NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.2508 (Re:2505) 【国土交通省】参考:SMリージョン構想検討会の設置について
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2017-08-26 21:22:19
平成29年8月
国土交通省

 スーパー・メガリージョン構想検討会の設置について

1.背景・趣旨
 (リニア中央新幹線の可能性と、その効果を「引き出す」取組の必要)

○ リニア中央新幹線(以下、「リニア」という。)は、元々は、東海地震などの災害リスクや、施設の経年劣化リスクなどへの備えとして、東海道新幹線を二重系化することを主たる目的として計画されたものである。 

○ しかしながら、経済や産業、価値観が、大きな転換期を迎える中で、リニアを契機とした移動の高速化は、リダンダンシーの確保に留まらない、新たな効果を発揮する可能性があると考えられる。つまり、インターネットの普及で、バーチャル空間におけるヒトや地域の交流・対流が容易になったが、これに加えて、リアル空間においても、画期的な移動時間の短縮によって、ヒトや地域の交流・対流がこれまでにないレベルで促進される可能性がある。

〇 すなわち、経済・産業面では、第4次産業革命とも言われる構造変化の中で、付加価値の源泉が、財やサービスの生産活動から、新たな価値の創造に移りつつある。そして、その多くは、多様な個性やスキルを持つ人と人とのフェイス・トゥ・フェイスの交流・対流によって生み出されるものである。また、物質的にはある程度満たされた長寿社会において、人々の価値観も、モノや資産ではなく、観光や娯楽、癒し、社会参画などに重点が置かれるようになりつつある。そして、それらも、ヒトや地域との交流・対流によるリアル空間での体験によって生み出されるものである。

 したがって、リニアが人口、産業が集積する我が国の国土の中央部の移動時間を劇的に短縮することによって、経済・産業面でも、人々の暮らしの面においても、今までにないヒトや地域の交流・対流が国土の中に創出される可能性が期待される。 

○ このことを国土全体の観点から見ると、リニアによって、次のように、国土構造が大きく変革される可能性があると考えられる。第一に、三大都市圏相互間の移動が約1時間となり、あたかも都市内移動と同等となる。これによって、三大都市圏が一体化し、世界最大の人口と経済規模を有することとなり、関西の医療、文化や、中部のモノづくり、首都圏の情報、金融など、それぞれの都市圏の個性が融合して、新たな価値創造、イノベーションが活発に行われる可能性がある。第二に、東西に長い日本列島中心部の時間距離が大幅に短縮される。新幹線等の他の高速交通網と併せて活用すれば、地方圏と三大都市圏、あるいは、三大都市圏を跨ぐ地方間の移動時間も、大幅に短縮される。これにより、従来は困難であった遠隔な地方圏の個性ある産業間の対流、融合が容易になり、新たな価値創造、イノベーションが日本全域で行われる可能性がある。
 さらには、リニアの中間駅は、自然豊かな地方に設けられる。これによって、大都市と農村の新たな対流と連携によって、従来にはないライフスタイルやビジネススタイルが生まれ、人々の暮らしや働き方に多様性と豊かさを与える可能性がある。 

○ 国土構造が高速交通インフラの進化によって大きく変化することは、我々は、かつての東海道新幹線の開業時に経験している。新幹線が、我が国の経済や社会の発展に大きく寄与する姿を実感するだけでなく、世界の鉄道界の常識を打ち破り、我が国の高度な技術力が世界から注目を集め、敗戦で失われた国民の誇りや自信の回復にも繋がるといった、事前の予想を大きく超える効果を経験した。 

○ このような経験からすると、リニアがもたらす全ての効果を的確に予測することは困難である。しかしながら、明白に言えることは、右肩上がりの高度経済成長期に開業した東海道新幹線では、その整備によって様々な効果が湧き上がるように生まれたのに対して、経済成長が鈍化した現在では、単にリニアを整備するだけで、大きな効果が具現化することは想定できず、効果を引き出すために、より能動的、積極的な取り組みを進めていくことが不可欠だということである。 

○ リニアは、このような能動的、積極的な取り組みを進めることによって、初めて東海道新幹線に匹敵する効果が期待できるものであるが、一方、今日そしてリニアの開業時に向けて、東海道新幹線開業前には存在しなかった次のような好条件が醸成されつつあり、この好条件を最大限活用して、より大きな効果を「引き出す」ことが重要であることを認識する必要がある。即ち現在は、東海道新幹線の開業時とは異なり、新幹線や高速道路など高速交通基盤が相当程度整備され、今後も整備が見込まれる。このような、既存の高速交通基盤を徹底的に賢く使い、互いに連携させれば、三大都市圏に留まらず、東海道新幹線開業時よりも広域的な効果を発揮できる可能性がある。加えて、外からの観光客は、東海道新幹線開業時の 35万人から2千万人へと飛躍的に増大し、今後も更に4千万人、6千万人への拡大を目指し、三大都市の国際空港や地方空港の機能強化も見込まれる。また、貿易取引も大幅に拡大し、国際港湾などの機能も大幅に強化されている。このような海外とのヒト、モノの交流を支えるインフラと、リニアのストック効果を最大限発揮させる取組を適切に行えば、経済、産業の発展に大きく寄与する可能性も考えられる。 

