NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.8916 (Re:8814) 【国土交通省】JR東の旅客運賃上限変更は認可が適当:運輸審議会
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2022-12-16 23:56:58
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省                         Press Release
Ministry of Land,Infrastructure,Transport and Tourism

                           令和4年12月15日
                        総合政策局運輸審議会審理室

   「東日本旅客鉄道株式会社からの鉄道の旅客運賃(通勤定期運賃)
       の上限変更認可申請事案」に関する答申について


 運輸審議会は、標記事案について期限に関する条件を付して認可することが適当である旨、本日、国土交通大臣に対して答申しました。


 令和4年9月21日付けで国土交通大臣から運輸審議会に対し諮問がありました標記事案について、審議の結果、期限に関する条件を付して認可することが適当であるとの結論に達し、本日、国土交通大臣に対して答申しました(事案の内容、答申結果等は別紙のとおりです)。

 審議における配付資料及び議事概要は以下のURLで公表します。
 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/unyu00_sg_000021.html

○運輸審議会について
 運輸審議会は国家行政組織法第8条に規定する審議会で、個別法の規定に基づき、国土交通大臣の行う許認可等の個々の行政処分等の適否について諮問を受け、これに対して、公平な立場から各方面の意見を汲み上げ、公平かつ合理的な決定を行う常設の機関です。
 当該事案については今後、国土交通大臣が運輸審議会の答申内容等を踏まえて処分を行う見込みです。


別紙

申請者   東日本旅客鉄道株式会社

事案の種類 鉄道事業における旅客運賃の上限変更の認可

事案の内容(概要)
○対象地域 東京の電車特定区間
○定期運賃(通勤)の上限を変更した上で、運賃収入を増加させないことを前提に、変更した増減の範囲内において割増の運賃と割引の運賃を組み合わせた設定(変動運賃制)を実施(上限変更の認可申請書から引用)
○値上率約 1.4%(通勤定期運賃)

運輸審議会答申 期限に関する条件を付して認可することが適当


                              国運審第54号
                           令和4年12月15日

国土交通大臣  斉藤 鉄夫 殿
                   運輸審議会会長  堀川 義弘

             答  申  書

        東日本旅客鉄道株式会社からの鉄道の
        旅客運賃の上限変更の認可申請について

                             令4第3002号

 令和4年9月21日付け国鉄事第349号をもって諮問された上記の事案については、令和4年11月17日東京都において公聴会を開催し、審議した結果、次のとおり答申する。


             主     文

 東日本旅客鉄道株式会社からの申請に係る鉄道の旅客運賃の変更については、期限に係る条件を付した上で、別紙に掲げる額を上限として認可することが適当である。


             理     由

1.申請者は、昭和62年の設立以来、主に関東・東北・上信越エリアにおいて、都市圏輸送や都市間輸送、地域輸送など多様な輸送サービスを提供してきている。中でも首都圏における都市圏輸送については、会社発足当時より、利用者が集中する朝の通勤時間帯を中心とした混雑緩和が重要な経営課題の一つとなっており、ピーク時間帯の輸送力の増強に継続的に取り組んできた結果、朝のピーク時間帯の混雑率(首都圏において申請者が運行する主要17線区22区間に係るピーク1時間の平均混雑率をいう。以下同じ。)は会社発足当時の238%から平成30年度には165%と大幅に低下している。
 一方、令和2年当初からの新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の発出等により、外出自粛やテレワークの浸透等から行動様式の変容がみられ、輸送人員は大幅に減少し、その影響が最も大きかった令和2年度には、朝のピーク時間帯の混雑率は102%にまで低下した。
 申請者は、今後の通勤需要について、新型コロナウイルス感染症拡大前の水準までは至らないものの、一定程度は輸送人員も回復し、それに伴って混雑率も再び上昇することを見込むとともに、利用者のいわゆる「3密」回避や、混雑緩和へのニーズが高まっている状況としている。
 これらを踏まえ、申請者は、ソフト面からの新たな混雑緩和対策についても検討することとなった。この検討の結果、申請者においては、首都圏において、平日朝のピーク時間帯以外の時間帯において割安に利用できる通勤定期乗車券(以下「オフピーク定期券」という。)を導入するとともに、ピーク時間帯も含めた全時間帯で利用可能な通勤定期乗車券(以下「通常定期券」という。)については、全体として増収とならないと想定される範囲において運賃を改定することで、ピーク時間帯に集中する通勤需要を分散させ、混雑の緩和と利用者の利便向上を図るべく、通常定期券について旅客運賃の上限変更認可を申請したものである。

