NEWS RELEASE:JR&私鉄    3
No.7706 (Re:7700) 【国土交通省】別紙2:JR北海道が講ずべき措置 1/2
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2014-01-21 22:04:53
JR北海道が講ずべき措置

1.日々の輸送の安全確保
 輸送の安全確保が至上命題である鉄道事業者として、以下の2.及び3.の措置を講ずる前においても、日々の輸送の安全を確保する必要がある。
 このため、以下の措置を講ずること。
 @ 会社全体を挙げての毎日の安全確認を、引き続き励行すること。
 A 現場における毎日の業務の実施に当たっては、以下の留意事項を徹底すること。
 ・常に安全を第一にするという基本認識を持つこと。
 ・法令や規程等のルールを遵守すること。
 ・安全を脅かすおそれのある事象に対して敏感であること。
 ・トラブルが発生した際等には、安全確保を最優先とした判断や対応を行うこと。
 B @及びAを確実に実施するため、本社において、現場の状況を常に把握し、発生した問題に対しては迅速な対応を行うこと。

2.第一歩の改善
 構造的な問題にも対応しつつ、安全な輸送を行うための徹底的な再生に向けた第一歩として、以下の鉄道事業者に求められる不可欠な安全対策を講ずること。

(1) 改ざんの根絶
@ 社内におけるコンプライアンスの徹底
 複数の保線管理室等において軌道変位の検査データの改ざんが常態化していること、さらには、平成25年9月19日の貨物列車脱線事故直後に改ざんが行われたこと、これには、保線管理室の職員のみならず、上部組織の管理職級の職員を含む職員も関与していたこと、また、一部の改ざんには本社の職員が関与していたことが認められた。さらに、コンプライアンスに関する研修の形骸化や改ざんに関する公益通報がなされていない等、コンプライアンスに関する制度について、その目的に沿った効果的な運用がなされていないことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・今回の改ざん問題に係る事実関係の徹底的な調査を踏まえ、まず経営陣が、このような改ざんの悪質性及び決してあってはならない問題であることを十分認識するとともに、全社におけるコンプライアンスを徹底することの必要性を十分理解すること。

・コンプライアンスに関する社内研修の内容、頻度等を抜本的に見直し、全職員がコンプライアンスの必要性を理解するよう社内教育を徹底すること。

・社内、行政等に公益通報窓口が設置されていることを含め、公益通報制度の積極的な活用について改めて周知徹底を図ること。

A 安全意識の徹底及び安全知識の向上に関する職員教育体制の再構築軌道部門において、正しい検査結果を確実に補修に反映させるという安全の基本的な意識及び知識が著しく欠如した職員が保線業務に携わっていたこと、また、以前から改ざんが常態化している現場が複数存在し、このような現場の職員の中には疑念を抱く者もいたにもかかわらず、改善に向けた行動が取られなかったことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・過去のトラブル等を参考としながら、会社全体を通じて、鉄道輸送における安全確保の必要性について徹底するとともに、鉄道事業者の基本姿勢としての安全性の向上に向けた不断の努力の重要性について認識させること。

・軌道部門において、定期的に検査を行い、その結果を基にルールどおりに補修を行うことについて、その安全確保上の意義を十分に理解させるとともに、安全に関する法令や社内のルールに関する知識を向上させるよう、職員教育の体制を抜本的に再構築すること。

・軌道部門以外の全ての技術部門においても、職員教育について同様の視点で検証し、見直しを行うこと。

B 記録を重視するルールの策定及びその徹底
 軌道部門において、検査結果を記録として残していない事例が多く存在し、また、補修前の本来の検査データを記録せず、補修後の数値を記録するという、検査及びその記録の意義を理解していない行為が行われていたことが認められた。また、補修作業の記録についても正しく行われていないことが認められた。さらに、車両部門において、外注先から提出されるべき外注業務の検査記録の提出を求めず、このため、外注業務の検査結果を確認していなかったことが認められた。このため、以下の措置を講ずること。

