NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.1081 (Re:1080) 【国土交通省】添付資料:鉄道車両産業の抱える課題及び対応
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2016-06-21 23:14:45
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省                            PressRelease
MinistryofLand,Infrastructure,TransportandTourism

添付資料

                             平成28年6月20日

     「鉄道車両産業の抱える課題及び対応の方向性」取りまとめ
   〜鉄道車両産業の将来の成長と鉄道インフラの海外展開の推進に向けて〜

1 市場動向と鉄道車両産業の今後の方向性
 我が国の鉄道車両産業を取り巻く環境は大きく変化している。これまで需要の中心であった国内市場は、新造車両の生産が低減傾向にあり、近年は若干回復しているが、今後当面は頭打ちになることが予想される。
 一方、海外市場については、アジアをはじめ、欧州、北米等を中心に今後とも成長が見込まれている。2019年の車両市場は7兆円程度に達するとみられ、国内市場と比べその規模は非常に大きくなっている。
 また、インフラの海外展開は、政府の成長戦略の柱の一つであり、鉄道についても強力に取組を推進している。円借款の鉄道案件向け供与額が増加するなど政府は日本企業による海外案件獲得の支援を行っている。
 こうした状況を踏まえれば、我が国の鉄道車両産業が今後更なる成長を遂げるためには、引き続き重要な市場である国内市場に対応しつつ、海外市場の需要を積極的に取り込む姿勢が不可欠である。
 地域別では、アジアが重要である。アジアは、地理的・心理的に近く、新しい市場であり、その成長度も高い。また、北米、欧州、中東等については、メーカー各社の強みや事情を踏まえた取組が求められる。

2 海外展開に当たっての諸課題と対応の方向性
1 設計能力等生産能力の充実
 我が国の鉄道車両メーカーは、アジアを中心に世界各地で受注を獲得してきたところであるが、最近、我が国の車両メーカーの生産余力、特に設計余力の制約が案件取組への課題となることがあると指摘する声がある。
 これに対し、各社は、採用の拡大、OBや他部門人材の活用、設計作業の外注など、様々な企業努力を行っているが、拡大する海外需要を取り込むためには、車両メーカーの生産能力、とりわけ設計能力を充実させることが重要である。
 具体的には、各社が行っている人材確保策やアウトソーシング努力を継続し、また施策の拡充を検討していくことが必要となるが、加えて、海外向け車両の仕様の検証、国内認証機関の充実等によりメーカーの設計負担の軽減を図ることも求められる。

2 海外メーカーとの競争激化に備えた競争力強化
 各社が海外展開を推進するに当たっては、欧州や中国を始めとする強力な海外メーカーとの競争は避けられない。
 このうち欧州のメーカーは、世界各地に長年にわたり海外展開の経験を有し、多くの生産拠点を設けている。また、中国のメーカーは、欧州のメーカーを上回る世界最大の規模をもって近年海外事業を急速に拡大しており、我が国車両メーカーと競合するケースも増えている。
 こうした状況の中、我が国車両メーカーには競争力の一層の強化が求められる。具体的には、品質、納期遵守等日本の強みを生かした取組の強化、市場のニーズに応じつつ新技術を活用し付加価値を高めた差別化等が求められる。
 また、内外企業と企業ごとの強みを活かした生産活動面での連携を行い、増減する需要にも適切に応えられるよう体制の強化を図ることや、顧客の多様なニーズに応えうる事業規模や充実した製品ポートフォリオ等海外メーカーの強みを参考にすることも必要と考えられる。

3 車両案件のパッケージ化への対応強化
 各国で様々な鉄道プロジェクトが進められる中、近年車両納入と保守サービスをパッケージ化するケースが多くみられるようになっている。こうしたパッケージ化案件は、保守サービスを含めたトータルで事業性を判断できる面があるなど日本の強みを発揮しやすいとの指摘がある。
 このため、車両メーカーには、保守サービスのノウハウが蓄積されている鉄道事業者の参画・支援を得るなど、保守サービスへの対応能力を高める努力が求められる一方、鉄道事業者には、海外事業への参画又は車両メーカーへの支援を通じて当面車両メーカーの海外展開を後押しすることが期待されている。

4 現地生産化要請への対応
 海外案件では、先進国か途上国かを問わず、メーカーに対して一定の現地生産等を要求し、当該国の経済や雇用への貢献を求めるケースが多く見られる。
 例えば、米国では、バイアメリカン政策に基づき、案件により受注額の一定割合以上を米国内で調達し、組立を行うことが法律により義務付けられている。また、インドについては、モディ政権がメイク・イン・インディアを掲げる中、強い現地生産化要請がある。
 現地生産化は、相手国の市場規模等がリスク要因となる一方で、コスト競争力の強化、周辺地域への車両輸出拠点化等のメリットがあるとされる。
 こうした状況を踏まえ、車両メーカーには、現地生産化等への要請に対し、直接投資を含む具体の対応のあり方について早い段階から検討しておくことが求められる。

5 政府等の支援
 民間企業である鉄道車両メーカーの海外展開を進めるためには、設計能力の充実を始めとする諸課題の克服が必要であるが、併せて、民間企業が積極的に取り組もうとするような海外案件がより多く提供されることが重要である。
 このため、国や政府関係機関が、発注者たる外国や自治体に対し必要な働きかけを行うほか、メーカーの負担軽減策を講じるなどの環境づくりを行っていくことが不可欠である。
 具体的には、案件形成段階からの車両メーカーの意向等の十分な確認、海外向け車両の仕様の検証、日本の技術の国際標準化の推進等による日本規格の国際化、国内認証機関の充実等による認証取得の円滑化といった取組が求められる。

3 国内向け車両に係る生産効率化
 国内の鉄道車両市場では、鉄道事業者は、各自の企業努力の一環として、それぞれのインフラ事情や利用者のニーズ等に応じた車両を、車両メーカーとの協働関係を生かし導入している。こうした手法は、高度な安全性や信頼性の確保、そして利便性の向上等を通じ、我が国における世界に例を見ないほど良質な鉄道サービスの実現に貢献している。
 一方で、最近では、車両メーカーが設計負担・生産コストの軽減等のため、独自に車両の標準化に取り組む動きも見られる。また、鉄道事業者においては、車両コストや保守負担の軽減、相互直通運転の円滑な実施等のため、事業者内や相互直通運転を行う事業者間で車両の共通化に取り組むケースが見られる。
 こうした状況を踏まえ、鉄道の安全性の確保に加え、事業者間及びメーカー間の競争、すなわち差別化と車両生産及び運行・維持の効率化のバランス等に留意しつつ、国内において、車両の標準化、鉄道事業者同士による共同調達の実施等、車両メーカー、鉄道事業者等関係者にとってそれぞれメリットのある車両関連施策を推進することが求められる。

4.おわりに
 今回、鉄道車両メーカーはもとより、鉄道事業者等から幅広く意見を聴取したうえで、我が国鉄道車両産業の今後のあり方について、その課題と方向性の取りまとめを行った。
 鉄道車両産業の抱える課題や将来進むべき方向性について、関係者が共通認識を持つことがまずは重要であるが、その上で、関係者が、鉄道車両産業の将来の成長と鉄道インフラの海外展開の進展、さらには我が国鉄道の更なる発展に向けて、具体的取組について検討し可能なものから速やかに具体化していくことを求めるものである。

                                      以上