NEWS RELEASE:JR&私鉄    3
No.6812 (Re:6810) 【国土交通省】第12回「新幹線脱線対策協議会」の結果について 別紙2
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2013-03-09 01:16:19
別紙2

           新幹線脱線対策の進捗状況

1.構造物の耐震対策
 阪神・淡路大震災を受け実施した緊急耐震補強については、概ね完了しており、緊急耐震補強を実施した高架橋については、東日本大震災において損傷はなかった。東日本大震災後、各社において推進中の地震対策に加え、更なる対策を実施。

                                    平成24年度末
┌─────┬───────────────────┬───────────────┐
│ 事業者名 │       追加対策内容      │      整備期間     │
├─────┼───────────────────┼───────────────┤
│JR東日本│南関東・仙台等・その他エリアにおける曲│震災前の平成21年度より実施。 │
│     │げ破壊先行型に対する耐震補強     │平成24年度から5年間を重点的な │
│     │                   │整備期間として推進。     │
├─────┼───────────────────┼───────────────┤
│JR東海 │東海地震の際に強く長い揺れが想定され │震災前より実施。平成21年度完了│
│     │る激震地区(三島〜豊橋間)に対する耐震│               │
│     │補強                 │               │
├─────┼───────────────────┼───────────────┤
│JR西日本│東海・東南海・南海地震想定エリアにおけ│平成24年度より実施。     │
│     │る曲げ破壊先行型に対する耐震補強   │概ね平成34年度を目途に完了予定│
└─────┴───────────────────┴───────────────┘
※ JR九州については対策が必要な箇所はなし。

2.早期地震検知システムの充実等
 東日本大震災以降、検知点の増設、システムの機能向上及び列車ブレーキの改良を実施
(早期地震検知システム)
 地震計が初期の小さな地震波を検知することにより、大きな地震波の到来が推定された場合や一定の大きさを超える地震波を検知した場合に、鉄道変電所から列車への送電を自動的に停止し、列車の非常ブレーキを動作させ減速、停止させるシステム

◆地震時における早期に列車を停止させる取り組み
 各社において、地震計の増設、地震検知システムの機能強化、列車ブレーキ力の向上を図るなど、早期に列車を停止させる取組みを行っているところ。
 ┌────┬──┬──┬──┬──────────────────────┐
 │    │ 地震計設置箇所 │    東日本大震災以降の主な改良内容   │
 │    │(平成24年度末現在)                      │
 │    │遠方│沿線│ 計 │                      │
 ├────┼──┼──┼──┼──────────────────────┤
 │JR東日本│ 46 │ 81 │ 127│○首都圏及び内陸への地震計を30箇所増設   │
 │    │  │  │  │○気象庁の緊急地震速報を導入        │
 ├────┼──┼──┼──┼──────────────────────┤
 │JR東海 │ 21 │ 50 │ 71│○沿線地震計へのP波による検知機能追加および │
 │    │  │  │  │ 遠方地震計へのS波による検知機能追加    │
 ├────┼──┼──┼──┼──────────────────────┤
 │JR西日本│ 10 │ 43 │ 53│○遠方地震計にS波による検知機能追加     │
 ├────┼──┼──┼──┼──────────────────────┤
 │JR九州 │ 6 │ 12 │ 18│                      │
 └────┴──┴──┴──┴──────────────────────┘
・JR東日本、JR西日本及びJR九州においては、震災前に沿線地震計へのP波検知機能を設置済み。
・JR東日本及びJR九州においては、震災前に遠方地震計へのS波検知機能を設置済み。
・JR東海及びJR西日本においては、震災前に緊急地震速報導入済み。
・各研究機関が設置している海底地震計の利用に向けて、関係機関との調整、検討を進めている。

3.脱線・逸脱防止装置
                                   平成24年度末

JR東日本
 仮に脱線した場合においても、車両に取り付けたL型ガイドがレールに引っ掛かることにより、線路から大きく逸脱することを防止する。
 ┌─────────┬────┬────┬──────┐
 │    対策    │ 計画数 │ 実績 │完了予定年度│
 ├─────────┼────┼────┼──────┤
 │   L型ガイド  │132 編成│ 132編成│  完了  │
 ├─────────┼────┼────┼──────┤
 │レール転倒防止装置│約360km │約216km │  26年度  │
 └─────────┴────┴────┴──────┘

