NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.557 【国土交通省】JR東・西が新幹線改修引当金を積立可能に
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2015-12-23 19:04:36
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省                            PressRelease
MinistryofLand,Infrastructure,TransportandTourism

                            平成27年12月22日
                            鉄道局

 全国新幹線鉄道整備法第15条第1項の規定に基づく所有営業主体の指定について

 このたび国土交通省において、東北新幹線、上越新幹線、山陽新幹線の土木構造物の状況や東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)の財務 の状況等を審査した結果、JR東日本、JR西日本において予め大規模改修引当金を積み立てることが必要かつ適当であると認められましたので、本日、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)第15条第1項に基づき、JR東日本、JR西日本を同法第16条第1項に規定する所有営業主体として指定いたしました。

1. 指定の内容
 ┌───────┬───────────────┬───────────┐
 │所有営業主体名│  東日本旅客鉄道株式会社  │西日本旅客鉄道株式会社│
 ├───────┼───────┬───────┼───────────┤
 │  路線名  │ 東北新幹線 │ 上越新幹線 │   山陽新幹線   │
 │  区間名  │ 東京〜盛岡 │ 大宮〜新潟 │   新大阪〜博多  │
 └───────┴───────┴───────┴───────────┘

2. 指定の理由

(1)大規模改修の必要性について
 東北・上越新幹線は、今年で開業から33年、山陽新幹線は開業から43年を迎える。それぞれの新幹線における列車の走行を支える土木構造物は、現時点では、適切な維持管理により健全度が保たれているものの、開業から長い年月が経過しているため、将来、経年や高速走行等の影響による構造物の劣化等が進むと予想される。
 老朽化したインフラの確実な維持管理・更新が国家的な課題となっている現在、国土交通省としてはこのような実情を踏まえ、各社の土木構造物の状況を確認したところ、将来にわたる東北・上越新幹線及び山陽新幹線の安定輸送の確保のため、大規模改修が必要となることが認められた。 (土木構造物の実態については別添をご参照ください)

(2)JR東日本、JR西日本の財務の状況について
 東北・上越新幹線の大規模改修に要する費用は、総額約1兆円程度、山陽新幹線の大規模改修に要する費用は、総額約1,500億円程度に上ると見込まれている。
 一方、JR東日本の平成17年度から平成26年度までの10年間の平均営業収益は約1兆9,100億円、平均経常利益は約2,400億円であるところ、長期債務は平成27年度首で約3兆4,000億円に上る。
 また、JR西日本の平成17年度から平成26年度までの10年間の平均営業収益は約8,600億円、平均経常利益は約700億円であるが、長期債務は平成27年度首で約1兆円に上り、JR東日本、JR西日本ともに、営業収益及び経常利益に対する長期債務の割合は依然として大きい。
 JR東日本、JR西日本は、開業以来継続して経常利益を計上し、長期債務も順調に償還しているが、今後の経済状況や金利の動向等によっては、東北・上越新幹線、山陽新幹線の大規模改修費用の調達にリスクを伴う可能性も否定できない。

(3)結論
 以上のとおり、橋りょうやトンネル等において、東北・上越新幹線については、将来、総額約1兆円程度の費用、山陽新幹線については、将来、約1,500億円程度の費用を要する大規模改修が必要であると見込まれている。JR東日本、JR西日本の営業収益、経常利益、長期債務の残高等に照らせば、将来にわたり東北・上越新幹線、山陽新幹線の安定的な輸送を確保するため、一定額を予め引当金として積み立てさせることが必要かつ適当である。

3.今後の予定
 今回の指定によりJR東日本、JR西日本は6ヶ月以内に全幹法第16条第1項、第2項に基づき新幹線鉄道大規模改修引当金積立計画を作成し国土交通大臣の承認を受けなければならないこととなっており、これにより工事費、工事期間、積立額、積立期間が確定することとなる。


