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No.8761 (Re:8760) 【国土交通省】「JR九州完全民営化プロジェクトチーム」とりまとめ 2/4
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2015-01-27 21:53:48
別添2 1/3

        JR九州完全民営化プロジェクトチーム
              とりまとめ

            平成27年1月


               目 次

はじめに
1.国鉄改革の枠組みとJR九州の概要

2.九州地域においてJR九州が果たしている役割
(1)交通サービスの提供者としての役割
(2)観光振興等の地域の活性化に果たす役割
(3)今後の課題

3.JR九州の経営状況・財務状況の現状と見通し

4.JR九州の完全民営化にあたっての課題と対応
(1)基本的な考え方
(2)経営安定基金の取扱い
(3)JR会社法の取扱い
(4)上場の時期

おわりに
【参考1】ヒアリングにおける主な御意見
【参考2】JR九州完全民営化プロジェクトチーム 構成員一覧
【参考3】JR九州完全民営化プロジェクトチーム 開催実績

はじめに
 九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)は、九州地域の基幹的公共交通機関として九州全域に鉄道ネットワークを運営しており、本鉄道ネットワークは、地域内の都市間輸送や我が国観光立国の推進を担う重要な交通インフラであるとともに、通勤・通学をはじめとする日々の生活を支える必要不可欠な移動手段として、九州地域の経済及び社会生活にとって極めて重要な役割を果たしている。
 他方で、昭和62年4月の国鉄分割・民営化によって発足した特殊会社であるJR九州は、これまで累次の閣議決定1により「経営基盤の確立等条件が整い次第、できる限り早期に完全民営化する。」こととされており、条件が整い次第完全民営化し、より効率的な経営体制の確立を目指すこととされている。
 そこで、国土交通省鉄道局では、平成26年10月、関係者を構成メンバーとした「JR九州完全民営化プロジェクトチーム」を立ち上げ、(1)九州地域のネットワークの現状・展望と課題、(2)JR九州の経営状況・財務状況の現状と見通し、(3)JR九州の株式上場に関する課題と対応、(4)JR九州の株式上場による効果と影響について、関係者からのヒアリング等を実施しつつ、検討してきた。
 本とりまとめは、同プロジェクトチームでのヒアリング及び議論を踏まえて、今後のとるべき方向性等についてとりまとめたものである。

1 「国鉄改革のための基本方針について」(昭和60年10月11日閣議決定)
 「日本国有鉄道清算事業団の債務の償還等に関する基本方針について」(昭和63年1月
26日閣議決定)
 「日本国有鉄道清算事業団の債務の償還等に関する具体的処理方針について」(平成元年12月19日閣議決定)
 「特殊法人の整理合理化について」(平成7年2月24日閣議決定)
 「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定) 等


1.国鉄改革の枠組みとJR九州の概要
 昭和62年、国鉄が全国一社制かつ公共企業体としての経営体制に起因して破綻に至ったことから、民間会社による効率的かつ安定した経営体制を確立し、真に輸送需要に適合した効率的な輸送を提供することにより、国鉄の運営していた鉄道事業を再生することを目的に国鉄改革が行われた。この際、国鉄の経営破綻の原因の一つが、経営の自主性を喪失している等の弊害を有する公社制度という経営形態にあるとされたことから、多様化する利用者のニーズに即応し、企業性を発揮した活力ある経営を行い得るようにするため、できるだけ民間会社と同様の経営の自由と自主性を持つことが必要であるとの考えの下、国鉄の民営化を進めることとされた。また、破綻の原因として、全国一元的な組織運営が指摘されたことから、地域の実情に即した運営が行われる必要があること、適切な経営管理が行われる必要があること等に鑑み、旅客部門については、旅客流動にも着目した上で、全国を6分割することとされ、昭和62年4月、日本貨物鉄道株式会社(以下「JR貨物」という。)も含めたJR7社が発足した。
 この際、新たに発足したJR旅客各社は、将来にわたって安定的な経営を継続できるよう、各社の事業に必要な資産を国鉄から引き継ぐ一方、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR本州三社」という。)については、輸送量の多い地域の資産を引き継ぐこと等の理由から、国鉄の長期債務を引き継ぐこととなった。他方、JR九州、北海道旅客鉄道株式会社(以下「JR北海道」という。)、四国旅客鉄道株式会社(以下「JR四国」という。)については、いずれも営業損益で赤字が生じることが見込まれたため、不採算路線も含め将来に亘り事業全体で採算が確保できるよう、国鉄の長期債務を引き継がないこととした上で、将来における維持更新投資にも配慮して、これからの営業損失を補填し得る収益が生み出される措置として経営安定基金が設置された。
 また、その際、国鉄の鉄道事業を承継したJR会社が国鉄改革の経緯及び趣旨に沿った事業経営を行うよう、JR各社が自立するまでの間、国の後見的な助成・監督を目的として、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和六十一年法律第八十八号)(以下「JR会社法」という。)が制定され、JR九州を含めたJR会社は同法の対象として、事業計画の策定・定款変更等について国土交通大臣の認可が必要であるなど、国がJR会社の経営等に関与することとされた。
 その上で、国鉄改革の中核が、経営の自由と自主性をもつ民間会社としての経営体制の確立であることから、JR各社については、累次の閣議決定において、「経営基盤の確立等条件が整い次第、できる限り早期に完全民営化する。」とされた。
 この方針のもとで、平成13 年、JR本州三社については、良好な経営状況を継続し、一般的な民間会社と比べても遜色ない水準に立ち至っていたことから、国による後見的な助成・監督の必要性がなくなり、完全民営化の条件が整ったものと判断されたため、上記閣議決定に基づき、JR会社法の対象から除外した。
 また、日本国有鉄道清算事業団(現在の(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「(独)鉄道・運輸機構」という。))が保有していたJR本州三社の株式は、会社の経営状況、株式市場の動向等を踏まえ、平成5年以降順次売却され、平成18年に全ての株式の売却が終了したことをもって完全民営化が完了した。

