NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.3279 (Re:3278) 【国土交通省】なにわ筋線と近畿圏空港ネットワーク調査資料
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2018-04-11 23:50:59
(添付資料)
・近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査(概要)

1.調査の背景・目的
○近年、近畿圏では人口減少が進む一方、訪日外国人客が急増。関西国際空港の利用者も増加するなど、状況が変化。
○こうした中、「なにわ筋線」について地方自治体や鉄道事業者等の関係者による協議が進捗し、関連する複数の事業構想も提起。
○本調査では、近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークについて、今後の関係者による議論を促進するため、人口動態や訪日外国人、空港
利用の動向等の社会経済状況
に関する調査、及び事業構想ごとの需要推計、費用便益分析、収支採算性の検討等を実施。

2.調査対象路線の概要・意義

@なにわ筋連絡線(北梅田駅(仮称)〜十三駅約2.5km)
・なにわ筋線を介して阪急十三駅と大阪都心南部・大阪府南部・関西国際空港とを直結。阪急沿線(京都・神戸・宝塚方面)とこれらの地域とのアクセスを改善。

A新大阪連絡線(十三駅〜新大阪駅約2.1km)
・阪急十三駅と新大阪駅とを直結。阪急沿線(京都・神戸・宝塚方面)と新大阪駅とのアクセスを改善するほか、なにわ筋連絡線及びなにわ筋線を介して新大阪駅と大阪都心南部・大阪府南部・関西国際空港とのアクセスを改善。

B大阪空港線(曽根駅〜大阪空港駅(仮称) 約4.0km)
・阪急宝塚線を介して大阪都心部(梅田周辺)と大阪国際空港とを直結。空港アクセス交通のバスから鉄道への転換を促進。

C西梅田・十三連絡線(西梅田駅〜十三駅約2.9km)(※)
・阪急十三駅と大阪地下鉄3号線(四つ橋線)沿線とを直結。阪急沿線(京都・神戸方面)と西梅田地区・大阪都心南部とのアクセスを改善。
 (※)区間が相当程度重複するなにわ筋連絡線との比較の観点

3.主な整備効果の例
           時間短縮(乗換回数低減)
なにわ筋連絡線整備時 十三〜関西空港約14分短縮(乗換1回→0回)
新大阪連絡線整備時  十三〜新大阪 約11分短縮(乗換1回→0回)
大阪空港線整備時   梅田〜大阪空港約 6分短縮(乗換1回→0回)

           高速交通拠点のアクセス圏拡大
なにわ筋連絡線整備時 関西国際空港90分圏人口約 18万人増
新大阪連絡線整備時  新大阪駅  60分圏人口約 3万人増
大阪空港線整備時   大阪国際空港60分圏人口約122万人増

(※)本検討では、試算の前提条件として、以下のように設定した。なお、表中の短縮時間には、乗換時のホームにおける列車待ち時間は含まれていない。
・なにわ筋連絡線は、なにわ筋線が整備されていることが前提。・大阪空港線は、なにわ筋線・なにわ筋連絡線・新大阪連絡線が整備されていることが前提。
・新大阪連絡線は、なにわ筋線・なにわ筋連絡線が整備されていることが前提。・西梅田・十三連絡線は、なにわ筋線が整備されていることが前提。
・なにわ筋連絡線・新大阪連絡線同時整備は、なにわ筋線が整備されていることが前提。

4.事業性の検討
○各路線ごとに列車の運行本数等が異なる複数のケースを設定し、需要推計・費用便益分析・収支採算性を検討。
なにわ筋連絡線を整備した場合、新大阪連絡線を整備した場合及びこれらを同時に整備した場合、費用便益比・収支採算性ともに概ね良好
大阪空港線を整備した場合、40年間で黒字転換する可能性が低いため、採算性の向上策の検討が必要であるが費用便益比は良好

┌───────┬──────┬─────────┬────┬───────┐
│  路 線  │ 建設費(*1) │  輸送人員/日 │費用  │収支採算性(*2)│
│       │      │         │ 便益比│(累積資金収支)│
├───────┼──────┼─────────┼────┼───────┤
│なにわ筋連絡線│ 約 870億円│約 9.2万〜10.2万人│1.7〜1.8│24〜31年目(*a)│
├───────┼──────┼─────────┼────┼───────┤
│新大阪連絡線 │ 約 590億円│約 5.5万人    │1.4   │27年目    │
├───────┼──────┼─────────┼────┼───────┤
│なにわ筋連絡線│約 1,310億円│約11.4万〜13.1万人│    │       │
│・新大阪連絡線同時整備   │約 4.7万〜 5.6万人│1.7〜1.9│13〜16年目  │
├───────┼──────┼─────────┼────┼───────┤
│大阪空港線  │ 約 700億円│約 2.5万人    │1.4   │  (*b)   │
└───────┴──────┴─────────┴────┴───────┘

*a (但し、累積損益収支が40年目までに黒字転換していないケースもある。)
*b 採算性向上策の検討が必要(40年間で黒字転換する可能性が低い。)

*1 本調査のために一定の前提の下で試算した消費税等を除いた概算値で車両費を含まない。
*2 地下高速鉄道整備事業費補助を活用した場合に整備保有主体の累積資金収支が黒字転換する年次

