NEWS RELEASE:JR&私鉄    3
No.6921 (Re:6918) 【地域交通総研】組織員の所感 [1/2]
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2013-04-06 20:52:01
平成25年4月4日
両備グループ広報

理事  三村 聡

所 感
近年、地域間格差を拡大せしめる要因のひとつに「モビリティの脆弱化によるネットワーク性の欠如」が指摘されている。経済成長期までの国土開発思想は、規模の経済性を最優先とする大規模高速移動に耐えうるインフラの早期整備に力点が置かれ、急増する都市人口やモータリゼーションに対応する都市計画や交通計画を十分に検討する余裕が無いまま地域経済が急激に成長した。その結果、低成長期に入り、多くの地方都市で中心市街地が空洞化し、都市間格差は拡大を続け、公共交通の主役である路面電車やバス路線は全国的に衰退の途をたどっている。
さて、こうしたなかで次世代の地域社会の創造に向けた新たな流れが生まれつつある。それは官民の新しい関係構築を模索する動きである。これまで公共インフラを合理的に整備する組織であると理解されてきた行政システムが国民の多くからその組織疲労を指摘されるようになった。官の視座からは、国と県や市町村の役割責任の分担・分離や道路行政と交通行政の機能分離にまつわる組織的課題がガバナンスの問題として顕在化している。
一方、民間(市民や企業)も行政任せにして"交通まちづくり"が抱える課題に対して沈黙を守るケースが多かった。この点は「物言わぬ住民」として市民側の課題として指摘されてきた。こうした従来型の発想に基づく都市計画や公共交通計画では、利用者ニーズに適応した環境整備はできまい。
新しい公共や協働が議論される只中にあって、豊富な経験と実績を有する交通事業者自らが、地域公共交通の課題に正面から向き合うことを目的として、地域公共交通総合研究所を設立されたことは、誠に時宜を得た英断である。
本研究所の活動が、次世代を担う新たな地域公共交通のデザインを描く研究や諸活動を通じて、持続的な地域社会の発展に資することを祈念する。

略 歴 等
1959年愛媛県生まれ。法政大学大学院社会科学研究科修士課程修了。社団法人全国労働金庫協会、社団法人金融財政事情研究会、金融財政総合研究所、現代文化研究所(トヨタ自動車研究所)、愛知学泉大学を経て、2011年10月岡山大学着任、11月から岡山大学地域総合研究センター副センター長、教授。


評議委員長 千葉 喬三

所 感
 今更言うことでもありませんが、我が国は法治国家です。全ての営為は法を裏付けとし実施されますし、しなければなりません。無論、交通体系・政策も然りです。
今日、全国各地で鉄道はじめバスや旅客船等、いわゆる公共交通手段が崩壊しつつあります。国もこれを座視していた訳でなく、平成19年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を制定し、続いて平成23年には「地域公共交通確保維持改善事業」を創設し、何とか消えゆく地域の公共交通手段の維持・回復をはかろうとしてきました。
しかし、現実に地域で展開されつつある現象はどうでしょうか。維持回復どころか、日に日に深刻化しつつあるのが実情です。私の専門は交通ではありません。ですが、このような状況は、私の専門に近い農林分野において、数十年間に亘り見てきた光景と重なります。
日本の農林業(とりわけ農業)振興のため、としてこれまで幾つの政策とそれを担保するとして、どれだけの法律が出されてきたことか。しかし、最近のTPP騒動に見られるように、その間、日本の農業は裏腹に衰退の急坂を転げ落ちてきました。
法は必要条件です。しかし十分条件ではないのです。交通問題においても、中央から出される画一な法(仕方ないことですが)や方針等だけでは事態は好転しないと考えるべきです。国を始め官制の下でこれを実現するのは困難であることは農政を見れば明らかです。
如何に地域に合わせて運営(経営)化するかの知恵が要るのです。その知恵はどうすれば出るのか。その答えは、本研究所を設立された小嶋会長が日頃から唱えておられる「知行合一」にあると思います。便乗するようですが、「知行合一」は、私もよく使わせてもらってますので、何かのお役に立てればと念じております。

(略 歴 等 別記)
以上


アドバイザリー・ボード委員 土井 勉

所 感
 交通,特に公共交通は日々の生活に欠くことができない点では水や空気と同様です.その必要性は多くの方々が理解されているのですが,その現状を経営という視点から見ると大変に厳しい状況にあります.
 しかし,公共交通は自動車以上に多くの人々に外出の機会を提供し,社会的活動や経済活動を支え,交流を促進することで孤独・孤立感からの脱却を促し,健康の増進にも多くの役割を果たしています.
 公共交通の現場が負のスパイラルから脱却し,明るく希望が持てるように行政,事業者,市民がビジョンとドリームを持って活動を展開する必要があります.これはまさに,これからのまちづくりを構想することでもあります.
 こうした活動を理論的・実践的に後押しする地域公共交通総研に期待される役割は大きいと思います.
 私もその一助となることができればと考えています.

略 歴 等
1950年 京都市右京区生まれ
1976年 名古屋大学大学院工学研究科修了
     同年,京都市
1991年 阪急電鉄株式会社
1997年 京都大学博士(工学)
2004年 神戸国際大学経済学部教授
2010年 京都大学大学院工学研究科・医学研究科安寧の都市ユニット副ユニット長・特定教授

以上