・軌道部門において、ルールに従い正確な検査を行い、その結果を正しく記録に残すこと、このような検査結果の記録に基づき、必要な補修作業を確実に行うこと、及び実施した補修作業の結果を記録することについて、規程等で明確に定め、これを徹底すること。

・車両部門をはじめ、軌道部門以外の全ての技術部門においても、同様の視点で検証し、必要な対策を講ずるとともに、記録の重要性について再徹底すること。

C 改ざんを防止する作業環境の整備
 簡易型軌道検測装置(トラックマスター)による検査及び分岐器の手計測による検査の結果については、その検査データを容易に改ざんできる状況にあったことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・軌道部門において、改ざんが行われる余地を極力少なくするとともに、検査データの転記ミス等の発生を防ぐため、機械による検査を行い、その検査データを自動的に管理できるシステムの導入を行うこと。

・軌道部門において、検査及び補修作業の結果について、多重のチェックを行う体制を確立すること。また、現場の管理者等が、常に職員の作業状況を確認し、正しい作業を実施するための適切な指導監督を行う体制を確立すること。

・軌道部門以外の全ての技術部門においても、同様の視点で検証し、必要な対策を講ずること。

D 改ざんが行われた場合における厳しい処分環境の整備
 以前から改ざんが常態化している現場が複数確認されたが、改ざんを行った者がこれまで処分されていなかったことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・今回のような改ざんを根絶するため、改ざんを行った者に対しては厳しい処分が行われるよう、厳正な社内規程の整備及びこの確実な適用を行うこと。

・悪質な改ざんについては、直ちに、行政・司法当局に通報・告発する等、厳格な対応も行うこと。

(2) 安全管理体制の再構築
@ 安全統括管理者の業務体制の刷新
 安全統括管理者が、各技術部門の現場の状況を適切に把握せず、これらの部門の業務を十分に統括管理していなかったこと、安全推進委員会で責任ある発言をしていなかったこと等安全統括管理者が安全対策の推進の中核となるべき役割を果たしていないことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・輸送の安全を確保するため、現場の状況を掌握し、必要な指示を的確に行うこと、必要により社長等に対して意見を述べること等の安全統括管理者に求められる機能の実効性を担保し、各技術部門を確実に統括管理する体制を確立すること。

・安全統括管理者が、安全対策の着実な推進及びその実施状況の確認を行う体制を確立すること。

A 安全推進委員会の運用の見直し
 安全推進委員会は、事故防止等に関する事項を総合的に検討し、安全確保上有効かつ適切な対策を樹立し、これを強力に推進することを目的として設置されたものである。しかしながら、同委員会では、これらの一部についての報告等に止まっていること、ヒヤリ・ハット事象、自社以外の事故情報等安全対策に有効な情報について調査審議されていないこと、「安全性向上のための行動計画」、「安全基本計画」等の輸送の安全を確保するための総合的な事項についての議論がされず、また、同委員会より先に経営会議に諮られている案件がある等同委員会が形骸化していることが認められた。さらに、同委員会の参加人数が多数であること、社内規程により定められた構成員以外の者が恒常的に出席して積極的に発言している一方、安全統括管理者等による責任ある発言が少ないこと等同委員会の運用上の問題が認められた。
 このため、安全推進委員会が以下の事項を確実に実施できる体制を確立すること。

・輸送の安全確保上重要と考えられる事故等及びヒヤリ・ハット事象の状況について、その原因究明及び必要と考えられる対策を調査審議すること。

・本「JR北海道が講ずべき措置」の実施等輸送の安全を確保するための総合的な事項について調査審議すること。

・以上のほか、鉄道の事故防止に関する事項を総合的に検討すべき安全推進委員会が本来の機能を発揮し、輸送の安全確保上有効かつ適切な対策を講ずるため、同委員会の適切な運用を図ること。