JR東海・JR九州
 脱線防止ガードにより地震時の列車の脱線を極力防止する。
 また、仮に脱線した場合においても、車両に取り付けた逸脱防止ストッパが脱線防止ガードに引っ掛かることにより、線路から大きく逸脱することを防止する。
 ┌───┬────────┬────┬────┬──────┐
 │事業者│   対策   │ 計画数 │ 実績 │完了予定年度│
 ├───┼────────┼────┼────┼──────┤
 │JR東海│脱線防止ガード │ 596km │ 140km │  31年度  │
 │   │逸脱防止ストッパ│ 135編成│ 135編成│  完了  │
 ├───┼────────┼────┼────┼──────┤
 │JR九州│脱線防止ガード │ 約55km│ 約20km│  29年度  │
 │   │逸脱防止ストッパ│ 11編成│ 11編成│  完了  │
 └───┴────────┴────┴────┴──────┘

JR西日本
 仮に脱線した場合においても、レールの内側に敷設した逸脱防止ガードに車輪が引っ掛かることにより、線路から大きく逸脱することを防止する。
 ┌────────┬───┬──────┬──────┐
 │   対策   │計画数│  実績  │完了予定年度│
 ├────────┼───┼──────┼──────┤
 │逸脱防止ガード │ 110km│事前工事中※│  27年度  │
 └────────┴───┴──────┴──────┘
 ※25年春より機械により設置開始予定
 ┌────────┬───┬──────┬──────┐
 │   対策   │計画数│  実績  │完了予定年度│
 ├────────┼───┼──────┼──────┤
 │逸脱防止ストッパ│83編成│  76編成 │  26年度  │
 └────────┴───┴──────┴──────┘
 なお、相互直通することから、他社対策である逸脱防止ストッパによる対策も実施している。

***

Japan Transport Safety Board          第12回新幹線脱線対策協議会用資料
             東日本旅客鉄道株式会社
             東北新幹線仙台駅構内
               列車脱線事故
            (平成23年3月11日発生)

              事故調査報告の概要

               運輸安全委員会
               平成25年3月

本資料の構成
 I 事故現場に関する情報
 II 新幹線の地震対策に関する事実情報と分析結果
III 脱線の原因・過程に関する事実情報と分析結果
 IV 事故の原因、再発防止と被害軽減策

I 事故現場に関する情報
事故の概要
1.事業者名:東日本旅客鉄道株式会社
2.事故種類:列車脱線事故
3.発生日時:平成23年3月11日(月) 14時47分ごろ(天候:雪)
4.発生場所:東北新幹線仙台駅構内
5.列車:仙台総合車両所発白石蔵王駅行き
        試第7932B列車(10両編成)
6.死傷者 :なし(試験列車のため、乗客はなし)
7.事故概要:
 列車が速度約72km/hで仙台駅構内に進入中、運転士は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による強い揺れを感じると同時に、地震発生時に列車を緊急停止させるシステムによる停止信号が車内信号機に現示されたのを認めたため、直ちに非常ブレーキを使用した。列車の停止後、車内及び車外から列車を確認したところ、4両目の前台車の2軸が左に脱線していた。(前台車第1軸右車輪は約210mm、同左車輪は約95mm、前台車第2軸右車輪は約260mm、同左車輪は約155mmそれぞれ左に脱線していた。)

事故発生箇所
 東北新幹線東京駅〜新青森駅間713.7km(複線)

 注:添付画像を参照ください。

事故現場の高架橋の概要
・本事故発生現場である第3小田原高架橋並びにその新青森駅方の金剛院丁橋りょうの構造形式は、いずれも上部工は合成桁、下部工は鋼製橋脚である。基礎は深礎杭となっており、地中梁が設けられている。
・同社の第3小田原高架橋全体図によれば、第3小田原高架橋の地表からの高さは、桁により異なるが、おおよそ10〜12mである。