【別添】

     東北・上越新幹線、山陽新幹線の土木構造物の実態について

 東北新幹線(東京〜盛岡間)及び上越新幹線(大宮〜新潟間)については、国土の総合的かつ均衡ある発展に資するための全国新幹線鉄道網の一環として、昭和46年に着工し、昭和57年に大宮以北で、昭和60年に上野〜大宮間で営 業を開始した。
 その後、昭和62年の民営化後の平成3年に東京〜上野間が開業し、JR東日本は現在、両新幹線を所有・営業している。東北新幹線については今年6月、上越新幹線については今年11月で営業を開始してから33年が経過した。
 山陽新幹線(新大阪〜博多間)については、国鉄の輸送力増強の一環として、先に開業した東海道新幹線の経験を生かし昭和42年に着工し、昭和47年に岡山まで、昭和50年には博多までの全線で営業を開始した。
 その後、昭和62年の民営化を経て、JR西日本が現在、所有・営業しており、今年3月で営業を開始してから43年が経過した。

1. 各新幹線の特徴について
(1)最高速度
 各新幹線の最高速度は開業当初の210km/hから、東北新幹線(宇都宮〜盛岡間)については320km/hへ、山陽新幹線(新大阪〜博多間)については300km/hへと高速化が図られている。
(2)列車本数
 1日あたりの列車本数について、東北・上越新幹線合わせて上下線で102本(上越新幹線開業時)から255本へ、山陽新幹線については、上下線で94本(岡山開業時)から268本へといずれも倍以上に増加している。

2. 各土木構造物の実態について
 各土木構造物の構成は次表のとおりである。

 東北・上越新幹線 構造物構成
 ┌──────┬──────┬──────┬──────┐
 │ 橋りょう │ トンネル │  土工  │ 線路延長 │
 ├──────┼──────┼──────┼──────┤
 │ 526Km│ 223Km│ 29Km │ 778Km│
 │  67% │  29% │  4%  │ 100% │
 └──────┴──────┴──────┴──────┘
 東北・上越新幹線の9割以上の区間は、トンネルや橋りょうなどの構造物で構成されており、寒冷地や積雪地等を高速走行する路線であることから、これらの構造物は厳しい環境下に置かれている。

 山陽新幹線 構造物構成
 ┌──────┬──────┬──────┬──────┐
 │ 橋りょう │ トンネル │  土工  │ 線路延長 │
 ├──────┼──────┼──────┼──────┤
 │ 201Km│ 280Km│ 70Km │ 551Km│
 │  37% │  51% │ 12%  │ 100% │
 └──────┴──────┴──────┴──────┘
 山陽新幹線の路線の8割以上の区間は、トンネルや橋りょうなどの構造物で構成されており、特に約280Kmと路線の約5割を占めるトンネル区間では、高速走行や振動・空気圧変動等の影響を受けやすい環境条件下に置かれている。

(1)橋りょう
@鋼橋
 経年や列車荷重等に伴う支点(桁と橋脚との接合部)の変状の発生により、支点部に著大な応力が集中し、支点溶接部や桁部材に疲労による亀裂が発生・進展するおそれがあるため、大規模改修が必要と考えられる。
A鉄筋コンクリート橋
 高架橋等の鉄筋コンクリート構造物では、経年とともに大気中の二酸化炭素がコンクリート内に侵入する影響で中性化が進行し、鉄筋の腐食によりコンクリートの剥離・剥落および構造物の強度が低下するおそれがあるため、大規模 改修が必要と考えられる。
 なお、山陽新幹線については、平成11年度に高架橋等からのコンクリート剥落事象が多発したことから、学識経験者等による検討結果を踏まえ、中性化が進行している箇所等について補修が行われてきたが、今後、経年に伴う中性化の進行が想定される箇所等に対する改修が必要と考えられる。

(2)トンネル
 トンネルについては、山岳工法(矢板工法)により施工しているため、覆工コンクリートと地山との間に空隙が残りやすく、経年に伴う地下水による浸食作用によりその空隙が拡大し、覆工コンクリートの耐力に影響を与え、既存のひび割れが進展する。特に高速走行する新幹線では、列車の走行による振動や 空気圧変動がひび割れの発生・進展を助長し、覆工コンクリートの剥離・剥落に繋がるおそれがあるため、大規模改修が必要と考えられる。

(3)土工
 のり面では、雨水の浸透や地下水、凍結融解等の影響により、のり面工背面の地山が風化し土砂化することから、のり面工の安定性が低下するため、大規模改修が必要と考えられる。

3. その他
 前述のように、将来的には大規模改修の必要性が認められるが、大規模改修を行うまでの当面の間は、引き続き適切な維持管理を行えば、安全安定輸送上は問題ないものと考えられる。