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No.8276 (Re:8273) 【国土交通省】中央新幹線に係る環境大臣意見 [各論2]
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2014-07-19 16:22:25
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省

 中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見
                  (本文)

2.4 動物・植物・生態系

(1)総論
@ 南アルプス国立公園
 事業実施区域には、南アルプス国立公園及び環境省が平成19 年度から開始した「国立・国定公園総点検事業」において、今後10 年間を目処に国立・国定公園の新規の指定や大幅な拡張の対象となり得るとして選定した候補地を含むことから、本事業の実施が当該地で評価されている自然環境及び生態系にできる限り影響を及ぼすことがないようにすること。
 また、事後調査の結果及び専門家等の助言を踏まえ、適切な環境保全措置を講じること。
A 生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)
 生物圏保存地域(国内呼称:ユネスコエコパーク)は、生態系の保全と持続可能な利活用との調和に取り組む地域を登録するユネスコの事業であるが、当該路線が通過する南アルプス周辺地域は、生物圏保存地域の登録申請地である。本事業計画では、生物圏保存地域の「移行地域」において、非常口や工事プラント、発生土置場等の設置のほか、発生土や工事資材運搬のための車両の通行等も計画されている。「移行地域」は、自然と調和した持続可能な資源管理が展開される地域であり、関係市町村は、自然体験フィールドの提供や農林水産物のブランド化等の自然環境や地域資源を活かした取組を計画していることから、本事業の実施が生物圏保存地域登録申請地としての資質を損なうことが無いよう、事業実施に際しては関係地方公共団体と十分に調整し、その意向を尊重すること。

(2)動物
@ 希少猛禽類の繁殖活動への影響の回避・低減
 本事業の計画路線の周辺には、クマタカやオオタカ等の希少な猛禽類が生息し、計画路線付近で営巣する個体も確認されている。工事の実施に際しては、これらの種の生息や繁殖活動に支障を及ぼさないよう細心の注意が求められるが、環境保全措置として位置づけられているコンディショニングは、一部の種で成功事例があるものの、手法として確立されているとは言い難く、営巣中心域や高利用域といった繁殖に重要な地域の回避や営巣期の工事の回避等のより確実性の高い手法によりこれらへの影響を回避、低減することを優先的に検討することが必要である。
 このため、希少猛禽類(クマタカ、オオタカ、サシバ)のうち、営巣中心域等と工事区域が重複するものについては、専門家等の助言を踏まえ、以下の環境保全措置を講じること。

(a) 神奈川県
・オオタカ(長竹ペア)については、営巣中心域に改変の可能性がある範囲の一部が含まれる計画となっているが、営巣期(2〜7月)における営巣中心域の人の立ち入りについてはオオタカの生息に支障を来すおそれがあることから、営巣中心域や高利用域といった繁殖に重要な地域のできる限りの回避や営巣期の工事の回避等を行うこと。

(b)山梨県
・オオタカ(坊ヶ峯ペア)については、営巣中心域を計画路線が通過する計画となっているが、営巣期(2〜7月)における営巣中心域の人の立ち入りについてはオオタカの生息に支障を来すおそれがあることから、営巣中心域や高利用域といった繁殖に重要な地域のできる限りの回避や営巣期の工事の回避等を行うこと。
・クマタカ(青崖ペア)については、営巣中心域端部を計画路線が通過する計画となっているが、基本的にこの区域の環境の改変は避ける必要があり、人の出入りも極力少なくすべきであることから、複数の専門家等の助言を踏まえ、営巣中心域を回避及び高利用域での営巣期における影響を回避するよう工事計画及び工事方法の検討を行い、当該ペアの保全に十全を期した工事を実施すること。
・クマタカ(新倉ペア、高下ペア)については、高利用域に改変の可能性がある範囲の一部が含まれる計画となっているが、本事業による生息環境の改変により繁殖活動に悪影響が及ぶおそれのある区域であることから、高利用域を回避する又は営巣期における工事を避けることも含め、専門家等の助言を踏まえ、回避、低減、代償の順で環境保全措置を検討し、講じること。

(c)長野県
・オオタカ(喬木村ペア)については、営巣中心域を計画路線が通過する計画となっているが、営巣期(2〜7月)における営巣中心域の人の立ち入りについてはオオタカの生息に支障を来すおそれがあることから、営巣中心域や高利用域といった繁殖に重要な地域のできる限りの回避や営巣期の工事の回避等を行うこと。
・クマタカ(大鹿村Aペア)については、営巣中心域近傍を計画路線が通過する計画となっているが、基本的にこの区域の環境の改変は避ける必要があり、人の出入りも極力少なくすべきであることから、営巣中心域及びその近傍を回避する又は営巣期における工事を避けることも含め、専門家等の助言を踏まえ、回避、低減、代償の順で環境保全措置を検討し、講じること。
・クマタカ(大鹿村Bペア、Cペア)については、高利用域に改変の可能性がある範囲の一部が含まれる計画となっているが、本事業による生息環境の改変により繁殖活動に悪影響が及ぶおそれのある区域であることから、高利用域を回避する又は営巣期における工事を避けることも含め、専門家等の助言を踏まえ、回避、低減、代償の順で環境保全措置を検討し、講じること。