脱線の痕跡に関する情報(軌道の主な損傷)
・326k283m付近及び326k286m付近の左右のレール頭頂面には車輪によると思われる線状の痕跡があり、そこから本件車両の前台車の各軸が停止していた位置までのレール締結装置やスラブ上に、車輪によると思われる損傷等が認められた。
・第1軸の駆動装置、第2軸のモータ、前台車後方の底板取付用横ばり等がレールと接触した状態で停止していた。


II 新幹線の地震対策に関する事実情報と分析結果

新幹線における同社の地震対策に関する分析
1.新幹線列車を緊急停止させるシステム
・本件列車の速度は、地震発生時に列車を早期に停止させるためのシステムによって約72km/hから、脱線時には約14km/hに減速していた。
・東北地方太平洋沖地震発生後、特に強い揺れが観測された区間を走行していた本件列車以外の新幹線列車は、減速走行中に地震動を受けたと考えられるが全ての列車が脱線せずに停止した。
 ↓
同システムは機能したと考えられる。

2.逸脱防止ガイド
・逸脱防止ガイドがレールと接触し、車両が右側に戻された(大きく逸れなかった)と考えられる。
 ↓
本事故においては比較的低速ではあったが、逸脱防止ガイドが機能したと推定される。

3.高架橋柱、橋脚の耐震補強
・本事故現場および他の新幹線が在線していた箇所の構造物に目立った損傷は認められなかった。


III 脱線の原因・過程に関する事実情報と分析結果

施設・車両・運転取扱いに関する分析と車両運動シミュレーションの実施
・本事故発生前に鉄道施設、車両等に異常は認められなかった。
・運転取扱いに問題はなかったと推定される。
・本事故発生直前に東北地方太平洋沖地震が発生している。
 ↓
・本事故の原因として・・・
 東北地方太平洋沖地震が関係している可能性が考えられた。

 そこで、余震観測の結果を踏まえ、本件列車の脱線原因並びに脱線のプロセスを解明するために地震時の車両運動に関するシミュレーション解析(「車両運動シミュレーション」)
を行った。

余震観測による高架橋上での加速度波形と計算による耐震設計上の基盤面での加速度波形

・余震で観測された線路直交方向での加速度の最大値と最も卓越した周波数は、本事故現場近傍の地表面では16.4gal、9Hz前後、第3小田原高架橋上では-7.0gal、1.8Hz前後であった。
・上記の両地点での観測データから得られた第3小田原高架橋(2P)の減衰定数は1.5%であった。
・観測結果を基に計算した耐震設計上の基盤面の加速度波形のフーリエスペクトルと、高架橋上の加速度波形のフーリエスペクトルを比較すると、他の周波数と比べて、1.8Hz前後の周波数域のフーリエ振幅が高架橋上で顕著に大きくなっている。

脱線箇所の推定地震動
 脱線の原因・過程に関する事実情報と分析結果
・第3小田原架橋から金剛院丁橋りょうに至る延長114m解析範囲とし、構造物の竣工図面等を基に構造物を3次元フレームモデルで表現した。
・事故現場での余震観測の結果、および事故現場周辺で得られている本震の観測結果から、入力する地震動を推定した上で、高架橋上での応答値(脱線箇所の推定地震動)を算出した。
・応答値を算定したところ、脱線箇所付近の橋脚2P付近の高架橋上では、線路直交方向で最大水平加速度約1,067gal、卓越周波数1.5〜1.7Hz、最大水平変位167mm(脱線時刻前後で約140mm)の結果を得た。

車両運動シミュレーションの結果

車両運動シミュレーション結果
 シミュレーション上の時刻約61秒で第1軸から第4軸までの左車輪フランジが左レール頭頂面に乗り輪が左方向に変位して脱線した。

脱線直前の車両の挙動
 (a) シミュレーションの時刻上の60.5秒付近では車体が左側に、台車は右側に傾き、第2軸右車輪に大きな横圧が発生した。その直後、同左車輪がレール頭頂面から63mm上昇した。
 (b) 同60.8秒付近直前で車体が右側に傾き、第2軸左車輪に大きな横圧が発生し、その直後に同左車輪のフランジがレール頭頂面に乗った。