5.なにわ筋線との相乗効果
○なにわ筋連絡線、新大阪連絡線、大阪空港線の整備により、なにわ筋線の利用者が増加し、整備効果がより高まる可能性あり。
○また、なにわ筋連絡線の整備により、北梅田駅(仮称)においてダイヤ設定の柔軟性が増し、なにわ筋線内で運行可能な列車の本数が増加する可能性あり。これが実現すれば、なにわ筋線の輸送人員が更に増加し、なにわ筋連絡線、新大阪連絡線、大阪空港線の整備効果も更に高まることが期待される。
・各路線整備時のなにわ筋線の輸送人員(人/日)の変化
┌────────────┬──────────┬──────────┐
│なにわ筋線内の本数増加 │増加なし(±0本/時) │増加あり(+4本/時) │
├────────────┼──────────┼──────────┤
│なにわ筋連絡線     │  +約 4.1万人  │  +約 7.5万人  │
├────────────┼──────────┼──────────┤
│新大阪連絡線      │    ※     │  +  0.9万人  │
├────────────┼──────────┼──────────┤
│なにわ筋連絡線     │          │          │
│・新大阪連絡線 同時整備│  +約 4.9万人  │  +約 8.4万人  │
├────────────┼──────────┼──────────┤
│大阪空港線       │    ※     │  +約 0.3万人  │
└────────────┴──────────┴──────────┘

6.なにわ筋連絡線と西梅田・十三連絡線
○採算性は西梅田・十三連絡線がなにわ筋連絡線を上回るものの、費用便益費比は、なにわ筋連絡線が西梅田・十三連絡線を上回り社会的な効用が高い。また、西梅田・十三連絡線の整備は、なにわ筋線と一部競合するため、なにわ筋線の輸送人員が減少する。
○なにわ筋連絡線は、阪急沿線地域(京都・神戸・宝塚方面)と十三駅からなにわ筋線を通じて、関西国際空港との直結性を得ることができ、近畿圏の空港アクセスネットワークがより強化される。
┌──────────┬───────────────┬───────┐
│   比較指標   │    なにわ筋連絡線    │西梅田・十三 │
│          │なにわ筋線内 │なにわ筋線内 │    連絡線│
├──────────┼───────┼───────┼───────┤
│路線の輸送人員   │ 本数増加なし│ 本数増加あり│       │
(なにわ筋線との合計)│約36.3万人/日│約40.8万人/日│約37.3万人/日│
│なにわ筋線の利用者増│+約4.1万人/日│+約7.5万人/日│−約0.1万人/日│
│費用便益比     │   1.7   │  1.7〜1.8  │   1.3   │
│収支採算性     │  31年目  │ 24〜25年目 │  18年目  │
└──────────┴───────┴───────┴───────┘

7.航空需要変動の影響
○ 「4.事業性の検討」では、訪日外国人旅行者数4000万人として、航空需要を設定しているが、訪日外国人旅行者数の変動による影響を試算。
〇4.で検討した複数のケースのうち最も費用便益比が高かったケースについて、以下のとおり訪日外国人旅行者数の高位・低位シナリオを設定し、各路線の事業性への影響を試算。なお、国内需要は一定と想定。

 高位シナリオ:訪日外国人旅行者数6,000万人(2030年政府目標値)
 中位シナリオ:訪日外国人旅行者数4,000万人(2020年政府目標値)
 低位シナリオ:訪日外国人旅行者数2,600万人(2016.9-2017.8の水準)

○航空需要変動に一定の影響を受けるものの、なにわ筋連絡線、新大阪連絡線及びこれらを同時に整備した場合についての費用便益比及び収支採算性は、なお良好な水準が確保される。
 ┌───────┬─────┬───┬───┬───┐
 │  路 線  │ 項 目 │高位s│中位s*│低位s│ s=シナリオ
 ├───────┼─────┼───┼───┼───┤
 │なにわ筋連絡線│費用便益比│ 2.1 │ 1.8 │ 1.6 │
 │       │収支採算性│24年目│25年目│27年目│
 ├───────┼─────┼───┼───┼───┤
 │新大阪連絡線 │費用便益比│ 1.5 │ 1.4 │ 1.4 │
 │       │収支採算性│27年目│27年目│28年目│
 ├───────┼─────┼───┼───┼───┤
 │なにわ筋連絡線│費用便益比│ 2.1 │ 1.9 │ 1.8 │
 │新大阪連絡線 │収支採算性│13年目│14年目│14年目│
 └───同時整備┴─────┴───┴───┴───┘
 * 中位シナリオは、4.で検討した複数のケースのうち、最も費用便益比が高かったケース。

8.調査のまとめ
なにわ筋連絡線、新大阪連絡線、なにわ筋連絡線・新大阪連絡線同時整備についての費用便益比及び収支採算性は概ね良好であったが、大阪空港線については、40年間で黒字転換する可能性が低いため、採算性の向上策の検討が必要であるが費用便益比は良好

 今後の事業化に向けた検討にあたっては、本調査結果等を参考に、整備により便益を享受する地域の地方自治体が、連携して関係の鉄道事業者等との調整を進め、建設事業費の精度向上、建設スケジュール、建設工事における導入空間の確保等の建設計画や、既存区間も含めた運行計画、整備主体の検討など、構想の検討を深度化することが期待される。

(参考)検討の体制
 本調査を進めるにあたり、「近畿圏における空港アクセスネットワークに関する検討会(座長:正司健一神戸大学大学院教授)」を、また、事業性検討における詳細な条件設定のため実務担当者によるワーキンググループを設置した。

【近畿圏における空港アクセスネットワークに関する検討会委員】
 神戸大学大学院経営学研究科 正司健一教授、京都大学大学院工学研究科 宇野伸宏教授、大阪府、兵庫県、大阪市、JR西日本、南海電気鉄道、阪急電鉄、新関西国際空港、関西エアポート、国土交通省(鉄道局・航空局・近畿運輸局)
【同WG委員】
 大阪府、大阪市、JR西日本、南海電気鉄道、阪急電鉄、国土交通省(鉄道局・近畿運輸局)