NEWS RELEASE:JR&私鉄    3
No.4162 (Re:4159) 【JR東海】国土交通省への要望書の提出について(4/4)
ほりうち(ccbu8181) 2011-02-17 21:17:40

第一に、本施策は環境政策との整合性に欠ける施策であるといわざるを得ません。本施策の実施により、自動車の交通量や渋滞が増大するのみならず、環境負荷の少ない鉄道からの転換が生じます。(財)運輸調査局が一定の前提をおいて推計したところ、新たな上限料金制度がETC搭載の有無に関わらず全乗用車を対象に実施された場合、CO2 排出量は年間960 万トン程度増加するとされています。政府は「CO2 排出量を2020年までに対1990年比で25%削減する」という極めて高い目標を掲げており、物流部門も含め一層のモーダルシフトの推進が求められるなかで、CO2 排出量を増加させる施策を実施することは時代に逆行するものと考えます。

 第二に、本施策は一般財源を原資としていますが、この施策による受益者は高速道路の利用者に限定されます。「受益者負担」の原則を覆し、広く国民にその負担を求めることについて、納得が得られるとは考えられません。

 第三に、本施策により鉄道事業は大きな影響を受けると想定されます。実際に、昨年6月から実施されている「社会実験」により、無料化区間と並行する線区を中心に鉄道から高速道路利用への転換が進んでいます。特に、無料化区間と並行する線区の多くは、採算の厳しい地方路線であり、今後も無料化が継続される場合には、運行本数の削減なども検討せざるを得なくなる事態も想定されます。これに加えて、新たな上限料金制度が実施されることとなれば、鉄道事業に及ぼす影響はさらに拡大することは確実です。
 (財)運輸調査局の試算では、新たな上限料金制度の導入により、鉄道利用者(主に新幹線や特急列車をご利用される方)の5.3%(通年)が自動車利用に転換すると推計され、JR旅客会社の経営に深刻な影響を与えることになります。また、中型車以上を対象にした早朝夜間の無料化により、JR貨物会社への影響がさらに拡大すると見込まれます。
 他の公共交通機関においても、土日祝日上限1,000円施策によって、航路の休廃止や路線バスの減便などが進んでおり、一定のバランスの上に成り立っていた我が国の交通体系が、大きく崩れつつあります。政府において進められている「交通基本法」制定に向けた議論のなかでも、「各種交通手段のベストミックスを確保し、持続可能な交通体系を構築する」ことが重要な視点とされていますが、本施策はこうした考え方とは相反するものです。本施策を実施するにあたっては、全体の交通体系をどのように構築するのか、その中でこれまで地域の足としての使命を果たしてきた公共交通機関の役割をどのように位置づけるのか、そして本施策により影響を受ける公共交通機関に対する補償措置がなければ存続が困難となることなどについて、議論を尽くすことが必要不可欠です。

 以上により、私どもとしては、高速道路の無料化や上限料金制度については反対であり、見送っていただくよう改めてお願い申し上げる次第です。

以上