 JR九州については、現在も継続して(独)鉄道・運輸機構が同社の株式を100%保有している特殊会社であり、JR会社法の適用を受けている。同社は現在、九州全域に旅客鉄道路線約2,270kmの鉄道ネットワーク、社員数約9,300人を有する鉄道事業者として、九州七県で1日あたり約3,000本の在来線旅客列車を運行しており、年間約323百万人が利用している。
 また、平成16年には、新八代・鹿児島中央間、平成23 年には博多・新八代間の九州新幹線が開業し、現在は1日あたり約140 本の新幹線を運行するなど、同社が運行する幹線ネットワークは九州域内の重要な交通手段の一つとなっている。
 さらに、在来線及び幹線等に加え、同社は「ななつ星in九州」や特急「ゆふいんの森」「指宿のたまて箱」等、観光資源となる鉄道列車を多数運行し、九州の観光振興に大きな役割を果たすとともに、九州各地の主要都市や本州を結ぶバス路線、福岡・釜山間を結ぶ高速船「ビートル」等を運航するなど、様々な交通事業を行っている。
 他方で、同社は鉄道、バス等の交通事業のみならず、駅ビル、マンション等の不動産事業、流通・外食事業、ホテル事業等の関連事業も積極的に行っており、これら関連事業は、九州の地方経済活性化、観光振興等に重要な役割を果たしている。


2.九州地域においてJR九州が果たしている役割

(1)交通サービスの提供者としての役割
 JR九州は、九州域内に約2,270kmの旅客鉄道路線を有しており、九州の旅客輸送人員の約2割を担っている。
 JR九州の輸送人員のうち、約6割は定期券利用者であり、特に地方部ではその比率が8割を超える路線もあるなど、同社は、通勤、通学等を支える重要な役割を担っている。このような地域内の日常の交通においては、自家用車や路線バス等の自動車が主要な交通手段となっているほか、都市部では、民営・公営の鉄軌道も大きな役割を果たしているが、JR九州は、安定的な公共交通機関として、これらの輸送機関と相まって、人々の日常の足を支えている。
 また、ビジネスや観光等のための域内都市間、地域間の連絡については、九州においても、高速道路ネットワークやこれを活用した高速バスが大きな役割を果たすようになっているが、JR九州は、九州新幹線や在来幹線を中心として、定時制に優れた大量輸送機関として重要な機能を担っている。
 さらに、九州と九州域外とを結ぶ交通としては、山陽新幹線をはじめとする鉄道輸送網、各県の空港を拠点とした航空輸送網、高速道路網等が整備されているが、JR九州の鉄道ネットワークは、山陽新幹線と九州新幹線の直通運転、一部空港へのアクセス等を含め、九州各地と九州域外との交流を支える役割を果たしている。
 JR九州は、昭和62年の会社発足以降、都市近郊を中心に約60の新駅を設置し、きめ細かいダイヤ設定を行うなど、地域内輸送の充実に努めるとともに、都市間輸送においても、企画切符の発売や高速バスとの連携等により、その利便性向上のための取り組みを行っている。このような取り組みもあって、同社の鉄道ネットワークを利用する旅客数は、会社発足時に比べ約3割増加するなど、その輸送サービスは、人々の日常生活や経済活動に深く密着し、九州地域の基幹的輸送機関として必要不可欠な存在となっている。

