NEWS RELEASE:JR&私鉄    3
No.6416 (Re:6415) 【両備グループ】井笠鉄道の破綻は井笠鉄道だけの問題ではない! (1/3)
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2012-10-31 16:32:45

        井笠鉄道の破綻は井笠鉄道だけの問題ではない!
           ―井笠鉄道バス路線再建案―


                            両備グループ
                            代表・CEO 小嶋光信


10月12日に発せられた井笠鉄道バスの事業廃止による路線バス廃止の報は、岡山県、広島県の公共交通事業者や行政、市民のみならず、全国の事業者と関係行政に戦慄を与えた。
廃止が10月31日と差し迫っているばかりでなく、自主整理や更生法ではなく、全国でも稀な経営破綻ということで幕引きが行われることになったからだ。
2002年の規制緩和までは、公共交通事業者は補助金に支えられて潰れないと思われていたし、銀行も躊躇なく資金供与をしてくれた。
規制緩和後、全国の数十社が事業に行き詰ったが、事前に自主整理や更生法で再生されていて、あたかも何もなかったかのように路線の縮小や合理化で再生されていたため、本当の構造問題が理解されないまま、今日に至ってしまった。
両備グループで再生された中国バスや鉄道部門での和歌山電鐵などを通じた地域公共交通の課題を書き下ろした拙著『日本一のローカル線をつくる―たま駅長に学ぶ公共交通の再生―』(学芸出版社刊/平成24年2月出版)に、全国の地域公共交通の現状と、如何に問題が大きいかと、国家としての対策を提言している。
その中の一部を引用してみよう。


P143からの抜粋 : 危機に瀕している地方の公共交通を、現状の延命策から将来に希望の持てる公共交通に思い切って転換することが大事だからです。ただ、行政サイドはいまだに延命的な行政対応で済むのではないか、他に方法がないのではないかと思っている方々が多いので、是非和歌山電鐵や中国バスの事例とともに、地方の実態を見ていただきたいし、地方の公共交通の経営者の生の声を聞いていただきたいと思います。
皆が必死になって、地域の足を守っているのです。自分たちが補助金や国の支援で儲けようなどというやましい気持ちの公共交通事業者は、私の知る限り皆無です。将来の見通しもなく、半ば絶望しながらも、地域の交通を必死で支えているのです。その悲痛な声をぜひ聴いていただきたいと思います。
P170からの抜粋 : 規制緩和後多くの地方鉄道やバスが倒れ、再生されています。しかし、少子高齢化と地域力の減退で、根本的な利用者の流れが改善されていないので、再び倒産の懸念があります。現在は、一部路線の補助金による延命と路線のカットで、なんとか生きながらえているだけの状態です。・・・・(中略)・・・・この5年から10年で、赤字の地域公共交通の大半が再び厳しい経営状態になり、50%くらいの路線や会社は潰れるかもしれません。今までの私の分析はほとんど当たっているのですが、この予測は外れてほしいと思います。

と予告していた。

2002年の規制緩和で、地方の事をご存知ない政治家が、アメリカでのフリードマン説を日本的に咀嚼せずに国内に運用したと思われる諸方策の一つの「規制緩和」によって、公共交通は認可事業から許可事業になり、補助金の支えがほとんどなくなり、「儲からない路線はやめるべき」と、路線の退出が自由になり、辞めるのも勝手なら、参入も自由という現在の病巣を作る行政に転換してしまったのだ。その結果が多くの公共交通事業者の倒産と再生であり、今度の結果だ。

今日のために、何とかこの規制緩和の無責任な流れを変えるべく、数々の再生の実例から、行政と法の対策をお願いし、そして「交通基本法」が昨年3月に閣議決定され、これで流れが変わるかと思いきや、政局の混迷で、国会では法案が成立しなかった。誰のために政治をしているのか是非考えていただきたい。国民のための政治などと今日の国会の状況で言えるのか、はなはだ残念な状況だ。これは、地方の現状を知らずにミスリードした政治の疎漏ではないか?
私は、今まで必死に地域を守ってこられた井笠鉄道さんに、本当に心から敬意を表します。
彼らの苦悩を思うと、同業者として慚愧の念を禁じ得ない。
昨年末から賞与の支払い遅延、今年になって賃金の支払い遅延、背景に10数億円という退職金債務の不払いなど噂がたっていたので、今年末には危ないかと思っていたが、何かあっても更生法か、何らかの再生で対策には時間があると思っていた。また、この7月に、岡山県バス協会の総会の前に関藤社長が来社され「何かあったら路線だけは守ってほしい」という悲痛な叫びは聞いていたが、こんなに早くなるとは思わなかった。
この関藤社長の気持ちを受け止めて、両備グループ総力をあげて路線の救援に当たることにした。