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No.6417 (Re:6415) 【両備グループ】井笠鉄道の破綻は井笠鉄道だけの問題ではない! (2/3)
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2012-10-31 16:32:49
今回の再生は、
A:道路運送法第21条1項による緊急措置として、暫定的に3月31日まで、一部並行する路線を有する両備グループの(株)中国バスが、代替え措置として市民の交通の確保のために路線運行で対応する。
破綻発表のあった10月12日に、両備グループ内に井笠鉄道バス路線救援対策本部(本部長:小嶋光信)を設置し、15日の行政からの代替え運行依頼に基づき、16日中国運輸局岡山支局に緊急を要する代替え輸送の申請をした。
具体的な路線は、17日の行政の会議で決められる、18日に中国バスに正式に伝達されるので、その具体的路線で、路線バス車両や運転手の確保を図る。

B:来年4月1日からは、新たな「公設民託」でのスキームとして、道路運送法第4条による運行を検討するように提案している。


今回のように2段階の対応をせざるを得なかったのは、下記の理由からだ。
1.本来半年くらいかかってする移行作業を、時間的余裕が無く、20日くらいでしなくてはならず、再建スキームが確定しないが、市民の足を守るため緊急避難として暫定的に運行をせざるを得ないこと。
2.条件が確定せず、道路運送法第4条での申請が困難で、緊急措置として道路運送法第21条での対応がベストであること。

参考:道路運送法 第21条  一般貸切旅客自動車運送事業者及び一般乗用旅客自動車運送事業者は、次に掲げる場合に限り、乗合旅客の運送をすることができる。 
 一 災害の場合その他緊急を要するとき。 
 二 一般乗合旅客自動車運送事業者によることが困難な場合において、一時的な需要のために国土交通大臣の許可を受けて地域及び期間を限定して行うとき。 

C:このような企業破綻による緊急対応は、全国初のことであり、行政と事業者の超法規的な英知と勇気と努力が要るといえる。

D:今回のような事例は、規制緩和の検証と交通基本法などの法と財源の整備を早急に図ら
ねば、今後、全国で多くの破綻が起こる警鐘といえる。


民設民営での再建が不可能な理由は次の通り


1.収益を支える路線が皆無なこと。収支率が50%程度と極めて悪く、経費の半分も収入が無ければ、民営は不可能だ。
2.少子高齢化で今後の旅客も減少を続けると予想されること。
3.赤字路線を支える収益を産む付帯事業が皆無なこと。観光バス、高速バスが若干の黒字のように見えるが、精査すると実態はトントンくらいの事業で、赤字路線を支える力はない。
4.補助金は企業の利益を産むことはなく、車両等の投資をする能力が全く無く、また車齢が20年超のバス車両が多く、今後の代替えの目途も立たない。従って、資産を保有する企業能力が生まれない。これが土地、建物、バスなどの固定資産を保有できない経営的理由だ。
5.補助金は後払いで、その間に支払われる人件費や燃料費などの支払い資金が無く、担保も無いため借り入れが出来ない。従って、運営する資金が銀行から借りられず、補助金制度では再建できない。

以上から更正法の適用は無理で、破産という全国でも稀な公共交通企業の破綻の道を取らざるを得なくなった。
前述のように、関藤社長からの要請、笠岡市や福山市並びに岡山県からの緊急対応依頼が、この15日に三島笠岡市長が代表で来社されて表明され、また中国運輸局かからも中国バスでの救済の示唆があり、地域の通学や高齢者の足の確保のため、緊急避難措置として下記の対応をすることにした。

今回の破綻で、路線再建に必要な経営問題の根本的な改善は基本的に無理なため、路線再建は民設民営で新たな私企業で行うことは不可能といえる。また行政も公設公営で対応できる余裕や経験がないとともに、出来ても非効率になる懸念がある。

公共交通の経営は、大きくいって4パターンあるといえる。


経営方式
 内 容
公設公営方式
 土地、建物とバスや電車などの設備(今後、輸送手段という)輸送手段を公が設置し、自ら運行するパターン。
 この方式はヨーロッパや日本でも旧来多く取られたが、サービスが悪く、公務員給与との関係で賃金コストや労務管理上の問題が起こり、特に数台の公営バスでは、予備運転手を確保せざるを得なく、労務管理上かなりお荷物になる懸念がある方式だ。

民設民営方式
民間企業が輸送手段を保有し、自らの責任で運行するパターン。
これはお客様の多い大都市や、地方都市では中心部の一部や、主要地方拠点を結ぶ郊外バスの経営に見られる日本では一般的なパターン。
収支率が100%を超え、自ら設備投資能力がある経営となるが、実際日本では東京、大阪、名古屋などの超大都市でしか、バスを自分で買ったり、新たな設備をする能力はほとんどないであろう。

公設民営方式
公が輸送手段を保有し、民間企業が運行を行うパターン。
輸送手段を持つ能力が無く、その費用を補助金で賄われている民設民営会社の場合、補助金を出す代わりに、輸送手段を肩代わりして、収支率を100%以上に保ち、経営努力で利益を生む体質に転換する今後の理想的パターン。
本来補助金は補助的に、且つ短期的に出して支えるシステムで、恒常的な補助は好ましくない。経営や労使間のモラルハザードを招来し、効率的また健全な経営にならないので、補助金から、この方式に切り替えることが望ましい。

公設民託方式(私の造語)
公が輸送手段を保有し、民間企業に運行を委託するパターン。
収支率が極めて悪く、輸送手段を肩代わりしても、黒字が達成できず、路線の維持が出来ない場合。過疎化が進む地方都市や、大都市でも郊外の路線維持に取らざるを得ないパターン。
この場合は、事故率や、地域住民からのサービスの苦情、安定的に運行を維持する経営能力などが定期的に審査されることになる。雇用の安定もあり、通常10年間の委託が一般的だ。

これらの経営パターンから、今回の路線再建スキームは、公設民託方式を取らざるを得ないが、この方式を前提にしても、いっぺんに路線再建は出来ず、2段階のステップを踏むことになる。