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No.5181 (Re:5180) 【国土交通省】別添:北陸新幹線(敦賀・新大阪間)環境配慮書について
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2019-08-29 23:45:56
  「北陸新幹線(敦賀・新大阪間)計画段階環境配慮書」について(意見)

 北陸新幹線(敦賀・新大阪間)計画段階環境配慮書については、その内容は全体として適切と認められるが、環境大臣意見を勘案し、環境の保全の見地から、下記の意見を述べる。

                  記

1.総論
(1)ルートの選定等
 本配慮書では、トンネル・橋梁・立坑・車両基地等の位置に関する具体的な情報が含まれていないため、方法書以降の手続においては、できる限り具体的な事業内容を記載の上で、より詳細な環境影響について検討すること。
 また、想定区域には、京都丹波高原国定公園を始めとする複数の国定公園、世界遺産に登録されている古都京都の文化財等、環境の保全上重要な地域が存在している。今後、ルートの位置等を絞り込むに当たっては、以下の2点について検討すること。

ア 国定公園
 越前加賀海岸国定公園、京都丹波高原国定公園、琵琶湖国定公園及び金剛生駒紀泉国定公園を極力回避するルートを検討し、やむを得ず通過する場合には、本事業実施に伴う国定公園の風致景観への影響を極力低減するよう、国定公園区域内における施工により生じる影響を念頭に、ルートの選定、トンネル構造を始めとする工法及び構造等を検討すること。

イ その他
 環境の保全上重要な以下の地域について、事業の影響を回避することを検討し、回避することが困難な場合には、本事業実施に伴う影響を極力低減するよう、工法及び構造等を検討すること。

(ア)学校、病院その他の環境の保全についての配慮が特に必要な施設(保育所、幼稚園及び社会福祉施設を含む)(イ)市街地及び集落(ウ)主要な河川、湧水地(エ)世界遺産、国宝、重要文化財、史跡・名勝・天然記念物等の歴史的文化的遺産(オ)鳥獣保護区、希少な動植物の生息・生育地、特定植物群落、自然度の高い植生、巨樹・巨木林(カ)景観資源、主要な眺望点、主要な人と自然との触れ合いの活動の場

 なお、やむを得ず市街地を高架で通過する場合には、騒音、振動、景観、日照阻害、電波障害等の影響が懸念されるため、これら環境影響評価の項目についても、適切に調査・予測及び評価を行う必要がある。
 また、やむを得ず環境の保全上重要な地域において、土地の改変を行う際には、発生土の抑制や湧水による影響、希少な動植物及びその生息・生育地への影響の低減の観点から、できる限り、土地の改変量を減少させるべきである。このため、土地の改変を行う部分(トンネル出入口部、立坑、車両基地等)については、影響が必要最小限のものとなるよう、検討すること。また、工事用道路等の関連施設の配置の検討に当たっては、既存の道路や遊休地等を利用することにより、これらを新設する場合に比べ、環境影響の程度を低減することが可能な場合には、その利用を考慮すること。さらに、森林法(昭和 26年法律第 249号)に基づき指定された保安林及び砂防法(明治 30年法律第 29号)に基づき指定された砂防指定地については、影響を可能な限り低減するよう検討するとともに、本事業による計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、方法書以降の図書に反映させること。

(2)環境保全措置の検討
 環境保全措置の具体化に当たっては、調査の結果、専門家等の助言を踏まえ、措置の内容が十全なものとなるよう客観的かつ科学的に検討すること。その際には、環境影響の回避又は低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
 また、専門家等の助言及びその対応方針等を公表し、客観性及び透明性を確保すること。なお、効果の不確実な環境保全措置を実施する場合には、その効果を事後調査により確認する必要がある。

(3)関係地方公共団体等との連携
 事業実施に当たっては、関係地方公共団体の意見を十分勘案し、環境影響評価において重要である住民への説明や意見の聴取等の関与の機会の確保についても適切に行うこと。

2.各論
(1)大気環境
ア 大気質
 本事業は、山間部等の比較的清浄な地域で多くが行われることから、工事用車両の運行に伴い排出される大気汚染物質による大気質への影響について、地域特性に応じた適切な環境保全措置を検討すること。