(d)岐阜県
・オオタカ(千旦林南ペア)については、営巣中心域に改変の可能性がある範囲の一部が含まれる計画となっているが、営巣期(2〜7月)における営巣中心域の人の立ち入りについてはオオタカの生息に支障を来すおそれがあることから、営巣中心域や高利用域といった繁殖に重要な地域のできる限りの回避や営巣期の工事の回避等を行うこと。
・サシバ(久々利東ペア)については、営巣中心域に改変の可能性がある範囲の一部が含まれる計画となっているが、人の立ち入りや工事の実施により繁殖に及ぼす影響が大きい区域であることから、できる限り営巣中心域及び高利用域の減少や分断を最小限にするとともに、工事等による繁殖への影響を低減する等、専門家等の助言を踏まえ、環境保全措置を検討し、生息上支障を及ぼすおそれのある行為を避けること。

(e)愛知県
・オオタカ(西尾ペア)については、営巣中心域に改変の可能性がある範囲の一部が含まれる計画となっているが、営巣期(2〜7月)における営巣中心域の人の立ち入りについてはオオタカの生息に支障を来すおそれがあることから、営巣中心域や高利用域といった繁殖に重要な地域のできる限りの回避や営巣期の工事の回避等を行うこと。

A 河川流量の減少に伴う水生生物への対応
 工事の実施及びトンネルの存在に伴う地下水位の変動や河川流量の減少に伴う野生生物への影響予測については不確実性が高く、その影響は、重大なものとなるおそれがあり、かつ、事後的な対応措置による影響の低減や修復を行うことが難しいため、あらかじめ十分な情報を把握した上、予測、評価を行い、適切な環境保全措置を講じる必要がある。このため、河川流量の減少等により影響を受ける可能性がある地域に生息・生育するヤマトイワナ、希少なサンショウウオ類、水生昆虫等の水生生物について、水系ごとに、流量の少ない源流部や支流部も含めて複数の調査地点を設定し、工事の実施前から水生生物の生息状況、河川の流量及び水質について調査を行い、その結果に基づき予測、評価を実施し、適切な環境保全措置を講じること。
 また、工事実施中及び供用中においても、モニタリングを継続的に実施し、影響が生じる可能性がみられた場合には、専門家等の助言を踏まえ、適切な保全措置を講じること。

B 移動力の小さい動物種への対応
 希少なサンショウウオ類やイモリ類をはじめ両生類、爬虫類、魚類、昆虫類、底生生物等のうち移動力が小さい又は環境に制約される種については、事業の実施に伴う生息環境の消失、減少又は分断による影響を受けやすい。しかしながら、一部の種を除き、移動力を踏まえたその生息環境の改変に対する影響が予測、評価されていない。このため、これらの種の生息環境の改変に際しては、改変範囲を極力小さくするとともに、改変箇所に生息する重要な種については、できる限り、周辺に存在する同様の環境への移動経路を確保するとともに、個体の移植等を実施すること。

C 夜間照明等による野生動物への影響把握
 夜間照明等による野生動物に及ぼす影響については、十分な知見が蓄積されていないことから、山岳部において、専門家等の助言を踏まえ環境保全措置を講じるとともに、事後調査を実施し、その影響を把握するとともに、影響を及ぼす可能性がある場合には、専門家等の助言を踏まえ、適切な環境保全措置を講じること。

(3)植物
@ 環境保全措置の検討
 植物は、移動能力を持たないため、工事の実施及び施設等の設置により生育地が消失又は減少することの影響を自ら回避することができない。また、種によっては相観で同質の生育環境が広がっているように見えても、土壌水分や空中湿度等の細かな環境条件により生育地が限定されることもある。このため、環境保全措置の検討に際しては、影響の回避を原則とすること。
A 移植・播種に関する実施計画の作成
 生育地への影響を回避又は低減することが難しいため、やむを得ず重要な植物種の移植・播種を実施する際には、専門家等の助言を踏まえ、対象種ごとに、移植・播種の場所、時期、方法、監視方法等を含む移植・播種実施計画を作成すること。

(4)生態系
@ 発生土置場及び工事施工ヤード等における自然環境の復元
 発生土置場の緑化及び工事終了後の工事施工ヤードの原状復旧を実施する際には、専門家等の助言を踏まえ、緑化に使用する種や緑化方法、管理方法等を定め、速やかに周辺と一体となった自然環境に復元するよう適切な環境保全措置を講じること。
A 生息・生育環境の創出における実施計画の作成
車両基地等の大規模施設によって消失される生息・生育環境の代償措置について、現時点では位置、面積、構造、機能等が示されていない。このため、詳細な設計を行う際には、それぞれの場所ごとに、専門家等の助言を踏まえ、目標、対象種、創出する環境の内容及び創出手法、管理、モニタリング、評価の方法等を含む実施計画を作成すること。