・社長をはじめとする経営陣は、会社経営に当たり、安全推進委員会での審議結果を最大限尊重し、その確実な実施を図ること。

B 事故等の原因究明・再発防止対策の検討体制の確立
 事故等の原因究明・再発防止対策の検討に当たっては、安全推進部の強力な主導による会社全体での取組みと、それを支える各技術部門での専門技術的な調査が必要であるが、特に車両関係のトラブルに関して、いずれも十分に行われていないことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・安全推進部において、会社全体として執着心を持って原因究明を行い、その結果を再発防止対策の検討に反映するよう、主導的な役割を果たすことができる体制を確立すること。

・車両部門において、安全推進部の主導の下、正確な事実関係の把握、車両部門の特性に応じた技術的な調査等を的確に行う体制を確立すること。

・車両部門以外の全ての技術部門においても、同様の視点で検証し、必要な対策を講ずること。

C 内部監査等の体制の充実
 安全に関わる現場における業務の実施状況及び本社等における管理の状況が適切かどうかを監査する体制が確立されていないことが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・内部監査について、監査をする者の専門性と独立性に留意しつつ、安全管理の実施状況に関する監査を行う体制を確立すること。

・監査役による監査について、安全に関する法令への適合性等に関する監査を行う体制を強化すること。

D 安全推進部の強化
 安全推進部には、安全統括管理者が行うべき統括管理業務の補佐、安全推進委員会に付議すべき事項に関する資料の整理等同委員会の事務局としての業務、また、各技術部門における事故等の原因究明関係業務の主導的な管理等、安全確保に関する全般的な管理を行うことが求められている。しかしながら、事故等の対応に追われていることもあり、これらの業務が十分行われていないことが認められた。
 このため、@からBまでの事項を着実に実施するため、安全推進部が、安全統括管理者の統括管理業務の補佐、安全推進委員会の事務局としての業務、各技術部門の安全確保に関する取組みの総合調整等の会社全体の安全対策の管理業務を優先的、かつ、円滑に行えるよう同部の体制を見直し、強化すること。

E 安全管理規程等の見直し
 Aの安全推進委員会、Dの安全推進部等に求められる業務について安全管理規程等において、明確に定められていないことが認められた。
 このため、@からDまでの事項を確実に実施し、組織体制上明確にするため、安全管理規程をはじめ社内の関係規程等を見直すこと。

(3) 安全確保を最優先とする事業運営の実現
@ 現場の業務実施体制の確立
 平成23年度以降、鉄道・運輸機構特例業務勘定の利益剰余金を活用した支援(経営安定基金の運用益の実質的な積み増し(元本相当2,200億円、利子相当年間55億円)及び設備投資支援(10年間600億円))等により配賦可能な財源は増加したが、軌道部門において、それを着実に活用するための工事施工能力が不足している等現場の業務実施体制が不十分であることが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・軌道部門における安全投資と修繕に関する計画を着実に実行するため、各現場の業務実施体制について検証を行い、必要な対策を講ずることにより、効率的な業務実施体制の確立を図ること。
・業務の外注に係るメリットとデメリットを整理した上で、外注の活用について検討すること。なお、外注の活用に当たっては、適正な発注手続を確保するとともに、外注先におけるコンプライアンスが徹底されるよう監督すること。
・軌道部門の業務の効率化を図るため、PCまくら木の導入等の設備投資を行うとともに、現場の状況に応じた作業方法の見直しを行うこと。

A 技術伝承のための教育体制の検討
 教育要員として活用すべき40代職員が不足しているため、教育要員として、社内の職員の活用、定年退職者の再雇用(エルダー職員)等を検討したが、トラブル対応等のため教育要員が十分に確保できなかったことが認められた。また、技術伝承のための効果的な研修や教育機関等の教育体制が不十分であることが認められた。さらに、軌道部門における外注化については、かつては、発注元・外注先ともに経験豊富な職員が担当していたが、これらの職員の退職に伴い、外注業務に必要な現場作業に関する知識・経験が不足していく懸念があることが認められた。
 このため、以下の措置を講ずること。