脱線直前の車両の挙動
 車両の挙動を周波数解析した結果、左右の変位で1.7Hz付近に卓越周波数が認められた。
 ↓
 車体の回転中心が車両の重心の上側にある上心(うわしん)ロールが生じた可能性が考えられる。


脱線の原因に関する分析結果

事故現場における地震動の分析(高架橋の振動特性)
 東北地方太平洋沖地震の余震の際に、本事故現場の高架橋上で観測された振動のうち、線路直交方向で最も卓越する振動数は1.8Hz前後であることから、この付近の周波数が本事故現場である第3小田原高架橋の固有周波数であると推定される。また、この周波数域のフーリエ振幅が他の周波数帯に比べて、高架橋上では著しく大きくなっていることから、本事故現場である第3小田原高架橋では、固有周波数と推定される周波数域の地震動が共振により増幅され、脱線したと考えられる時刻の前後で140mm近い線路直交方向の変位が生じたと考えられる。

脱線に至る過程の分析(車両の振動特性)
 車両運動シミュレーション及び脱線の痕跡から、本件車両は脱線時に東北地方太平洋沖地震による強い横揺れを受け、車体のローリングにあわせて左右の車輪が左右に移動しレールと激しくぶつかる上心ロールが発生し、脱線に至った可能性があると考えられる。
 車両の挙動が上心ロールとなったことについては、車両運動シミュレーションから、本事故現場の高架上で上心ロールの生じやすい周波数である1.5〜1.7Hz付近に卓越周波数を持つ大きな揺れがあったためと考えられる。


IV 事故の原因・再発防止と被害軽減策

事故の原因
1.事故の原因
 本事故発生前には軌道を含めた鉄道施設、本件列車及び運転取扱いに問題はなかったと推定されること、また、本件列車が脱線した時刻は東北地方太平洋沖地震の主要動が仙台市内に到達した時刻の直後と推定されることから、本件列車は東北地方太平洋沖地震の本震による地震動を受けたために脱線したと推定される。なお、本件車両の前台車全2軸のみが脱線した理由は明らかにすることができなかった。

2.脱線に至る過程
 まず東北地方太平洋沖地震の地震動の周波数成分のうち、本事故現場の高架橋の固有周波数とおおむね一致する周波数成分が、構造物の共振現象により増幅されて高架上で大きな変位として現れたこと、そして、その周波数成分が、車両に上心ロールを生じさせやすい周波数帯にあったことから、本件車両に上心ロールが生じて脱線に至ったと考えられる。

3.被害が拡大しなかった要因
 被害が拡大しなかったことについては、早期に列車を停止させるシステムが動作して脱線直前には低速になっていたこと、また逸脱防止ガイドが機能して本件車両が軌道から大きく逸脱しなかったことが関与したと考えられる。


今後望まれる措置

1.再発防止
・本事故現場の高架橋では、地震動による構造物の損傷は認められなかったこと、また、被害軽減策がある程度有効であったと考えられることから、脱線には至ったが、人的被害の発生等の大きな被害が生じなかったものと考えられる。
・本事故現場における列車の走行安全性をより高いものにするためには、本事故現場の高架橋の振動特性を精査し、必要に応じて高架橋の共振による揺れの増大を抑制する対策等を検討し、その効果を検証した上で実施することが望まれる。
・本事故は、地震動、構造物や車両の振動特性等の条件が複合して生じたと考えられる。そのため、今後、特に高速走行を前提とする新幹線構造物においては、本事故と同様な、車両の走行安定性上で問題となる共振現象が生じることが想定される場所を明らかにするための研究、並びに適切な対策を実施するための研究や技術開発を進めていくことが望まれる。

2.被害軽減策
 新潟県中越地震以降に国土交通省により設置された新幹線脱線対策協議会の「新幹線脱線対策に係る中間とりまとめ」の中で取りまとめられ実施されてきた、種々の対策を今後も継続して実施していく必要がある。

以上
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