ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2008-02-06 21:38:33 |
20世紀フォックス映画
ダージリン急行 http://www.darjeeling-movie.jp 3月8日(土)、シャンテシネ、恵比寿ガーデンシネマ、新宿武蔵野館ほか全国公開。 ハリウッドはおろか、世界が今もっとも注目する監督のひとり、ウェス・アンダーソン。ファンを熱狂させた『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』('01年)、『ライフ・アクアティック』('05年)に続く彼の待望の新作は、大人になりきれない3兄弟が"ダージリン急行"に乗って魅惑のインドを旅する、希望と再生のロードムービーだ。 父の死をきっかけに疎遠になっていたホイットマン3兄弟。長男フランシスの呼びかけで1年ぶりに再会した次男ピーター、三男ジャックの3人は、失われた日々を取り戻すため、インドを横断する列車の旅に出る。彼らを待ち受けるのは、官能と混沌の国ならでは(!?)の予想外な出来事。車窓を流れるスピリチュアルな景色を見つめながら、彼らはそれぞれが抱えた心の傷をゆっくりと癒していく……。 '96年の長編デビュー以来、世界中のファンに熱烈に支持され、かのマーティン・スコセッシをして「次世代のマーティン・スコセッシは彼だ」と評されるウェス・アンダーソンが、これまで描き続けてきたのは家族のドラマ。この『ダージリン急行』でも、彼はタイプの異なる3兄弟の姿を通じて、「家族とは何か?」という普遍的な問いを投げかけてくる。しかし、そんなシリアスなテーマを決して重苦しく表現しないのがウェスの奇才たる理由。ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマンと共同執筆した脚本は、彼ら3人が実際にインドを旅したおかしな経験にもとづいている。「日常のさまざまなことが、僕らが住んでいる世界とまったく違うんだ! それが脚本に反映されているよ」ウェスはこのように語る。エネルギッシュで「何でもあり」なインドの空気は、彼の洒脱なユーモア感覚と抜群の相性のよさを見せている。 スタッフ・キャストにも、素晴らしい顔ぶれが揃った。ホイットマン3兄弟の長男フランシスを演じるのは、ウェスの学生時代からの盟友であるオーウェン・ウィルソン。事故で大ケガをし、頭に包帯を巻きながら旅のツアコンを務めるフランシスを、独特の存在感で演じている。妊娠した妻との離婚を考える寡黙な次男ピーターには、『戦場のピアニスト』をはじめ、数々の作品で名演を見せてきたエイドリアン・ブロディ。そして、家族をネタに小説を書く作家、末っ子のジャックに、ウェス作品の常連で共同脚本も担当したジェイソン・シュワルツマンが扮している。 また、尼僧になるため息子たちを置き去りにした母親役をアンジェリカ・ヒューストン、キャメオ出演としてビル・マーレイ、ナタリー・ポートマンが意外なシーンで登場するのも見逃せない。本篇前に上映される短編『ホテル・シュヴァリエ』では、パリのホテルを舞台に、ジェイソン・シュワルツマン、ナタリー・ポートマンがミステリアスな男女の恋を演じる。このプロローグの意味も、本編を観ると深く心に沁みてくるはずだ。 ダージリン急行の絢爛豪華なインテリアを筆頭に、細部までこだわったスタイリッシュな美術・衣裳を手がけるのは、『マリー・アントワネット』などでアカデミー賞を3度獲得したミレーナ・カノネロをはじめとする、世界有数のクリエイターたち。ルイ・ヴィトンのチーフ・デザイナーで、ファッション界の革命児と称されるマーク・ジェイコブスもスーツケースのデザインを担当し、この奇妙な旅を贅沢に彩っている。 本物の列車を借り切り、実際にインド北西部の砂漠地帯を走らせながら撮影した今回のロケーションも前代未聞。スタッフ・キャストが1台の列車に乗り込み、まるで旅をするように行われたこの撮影は、彼らの信頼関係を深め、ドキュメンタリーのようなリアルさを生み出している。 もちろん音楽も、これまでのウェス・アンダーソン映画と同様に魅力的だ。インドの巨匠サタジット・レイの映画音楽を、あたかもこの作品のために作曲されたかのように全編で使用。そしてキンクス、ローリング・ストーンズなど、60〜70年代のブリティッシュ・ロックがエモーショナルに響きわたる。 生と死が交錯するインドを舞台に、ウェスが描き出すのはちょっと風変わりな3兄弟の愛と絆。ときにオフビートに、ときに切なく駆け抜ける『ダージリン急行』を降りるとき、あなたの胸をやさしさや幸福感がいっぱいに満たしているにちがいない。 |
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