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No.7552 (Re:7548) 【両備グループ】和歌山電鐵の再生で「公有民営法」成立の一助に
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2013-11-15 16:34:28
10.和歌山電鐵の再生で「公有民営法」成立の一助に
 その中の一つが南海電鉄貴志川線で、年間5億円もの赤字を計上して廃止が発表されていた。廃止発表と同時に、路線存続運動として「貴志川線の未来をつくる会」が展開され、約6千人もの熱心な会員の皆さんが「乗って残そう貴志川線」というスローガンで活動されていた。彼らから岡山電気軌道へ熱心なアプローチがあり、

@公設民営とすること。

A運営会社は3セクとせず、100%単独出資とすること。

B利便向上は和歌山電鐵内の運営委員会で計ること。

 上記@〜Bを中心に、5億円の赤字を年平均82百万円以内とする案を作って差し上げた。
 運営は地元企業がするようにと公募したが、やはり鉄軌道会社の応募が無く、結果我々が経営するようになった。実際に不可能と思われた再生を決意した背景には、実質、公設民営のスキーム作りに協力してくれた行政の努力と、会社幹部のしっかりした分析、社員にも極秘で貴志川線に乗って、各駅を降りて歩き回って得た情報での確信があった。
 現場での働きぶりを見て、人件費コストは半分に出来る自信と、道路環境が悪く営業努力の可能性や、西日本最大の三社参りが忘れ去られていたことから、観光掘り起こしの可能性が見えたことだ。そして、再建の要請をお引き受けしたのは、最終的に

C市民運動が上滑りでなく本物であること。

D行政の協力体制がしっかりしていたこと。

E地域が人口増加地帯であったこと。

 を確認できたことが意志決定の理由となった。
 初代の常務取締役への発令は「朝晩は乗る方の乗務、暇な昼間は常の方の常務を命ずる」とした。現場は直接人員が中心で、常務自ら運転して安全体制のチェックをして、かつコストパフォーマンスが良いスリム化した組織が特徴だ。和歌山電鐵の再生が順調に進んでいる要因は、市民団体の熱心な協力と、県と2市(和歌山市、紀の川市)がしっかりまとまり、行政努力をして下さっていること。年間80件ものイベントをはじめ、いちご電車・おもちゃ電車・たま電車という魅力ある電車の相次ぐ投入に加え、三毛猫のたま駅長の存在が大きい。

 たま駅長は貴志駅の隣のお店の猫だったが、住処が公道に置かれており、まさにオープンの2006年4月1日に撤去するよう言い渡されたのだ。困惑された飼い主が、ちょうどセレモニーが終わったそのとき、追いかけてこられて、たまの住処を駅舎に置いて欲しいと懇願された。素晴らしい魅力ある三毛猫だというその飼い主の熱意もあり、見てみると、一目で「この子は貴志駅の駅長だ」と閃いた。経費節減で無人駅にしなくてはならないことが心の中で寂しかったこと、言われなく動物を公共の場に置くとお客様や社員のなかで嫌がる方々が出るだろうことなどが頭をよぎり、何とか助けてあげたいという気持ちで咄嗟に考えた結果だった。正社員の駅長なら文句は出ないだろうと、翌年1月5日に発令したところ、あれよ、あれよと「客招き担当」の駅長は、課長職のスーパー駅長に昇格し、わずか数年で、和歌山県に年間11億円の経済効果ということで県知事から「勲功爵」の称号をいただいた。助けようと思ったら、かえってこちらが助けられることになった。
 和歌山電鐵の事例が一つの参考になり、地方鉄道に「公有民営」の法制化が実現した。
 これで約90の地方鉄道のうち70くらいが生き残る可能性が生まれたといえる。