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No.5713 (Re:5712) 【国土交通省】リニア中央新幹線静岡工区の進め方について(回答)
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2020-01-17 23:44:53
                            令和2年1月17日

静岡県中央新幹線対策本部長
 静岡県副知事 難波 喬司 殿
                           国土交通省
                            鉄道局長 水嶋 智

      リニア中央新幹線静岡工区の進め方について(回答)

 貴職より令和元年12月25日付「リニア中央新幹線静岡工区の進め方について」において要請のありました事項につきまして、下記のとおり回答いたします。

                 記

1.はじめに 

○リニア中央新幹線(品川・名古屋間)の工事に関しては、全国新幹線鉄道整備法(以下、「全幹法」という。)の規定に基づき東海旅客鉄道株式会社(以下、「JR東海」という。)を建設主体として指名しており、JR東海において関係機関と協議をしながら進められてきたものと理解しています。 

○国土交通省としては、環境影響評価法(以下、「アセス法」という。)や全幹法に基づき、所管部局である鉄道局を中心に、工事実施計画の認可等の必要な手続きを進めて参りました。その後、各工区において、建設主体のJR東海が順次工事に着手してきたところです。 

○一方、静岡工区については、トンネル掘削に伴う大井川の減水に関して、水資源の確保や自然環境の保全等の方策を確認するため、貴県が設けた専門部会の場などを通じて、建設主体であるJR東海と議論や協議が行われており、今日まで工事着手に至っておりません。 

○両者の協議にははかばかしい進展がみられなかったため、令和元年8月には、静岡県知事から国土交通大臣に行われた申入れを踏まえ、「リニア中央新幹線静岡工区の当面の進め方について」を国土交通省、静岡県、JR東海の三者で合意し、国土交通省は専門部会等の議論を見守ってきたところです。


2.これまでの静岡県とJR東海の議論について 

○専門部会の場を中心とした議論は、一般論としては、科学的知見等に基づきながら、両者の間で真摯に議論が行われてきたものと認識をしております。これまでの議論を経て、広範な課題が47項目に絞られてきたところであり、さらに、それらの項目についても精力的なやりとりが行われてきたと認識しており、関係してこられた専門部会の委員や県職員の方々のご尽力に敬意を表する次第です。 

○静岡工区に関する現在の議論は、水資源や自然環境への影響の回避・軽減のための建設主体のJR東海の対応等について、県条例等に基づき貴県自身が検証しているプロセスであると考えられます。このため、国土交通省としましては、個別の論点について評価をすることは必ずしも適切でないと考えておりますが、議論を見守ってきた私どもとして現状の認識を申し上げれば、重点的に議論が行われてきた水資源に関して、主に、 
  @トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方
  Aトンネルによる大井川中下流域の地下水への影響
 の大きな2点についてのJR東海側の説明に対して、専門部会の委員や県職員の方々等の納得が得られていないものと考えています。 

○また、リニア中央新幹線の事業を進めるに当たっては、特に大井川水系に関係する大井川流域市町のご理解を得ることが大切だと思っておりますが、昨年11月に鉄道局が大井川流域市町を訪問した際にも、各市町がご懸念を有しておられるのは主にこれらの点であることを認識いたしました(もちろん、南アルプスの自然環境への懸念のご意見もいただいております)。


3.これからの協議の進め方について

○貴県の関係者の皆様方による検証のプロセスにおいては、昨年10月4日の議論のように、必ずしも貴県とJR東海との議論がかみ合っていない状況が見受けられたところであり、この事態を打開するためには、議論の整理役が必要と思われたことから、同年10月24日に国土交通省の事務次官が静岡県知事を訪問した際に、国土交通省が議論の整理を行う新たな三者協議の場を設けることを提案させていただきました。これに対し、貴県側からは、今般、環境省や農林水産省等の省庁の参画を求められています。

○リニア中央新幹線の建設に関する諸手続の中で、国は全幹法およびアセス法の手続きを進めてきたところであります。言及されている環境省についてもアセス法の手続きの中で、平成26年6月に既に環境大臣から国土交通大臣に対して意見が述べられたところです。上記の@、Aに関して、制度上の接点がなく、法令の手続き上も位置付けられていない関係省庁を当事者として三者協議の場に参加させるとのご提案の趣旨を必ずしも十分に理解できないところではありますが、必要に応じて、国土交通省が関係省庁の知見を活用することも検討したいと思います。 

○そもそも、「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」や「トンネルによる大井川中下流域の地下水への影響」といった課題は、政策的というよりも、科学的・工学的な課題であり、トンネル工学や水文学等の観点から議論を深める必要があると考えています。