2.国土交通大臣は、鉄道運送事業者からの旅客運賃の上限の変更の認可にあたっては、鉄道事業法(以下「法」という。)第16条第2項に基づき、当該旅客運賃の上限による総収入が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであることを確認の上、法第16条第1項の認可をするものとされている。
 また、鉄道事業者が旅客需要の平準化等による利用者利便の向上を目的に、運賃の上限を変更した上で、運賃収入を増加させないことを前提に、変動運賃制を実施する場合における法第16条第2項の運用方針として、「運賃収入の増加を目的としない運賃の上限の変更に関する処理方針について」(令和4年9月14日付鉄道局鉄道事業課長通達。以下「処理方針」という。)が発出されている。本処理方針においては、総括原価が平年度において変化しないものと取り扱うとともに、運賃収入が増加しないことを「適切な方法で比較及び検証を行」うことで、法第16条第2項の要件を充たすとみなすこととされている。

3.当審議会は、本事案の審議にあたり、公聴会を開催し申請者の陳述及び一般公述人の公述を聴取したほか、当審議会に提出された資料、所管局から聴取した説明等に基づいて検討を行った。その結果は、次のとおりである。
 まず、処理方針は、「第2次交通政策基本計画」(令和3年5月28日)や、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会中間とりまとめ(令和4年7月26日。以下「中間とりまとめ」という。)を踏まえて、現行制度の運用の改善・工夫の観点から発出されたものであり、認可に当たって期限等必要な条件を付すことや、利用者利益の保護にも十分配慮することを求めるなど、その内容についても一定の合理性を有するものであると認められる。
 また、平年度(原価計算期間)である令和5年度から令和7年度までの3年間の総収入は、オフピーク定期券の導入(現行に比較して10%割引)による減収額が120億円と見込まれるのに対し、通常定期券の上限運賃改定による増収額が85億円、オフピーク定期券所持者によるピーク時間帯の利用による普通旅客運賃の収入額が35億円と見込まれるため、申請者の運賃収入額は増加しないと推定される。

4.また、今後の通勤需要やオフピーク定期券の需要見通し及び通常定期券からのシフト効果については、申請者が所管局の指導・助言を受けつつ、企業や利用者を対象として実施した市場調査(令和4年3月)等を踏まえたものである。さらに、通常定期券の上限運賃改定等による増収想定についても、運賃改定時に改定に先立って乗車券を購入するいわゆる「先買い」等の短期的な増減収要素を含め、過去の乗車券の発売実績等を踏まえて検証を行っており、一定の合理性が認められる。
 これらに鑑みれば、本申請は処理方針に掲げる要件を充足しているといえ、本件申請は上記2.の認可基準に適合するものと認められる。
 したがって、法第16条第1項に基づき、国土交通大臣が本件申請を認可することは適当であると認める。

5.ただし、オフピーク定期券の導入は、過去に類例のない取組であり、かつ、上記3.の収入見込については、複数の前提条件で構成された想定に基づいているため、想定された収入と実績が大きく乖離する可能性がある。このため、国土交通大臣は、当該認可にあたっては、期限に係る条件を付すことが適当である。


              要 望 事 項

 主文及び理由5.に記載した条件の設定にあたっては、国土交通大臣は、法第54条第1項及び第2項並びに処理方針の規定も踏まえ、適切なものとなるよう検討されたい。
 また、通常定期券の上限運賃改定にあたって、勤務条件等によりオフピーク定期券を購入できない利用者やその勤務先からも理解が得られるよう制度の趣旨等を丁寧に説明すること、オフピーク定期券の導入にあたっては、利用者や勤務先に対して購入にあたってのデメリットも含めて積極的な周知を行うこと、オフピーク定期券導入後の増収の有無や混雑緩和の状況に係る検証を適切に実施することについて、東日本旅客鉄道株式会社に、指導・助言されたい。
 加えて、上記検証結果及び当該検証結果を踏まえた同社及び国土交通省の対応について、当審議会に適切に報告されたい。その際、国土交通省においては、運賃・料金制度に関し、中間とりまとめにおいて指摘された「現行制度そのものの見直し」の議論も踏まえ、対応を進められたい。
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