的として,極域特有の危険性を考慮した関連条約の規則改正が進められてきました。既に海上人命安全条約附属書及び海洋汚染等防止条約附属書の改正案及び具体的な規制内容を定めた極海コードが採択されています。

(2)審議の結果
 今次会合では,極域を航行する船舶に乗組む船員に対し、この海域特有の氷海における航海計画、航海術及び航海設備等の取扱いに関する訓練及び資格要件に係るSTCW条約附属書及びコードの改正案が採択され,2018年7月1日に発効見込みとなりました。これを受け,国土交通省では,国内法化に向けて検討を進めています。
                                    以上