○貴県や大井川流域市町の一部が、国土交通省以外の省庁の参加を求めておられるということの意味は、我々の理解といたしましては、国土交通省の職員だけでは、そのような科学的・工学的な議論を行うに足る専門性が不十分ではないか、というご懸念ではないかと思われます。このようなご懸念を払拭するためには、既に提案している三者協議の場とは別に、上記の観点から、残された大きな2つの論点について、他の事例等にも精通したトンネル工学や水文学等の分野の専門家等の有識者からなる会議を設置して、これまで行われてきた議論等を検証し、その結果を踏まえて今後のJR東海の工事に対して具体的な助言、指導等を行っていく方法等が考えられると思います。その人選に当たっては、関係省庁の職員の中に専門的な知見を有する適任者が存するのであれば、そのような方にも入っていただく可能性もあるものと思っております。具体的な方法については、国土交通省が案を作成し、貴県に相談させていただきたいと思います。


4.おわりに 

○リニア中央新幹線の事業を進めていくための重要な要素の1つとして、JR東海が丁寧に地域とコミュニケーションを図っていくことが必要であると考えます。国土交通省としては、平成26年10月の工事実施計画の認可に際し、国土交通大臣から「地域の理解と協力の獲得」等の3点を指示したところです。また、昨年12月には、インフラの建設・運営主体が地域社会との共生を目指して努力を積み重ねてきた他の事例から学ぶことを目的として、成田国際空港株式会社をお呼びして、JR東海とともに交通インフラ整備と地域共生に関する勉強会を開催したところです。
 JR東海には、地域社会との共生を図った他の事例等も参考に、地域との信頼関係構築に向けた取組みを進めていただきたいと考えています。国土交通省としても、そのために必要な調整や協力等を行っていきたいと思います。 

○また、リニア中央新幹線はJR東海の事業ではありますが、国土交通省は、当該事業の所管官庁として、リニア中央新幹線の早期実現とその建設工事に伴う水資源や南アルプス地域における自然環境への影響の回避・軽減を同時に進めていくことが重要であると認識しています。上述の有識者・専門家の知見もいただきながら、建設主体のJR東海に責任を持って説明していただき、工事に当たっての地元の方々の不安を取り除きつつ、適切な方法で工事を進めていくことが大切であると考えます。そのために、国土交通省としても、JR東海を指導、監督していきたいと考えています。

○大きな2つの論点について上記のような議論の場を設けることや、自然環境等、その他の課題について今後引き続き貴県とJR東海との間で行われる議論の進行管理等、今後の進め方について、早急に、貴県と、JR東海、国土交通省鉄道局による三者協議の場において、協議を行いたいと考えておりますので、ご協力をお願いいたします。

○なお、以上の考え方について、令和元年12月25日付の「リニア中央新幹線静岡工区の進め方について」における貴県からの要請に合わせて整理すると別紙の通りとなります。


別 紙
          静岡県からの要請に対する回答について

■静岡県からの要請
1 静岡県とJR東海との対話の交通整理を行う新たな枠組には、国土交通省のほか、環境省や農林水産省など、水資源、自然環境に関連する全ての省庁が参画することを要請する。

◆回答のポイント 
○残された47項目の課題のうち重点的に議論が行われてきた水資源に関して、主に、@トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方、 Aトンネルによる大井川中下流域の地下水への影響、の大きな2点について納得が得られていないと考える。
○これら2点に関して、制度上の接点がなく、法令の手続き上も位置付けられていない関係省庁を当事者として新たな三者協議の場に参加させるとの提案の趣旨を必ずしも十分に理解できないが、必要に応じて、関係省庁の知見を活用することも検討したい。
○これら2点は、政策的というよりも科学的・工学的な課題であり、三者協議の場とは別に、トンネル工学や水文学等の分野の専門家等の有識者からなる会議を設置して、これまで行われてきた議論等を検証し、その結果を踏まえて今後のJR東海の工事に対して具体的な助言、指導等を行っていく方法等が考えられる。その人選に当たっては、関係省庁の職員の中に専門的な知見を有する適任者が存するのであれば、そのような者にも入っていただく可能性もある。具体的な方法については国土交通省が案を作成し、貴県に相談させていただきたい。
○上記のような議論の場を設けることや、自然環境等、その他の課題についての議論の進行管理等、今後の進め方について、早急に三者協議の場で協議を行いたい。

■静岡県からの要請
2 国土交通省として、これまでの静岡県とJR東海との対話の内容について評価し、文書の形で提示することを要請する。

◆回答のポイント 
○専門部会の場を中心とした議論は、科学的知見等に基づきながら真摯に行われてきたと認識しており、専門部会の委員や県職員の方々のご尽力に敬意を表する。
○現在の議論は貴県自身が検証するプロセスであり、国土交通省として個別の論点について評価をすることは必ずしも適切でないと考えているが、現状の認識としては、上記2つの論点についてのJR東海側の説明に対して、専門部会の委員や県職員の方々等の納得が得られていないのではないかと考えている。
○また鉄道局が大井川流域市町を訪問した際にも、各市町がこれらの点に懸念を有していることを認識した。
○国土交通省としては、上述の有識者の知見もいただきながら、JR東海に責任を持って説明していただき、工事に当たっての地元の方々の不安を取り除きつつ、適切な方法で工事を進めていくことが大切であると考えている。
○そのために、国土交通省としても、JR東海を指導、監督していきたい。 
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