(2)観光振興等の地域の活性化に果たす役割
 九州には、各地域の特性を反映した魅力的な拠点が形成されており、各地に風光明媚な観光地が多数点在している。JR九州の鉄道ネットワークは各観光地へ向かう観光客の移動手段として重要な役割を果たしている。
 また、JR九州は、クルーズトレイン「ななつ星in九州」や特急「ゆふいんの森」「指宿のたまて箱」等、観光資源となる鉄道列車(デザイン・アンド・ストーリー(D&S)列車)を多数運行し、D&S列車そのものが観光素材となるなど、多くの観光客をひきつけている。これらD&S列車の運行は、沿線自治体や地域住民の自主的なおもてなし活動とも連携するなど、地元関係者から観光振興に向けてJR九州に期待が寄せられている。
 加えて、九州は東アジアとの玄関口であり、JR九州は海外からの旅行者向け鉄道パスであるJR九州レールパスの海外直接販売2をはじめ、インバウンド観光客の取り込みにも積極的に取り組んでおり、その成果もあって、近年、九州を訪問する観光客は著しく増加している3
 上記のようなJR九州の観光振興に向けた取り組みは、九州の魅力を高め、内外からの観光客誘致に大きな役割を果たすとともに、観光振興を通じた地域の賑わいの創出、関連産業への経済効果の波及等、地方経済活性化に大きく寄与している。
 また、JR九州は鉄道沿線の不動産開発事業や、駅ビル開発等の鉄道を核としたまちづくりに取り組んでおり、これらの事業が、駅周辺の商業活動の活性化、新たな雇用の創出、周辺人口の増加等につながっている。このため、地元経済界等からも、今後の九州経済を牽引する主体として、JR九州の取組みに期待する声が多い。

(3)今後の課題
 JR九州の鉄道ネットワークは、九州全域に及び、九州の交通ネットワークの骨格を形成している。その輸送サービスは地域住民やビジネス・観光客の足として広く利用されており、地域間の交流人口の増大、地域経済活性化及び観光振興に貢献している。
 このため、JR九州は自社の鉄道ネットワークが果たしている意義・役割を再認識し、今後の九州地域の発展及び活性化に向けて、不採算路線も含めた必要な鉄道ネットワークの維持とともに、サービスの向上、他交通モードとの連携、バリアフリー化の推進、防災対策の強化等の鉄道ネットワークの更なる発展を進めていく必要がある。
 また、鉄道事業者にとって最も重視されるべきは、安全性の確保である。現在、JR九州は「安全はあるものではなくつくりあげていくもの」という考えのもと、鉄道の安全の確保及び向上に向けた取組みを各種行っているが、引き続き国民の安全・安心や生活の足を守るという観点から、安全設備等への投資をおろそかにせず、必要な安全レベルを確保していかなければならない。
 九州では、全国平均を上回るペースで人口減少・高齢化が進んでいる。そのような中で、高齢者を含む人々の移動を確保し、地域間の交流を活発化する上で、九州全域に鉄道ネットワークを有するJR九州は重要な役割を担うべき立場にある。地方創生が重要な課題となる中、観光振興への取り組みや関連事業を通じたまちづくり等も含め、JR九州には、地域活性化の牽引役として、大きな期待が寄せられている。JR九州は、地方自治体や地元経済界、地域住民と連携し、九州の活性化に更なる貢献をしていくことが必要である。

2 JR九州レールパスの販売実績推移(52,000枚(平成23年度)、78,000枚(平成24年度)、98,000枚(平成25年度))(出典:JR九州)
3 九州への訪日外国人数推移(約72.6万人(平成23年)、約115万人(平成24年)、約125万人(平成25年))(出典:国土交通省九州運輸局)


3.JR九州の経営状況・財務状況の現状と見通し
 JR九州は、国鉄改革以後、鉄道事業者として、経営効率化努力を行うとともに、新駅の設置やサービスの向上等による利用者利便性の向上、D&S列車をはじめとする新規需要の創出に資する取組みなど、創意工夫を活かした様々な経営努力を行ってきている。これらの取組みにより、鉄道事業における営業損益は、昭和62年度は△280億円であったが、平成25年度は△156億円と改善している。
 また、同社は、他の大手民間鉄道会社と同様に、鉄道事業に加え、駅ビル、マンション等の不動産事業、流通・外食事業、ホテル事業等の関連事業を展開しており、JR博多シティの運営管理等を行っている駅ビル・不動産事業は約167億円、流通・外食事業は約32 億円の経常利益(平成25年度)を計上するなど、子会社も含めたこれら関連事業の経常利益が約250億円(平成25年度)に達している。
 このような取組みにより、JR九州の財務状況は、近年、リーマンショック等による一時的な落ち込みはあるものの、連結決算で、概ね200億円規模の安定した経常利益を計上しており、売上高経常利益率も5%を超え、一般的な民間会社と比べても遜色ない水準となっている。
 例えば、東京証券取引所の上場基準にJR九州をあてはめると、最近2年間の連結での経常利益の総額が5億円以上であることとする等の形式基準については、同社は、平成24年度には173億円、平成25年度には212億円の経常利益(連結)を計上しており、基準を満たしている状況にある。
 以上に加え、今後についても、同社は、鉄道事業において、引き続き輸送サービスの改善や沿線開発、インバウンドの誘致促進等による需要喚起に努め、関連事業においても、これまでに蓄積した経営ノウハウをさらに活かすことで、将来にわたって安定的な経営を行うことが可能であると見込まれることから、JR九州は上場に向けた条件が整っていると考えられる。累次の閣議決定では、「経営基盤の確立等条件が整い次第、できる限り早期に完全民営化する。」とされていることから、現在、JR九州が特殊会社であるが故に課されている規制を撤廃し、(独)鉄道・運輸機構が保有するJR九州の株式を全て売却することで、JR九州の完全民営化を達成することが適切である。
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