・技術伝承のためのOJT教育について、例えば、エルダー職員のうち特に熟練した技能を持つ者を指定し教育業務に特化させることや、職員を外部へ積極的に派遣し、知識・経験を獲得させること等により、OJT教育要員の人材を確保するための体制を導入すること。

・現場職員の技術力の向上を図るため、入社・配属直後の基礎教育や中堅職員への分野別教育等に関する他のJR各社等の取組みを参考にしつつ、教育訓練の充実を図ること。

・外注の活用を図る場合には、外注管理に必要な知識・経験を整理した上で、これらを習得できる教育訓練体制を導入すること。

B 当面の必要な安全投資の推進等
 経営陣が、予算に関して、現場の声を十分反映することができず、また、効率化を図る中で安全のための設備投資が小さくなったとの認識とともに、現場では本社に要望しても無駄との諦め感が生じているのではないかとの問題意識を持っていることが認められた。
 このため、安全確保のため必要な設備投資を早急に行うため、「安全基本計画」のうち設備投資関連部分を見直し、現場からの提案や会社としての当面の緊急性を踏まえ、安全投資と修繕に関する5年間の計画を策定し、着実に実施すること。計画の策定に当たっては、@の600億円の設備投資支援の活用の前倒しも検討すること。

C 安全意識の徹底、記録を重視するルールの策定・徹底(再掲)
 (1)A及びBにおいて、「安全意識の徹底及び安全知識の向上に関する職員教育体制の再構築」及び「記録を重視するルールの策定及びその徹底」について改ざんの根絶のための措置として述べたところであるが、これらの措置は、「安全確保を最優先とする事業運営の実現」のためにも重要なものであることから、この観点も含めて、必要な措置を講ずること。

(4) 技術部門の業務実施体制の改善
@ 各種規程等の検証、改正・整備、周知徹底、確認及び見直し軌道部門及び車両部門において、規程等の整備・統一がされていないこと等が認められた。
 このため、全ての技術部門において、現行の全ての規程等を検証するとともに、必要な改正・整備、周知徹底、遵守状況の確認を行い、さらに、状況の変化等に応じて見直しを行うこと。
 特に、土木部門における旧国鉄時代から踏襲されている基準等を定めた規程等、車両部門及び運転部門における教育訓練関係規程等については、重点的に検証し、必要な改正・整備を行うこと。

A 本社の現場に対する指導体制の確立
 本社各技術部門が現場の状況を十分に把握していないこと、本社から現場に対する指導が社内での文書の発出に止まっていること等、本社が現場における業務上の課題に対して問題意識に乏しく、適切な指導が行われていないことが認められた。
 このため、本社各技術部門が、現場の状況を的確に把握する体制を整備するとともに、現場における課題を整理し、これに対する対応策について現場の提案を踏まえつつ検討し、必要な指導等を行う体制を確立すること。

B 車両部門における多重のチェック体制の確立
 車両部門の一部の現場において、検修作業の実施状況についての多重のチェック体制が不十分であることが認められた。
 このため、全ての現場において、取り扱う車両の状況等の各現場の特徴を踏まえつつ、検修作業の結果についての多重のチェック体制を確立すること。

(5) 第三者による安全対策監視委員会(仮称)の設置
 例えば、JR西日本では福知山線の事故後、数年にわたり外部諮問委員会等を設置し、安全を確保する企業風土の構築に取り組んできており、他分野でもJALやNEXCO中日本において第三者を活用した検討が行われてきているが、JR北海道では、一時的に又は特定の分野において第三者による検討を行った例はあるものの、企業風土改革を目的とした常設の第三者機関の設置は行われていない。
 このため、他社の取組みを参考に、第三者による外部からの視点に基づき、再生に向けて、安全対策等の実行に関して監視し、助言を行うとともに、将来に向けた追加対策等の提案を行う諮問委員会等の形態の常設の組織を設置すること。また、当該組織の設置及び運営に当たっては、当該組織と安全推進部との間の密接な連携を確保すること。