ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2020-07-10 01:06:37 |
リニア中央新幹線静岡工区に係る国土交通省提案
令和2年7月9日 国土交通省 1.基本認識 大井川の水資源は流域の地域にとって欠くことのできないものであり、また南アルプスの自然環境は、世界的にも貴重なものである。とりわけ、その生活や経済活動に必要な水を大井川の恵から得ている流域市町においては、歴史的にも水の確保のために様々な困難を乗り越えてきており、これら市町にとって、大井川の水資源は死活的に重要である。 このような認識のもと、現在、国土交通省においては、リニア中央新幹線南アルプストンネル建設に伴う大井川の水資源への影響、その軽減策等を検証する有識者会議を開催している。この会議においては、JR東海から、これまでの検討の結果等について、追加的なデータの提供を含め、詳細な説明を求めつつ、精力的な検討を重ねている。この会議において結論が得られるなど必要な手続きが行われるまでは、水資源への影響等が懸念されるトンネル掘削工事に着手されることがあってはならない。これは、JR東海を含む関係者の共通認識である。 他方で、リニア中央新幹線の整備も、三大都市圏を結ぶ大動脈の二重系化による災害リスクへの備え、巨大な都市集積圏域の形成による我が国の国際競争力の強化、国土構造の変革など、我が国全体にとって極めて大きな社会的・経済的意義を有するものであり、とりわけ災害のリスクを考えたとき、その一刻も早い整備が望まれる。東京−名古屋間の沿線地域においても、2027年開業に向け、リニア中央新幹線の開業効果を地域の発展に結びつけるために、様々な取り組みが行われている。 以上の認識のもと、水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させることが重要であることについては、累次にわたり、静岡県、JR東海とも認識の共有を確認してきた。この共通認識の下、国土交通省としては、大井川の水資源及び自然環境への影響が軽微であると認められる範囲内で、国の有識者会議の議論等と並行して、速やかに坑口の整備等を進めることを提案したい。 2.2つの課題を両立させるための提案 (1)リニア中央新幹線の早期実現にとって重要な南アルプストンネル整備工事においては、工事の拠点となる施工ヤード(西俣、千石、椹島)において、 @宿舎、事務所等の活動拠点の整備(以下「宿舎等整備」という。)を行い、 A濁水処理施設、坑口の整備等、トンネル掘削の前段階の工事(以下「坑口等整備」という。)を行ったうえで、 B斜坑、本坑、導水路トンネル等の掘削(以下「トンネル掘削工事」という。)に着手する こととなる。坑口等整備には、着手後数か月を要する見込みであり、トンネル掘削工事はこれらの坑口等整備完了後でなければ着手できない。 (2)こうした状況の下、現時点で、水資源等への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させる方策として、坑口等整備を速やかに実施することが考えられる。国の有識者会議における議論などトンネル掘削工事の着手に必要な各種の検討・手続きと坑口等整備を並行して進めることができれば、その工期の分だけ全体の工程を前倒しできる。特に、冬季は気象条件によっては、地表面での工事が困難な状況も想定されるため、これを早期に実施する意味が大きい。 (3)宿舎等整備については、昨年までに、「大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境保全に著しい影響を与えるとは考えにくい」(平成30年8月24日:県発出文書)として、静岡県を含む関係自治体の同意のもと、すでに実施されている。坑口等整備以降の工程は、着手に至っていないが、坑口等整備については、宿舎等整備と同様、基本的には陸上部地表面の工事であり、「大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境保全に著しい影響を与えるとは考えにくい」とされた実施済みの工事と工事自体は同等と考えられる。 (4)静岡県や流域市町には、坑口等整備がトンネル掘削工事と一体であり、いわばなし崩し的にトンネル掘削につながってしまうのではないかとの懸念があることは理解するが、これについては、国の有識者会議の議論等必要な検討・手続きが行われるまではトンネル掘削工事に着手しないことについて、JR東海はすでに明言している。また、トンネル掘削には、静岡県知事による河川法に基づく占用許可等が必須であるなど、制度的にも「なし崩し」にならないことは担保されている。 (5)以上の考え方に立って、現時点で水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現を両立させるために、静岡県、JR東海に、下記の点を提案する。なお、流域市町におかれても、この提案の趣旨を十分踏まえた上で御理解賜れば幸いである。 記 1.JR東海は、国の有識者会議における議論等、必要な検討・手続きが終わるまで、トンネル掘削工事に着手しない。 2.静岡県は、坑口等整備の速やかな実施を容認するものとし、7月の早い時期を目途に、必要な手続きを進める。 3.JR東海は記2.の必要な手続きの終了後、坑口等整備を行うが、その際、国の有識者会議の今後の議論等の結果、坑口の位置、濁水処理施設等に変更が必要になった場合には、当該変更を行うことを前提とする。 (注)静岡県においては、県自然環境保全条例上、宿舎等整備を「活動拠点整備工事」、坑口等整備及びトンネル掘削工事を一体として「トンネル掘削工事」として整理し、前者については開発面積が5ha未満であるため条例による環境保全協定は不要である一方、後者については、5haを超えることが確実であるため、協定の締結が必要との見解を示している。 これは、開発行為を工事そのものの水資源・自然環境への影響ではなく工事の目的に基づいて整理・区分したものであると考えられるが、その後、本年4月には、国の有識者会議が立ち上がり、現在、南アルプストンネル建設に伴う大井川の水資源への影響、その軽減策等の検証が、国も加わった枠組みの中で始まっているところである。このような状況の変化を踏まえ、水資源・自然環境への影響の回避・軽減とリニア中央新幹線の早期実現の両立を図るという観点に立った場合に、個別の工事内容自体が周辺環境に与える影響に着目して、開発行為を整理・区分することも条例の運用上ありうると思われることから、静岡県において検討頂ければありがたい。 |
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