○ これからの我が国は、急速な人口減少と高齢化がさらに進行し社会問題化するとともに、生産年齢人口が急速に減少する中、グローバル化や新興国の発展により、一層厳しい国際競争に直面することになる。このため、新たな価値創造による生産性の向上やビジネスの拡大、個々人の価値観に応じた暮らしの質を高め、海外から人や投資を引き付けられる魅力ある国土の形成に向けて、リニアの効果を最大限に「引き出す」取組を加速させる必要がある。

(検討会の設置) 
○ このような中、平成27年閣議決定された「国土形成計画」では、リニアによって三大都市圏が一体化し、世界からヒト、モノ、カネ、情報を引きつけ、世界を先導する「スーパー・メガリージョン」の形成が期待され、その効果を全国に拡大し最大化するため、スーパー・メガリージョンの形成に向けた構想の検討を行うべきこととされた。また、国会において安倍総理も、リニアにより、三大都市圏が一時間で結ばれ、人口7千万人の世界最大の都市圏が形成され、国際競争力の向上が見込まれること、その効果を大都市圏だけにとどめず、地方創生回廊をつくり上げ、全国を一つの経済圏に統合していくことが大事であること等を述べている。(平成 28年 10月6日参議院予算委員会)

○ すでに、いくつかの地域では、リニア開業の効果を最大限に引き出すべく取組が始まっている。各地域における取組を後押しし、一層の効果を引き出すためには、こうした取組の基本的な方向性について、広範に叡智を集め、広域的かつ分野横断的な検討を経て、その指針となるべきものを明らかにする必要がある。そのため、国、地方公共団体、経済団体が一堂に会し、共通のビジョンの構築を図るべく、本検討会を設置するものである。


2.検討事項

【論点1】経済・産業構造や、人々の暮らし、価値観等が今後大きく変わっていく中で、リニアやその他の高速交通ネットワーク(新幹線、高速道路、航空等)等の整備によって、交流・対流に要する時間の劇的な短縮されることが、ビジネススタイルやライフスタイルにどのような影響を及ぼす可能性があるのか。

@経済・産業、人々の暮らしのスタイルや、価値観は、リニアの整備が進む中長期間に、どう変化する可能性があるのか。その変化において、人の移動に要する時間が短縮することの意味は何か。
Aリニアの開業及びその他の高速交通ネットワークの整備によって、例えば、次の点にどのような可能性があるのか。・新たな価値創造、研究開発、生産方法、働き方、取引関係の拡大、人材の獲得や育成方法などにどのような変化を生じさせる可能性があるのか。・大都市部の高齢者の生きがいや、若者・中高年齢者の自己実現や観光・娯楽・癒しなどに対するニーズの増大等暮らしの質の充実や、そのための新たなビジネスなどに、どのような可能性があるのか。・海外から人や投資を引きつける国際的な魅力の向上について、どのような可能性があるのか。
B新たな交通サービスや交通基盤、都市環境などにどのようなことが望まれるか。
 ※上記について、ビジネスパーソンからの意見を伺う。
 ※尚、リニア開業の見通しは、東京-名古屋間が、2027年頃、東京-大阪間が、2045年頃から最大8年前倒しと想定されている。

 上記に加えて、
Cリニアによって生じる時空間的な人口、産業の集積の増大や、知の対流の活発化の経済効果について、可能な限り定量的な分析を行う。

【論点2】論点1において明らかにされるリニア等の整備効果を「引き出す」ために、各地で共通して取り組むべきことは何か。

@企業、大学や研究機関等の交流・対流を促進し、イノベーションの創出につなげるためには、何が必要で、何に取り組むべきか。
A大都市部の高齢者の生きがいづくりなど、暮らしの質の向上に対するニーズに対応し、これを新たな価値創造やビジネスの拡大につなげるためには、何が必要で、何に取り組むべきか。(セカンドライフにおける新しい幸福を創出するにはどのようにすべきか。)
B地域の文化・伝統を引き出し、新たな価値創造につなげるためには、何が必要で、何に取り組むべきか。
C海外の人と投資を引き付ける魅力ある地域づくりにつなげるためには、何が必要で、何に取り組むべきか。また、海外への情報発信、ニーズの把握はどうするべきか。

【論点3】論点2を踏まえ、論点1において明らかにされる効果を「引き出す」ための国土デザイン、地域デザインの基本的方向をどう設定すべきか。

@三大都市圏の地域づくりで目指すべき基本的な方向はどう設定すべきか。
A中間駅を中心とする地域の地域づくりで目指すべき基本的な方向はどう設定すべきか。特に、中間駅を中心とする地域のプロモーションや地域ブランディングなどを進めていくためには、どのような要素に着目すべきか。
Bリニアの効果を全国に拡大するための方策は何か。特に、インフラの質の向上、進化の基本的方向はどうあるべきか。