ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2011-12-24 22:59:03 |
非営利活動法人 名古屋レール・アーカイブス 2011年12月
http://nagoyarail-acv.or.jp/nra/ NRA NEWS No.11 1 伊良湖砲台鉄道 伊良湖砲台鉄道は通称であり、ルートや実験設備も軍秘で、写真も僅かな絵葉書に残るのみで、今後の調査、発表を期待したい。 この鉄道は、伊良湖にあった陸軍試射場の鉄道で、軌間は600mmと思われる。動力車は見たことはないが、千葉の鉄道連隊のものと同類と思われる。写真(添付画像左上)は田原図書館所蔵のもの。 福江方の砲台より発射。伊良湖に着弾した。渥美半島西岸の実験区域は立ち入り禁止で、こちらに通称「七階建て」という観測塔や実験の砲台本部があった。これらは大正末から昭和初年の建設と思われ、終戦後廃止された。私は昭和15年に見学したが、すでに軍秘扱いであった。 2 金谷の鉄道防護林近況 東海道線金谷駅東南の防護林は、かつては地元民が野草、山菜、焚きつけ取りに出入りしたが、今は入会権は残るものの、人の出入りは消え、JR東海は立ち入り禁止の立て札を建てた。 3 東海のドコービル製SL 最初は明治27年頃、大井川の金谷の鉄橋上流の河川工事(築堤)のためフランスのドコービル社製のBタンク(軌間600mm)が入った。所管は内務省で、SLは大井川号と命名され、堤防完成の明治36年、九頭竜川の河川工事に転じ、その後大正期に九州へ送られた。 同類の東郷号は、日露戦争後の明治40年頃の国産コピーであるが、戦中から戦後にかけて穂積の長良川で働いていた。ドコービルのSLの多くは、戦後、昭和30年頃のDLやダンプカーの導入まで働き続け、その丈夫さから日本での功績は大きい。 4 明治期・金谷の汽車大旅行 今から100年前の明治42年、金谷を中心とした600人の乗客が、東京、長野、碓氷、日光と6日間の大旅行を実行した。参加者は金谷のほか各地から集まったが、企画・主催は金谷の人たちが当たり、金谷空前の壮挙と称した。今も金谷駅前に記念の石碑(写真上)が、八雲神社(金谷の氏神様)拝殿に記念の額が、図書館に当時の新聞記事が残っている。 ・大旅行の流行 明治末には、難工事の中央線や碓氷アプト線の開通など鉄道網の全国普及に国民が喜び、国内は日露戦勝と経済成長に士気が挙がり、好況の町では汽車大旅行が流行した。金谷の緑茶はアメリカで大人気を博し、養蚕、絹と並ぶ利益を上げた。 ・シーズンを避けて 大旅行は、お茶の農事シーズンを避け、金谷駅を明治42年2月28日に出発、600人、6日間の汽車旅行が実行された。 八雲神社に残る名簿では、乗客は掛川、金谷、島田と大井川の上下流域の者で、夫婦が多いのも当時の好況を思わせる。この汽車旅行の企画実行は金谷の23名で、駅前の記念碑に名が残されている。以下、当時の新聞(静岡民友新聞)より記す。 (原文は候文である) ・10両編成、花火とともに 明治42年2月28日午後2時、10両編成の東海道線列車は、金谷町の見送り人、打ち上げ花火とともに華々しく発車した。特別列車には金谷駅長、医者2名、看護婦、新聞記者なども同行した。 大旅行のうち、東海道は複線化していたが、中央、碓氷、信越、東北線は単線が多く、客車も東海道はボギー車で、車内で湯も出たが、碓氷線などはマッチ箱(単車)、トイレなしも混在した。SLも御殿場など勾配線では2両重連の、まさに大旅行であった。 ・長野から日光へ 大旅行団は、夜10時、新宿にて甲武鉄道(今の中央線)の夜汽車に乗り換え、翌3月1日朝9時、諏訪湖の氷を望み、車内で木曽節の名調子を聞くうちに姥捨を眺め、午後3時45分に長野に着いた。雪道を善光寺に参り、宿はこたつで快適。長野には海を見たことがない人も多かった。 3月2日朝、信越線に乗り、一面の桑畑や雪山を眺めて軽井沢に至る。天下の碓氷越えは電化以前で、アプト式SLで山を下り、普通の汽車で夜10時、日光着。人力車を連ねて宿に入る。 3月3日桃の節句の日光見物は、外人が多いためか、商人が悪質で不快であった。3日夜、日光発、夜行汽車で上京し、4日は旅行団皆の宿願であったお江戸見物を楽しみ、夜行汽車にて3月5日早朝5時、金谷へ帰着し、無事大旅行を終えた。この間、歌心のある人は、今のカメラの代りに自慢の和歌を残している。 ・おわりに 百年前の早期に、このような大汽車旅行を実現したのは、企画に当たった金谷の人たちの積極性を示すもので、以後これに対応する大旅行は、昭和45年の大阪万博に貸切バス600台、3万人を運んだことがある。日本の全盛期で、私も臨時ガイドとして何度も大阪へ往復した。 明治の大旅行では夜汽車(後の夜行列車)を多用していたが、今や夜行列車は僅かになってしまった。 (追記)本稿は、金谷川越し街道の会に発表したものを転載したものである。 |
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