イ 騒音及び振動
 列車走行に伴う騒音及び振動について、今後、環境基準が類型指定された場合にあっては、より一層の影響の低減を検討するよう、沿線の状況を踏まえた予測及び評価を行い、音源対策を基本として、適切な環境保全措置を講ずることにより、環境基準の達成を図ること。
 なお、土地利用対策を含む総合的な対策の検討及び実施に当たっては、関係機関との十分な連携を図ること。

(2)水環境(水質、地下水、水資源)
 山岳トンネル部の湧水対策は、事前に地質・水文学的シミュレーション等の手法による予測を行った上で対策を検討しておくことが望ましいため、本線及び斜横坑等のトンネル工事計画の作成の前に、最新の科学的な知見に基づいた解析を行い、その結果に基づき、地下水位及び河川流量への影響を最小化すべく、水系を回避する、又は適切な工法及び環境保全措置を講ずるよう、検討すること。
 また、京都府及び大阪府の想定区域内の市街地においては、鉄道施設の地下構造が想定されることから、地下水位の低下及びそれに伴う地盤沈下並びに地下水質等への影響を及ぼすおそれがあるため、地下水調査等により現状を把握の上、適切に予測を行い、詳細なルートの位置等の検討に当たっては、専門家等の助言を踏まえて、地下水環境に影響を及ぼすおそれが小さい位置及び構造の採用等により、その影響を回避又は極力低減すること。なお、必要に応じて適切な環境保全措置を検討するとともに、事後調査により工事中及び供用後の地下水の状況把握に努め、それらを公表するなど客観性及び透明性を確保すること。

(3)動物、植物、生態系
 想定区域及びその周辺には、自然環境保全法に基づく自然環境保全基礎調査の第2・3・5回調査(特定植物群落調査)において選定された特定植物群落及び同調査の第6・7回調査(植生調査)において自然度が高いとされた植生が多く存在するとともに、湿地や河川等の水域には、希少な動植物の生息・生育地が存在することから、動物、植物、生態系への影響が懸念される。このため、詳細なルートの位置等の検討に当たっては、これら重要な自然環境の改変を極力回避すること。加えて、湿地や河川等の水域及びその周辺で、やむを得ず工事を実施する際には、適切な工法及び構造等を検討することで、水の濁り等を抑制し、希少な動植物の生息・生育地への影響を回避又は極力低減すること。また、方法書以降の手続においては、専門家等からの助言を踏まえて調査、予測及び評価を行い、適切な環境保全措置を検討すること。

(4)景観及び人と自然との触れ合いの活動の場
 想定区域及びその周辺には、優れた自然の風景地及び人と自然との触れ合いの活動の場である越前加賀海岸国定公園、京都丹波高原国定公園、琵琶湖国定公園及び金剛生駒紀泉国定公園等の自然公園や長距離自然歩道及び「生物多様性保全上重要な里地里山」(平成 28年4月環境省)に選定されている「美山町江和地区」などが存在しており、景観及び人と自然との触れ合いの活動の場への影響が懸念される。このため、詳細なルートの位置等の検討に当たっては、本地域の景観との調和を図り、これらの人と自然との触れ合いの活動の場の機能を低下させないよう配慮し、越前加賀海岸国定公園、京都丹波高原国定公園、琵琶湖国定公園及び金剛生駒紀泉国定公園を極力回避するルートを検討すること。また、国定公園計画に位置づけられた利用拠点や眺望点及び主要な人と自然との触れ合いの活動の場並びにそれらの利用状況を適切に把握するために必要な調査を実施した上で、予測及び評価を行い、影響を回避又は極力低減するとともに適切な環境保全措置を講ずるよう、検討すること。

(5)廃棄物等
ア 発生土
(ア)発生抑制、現場利用の徹底トンネル掘削等の工事に伴う発生土については、発生量を抑制するよう検討するとともに、できる限り場外搬出量を抑制するよう、検討すること。
 また、方法書以降の手続において対象事業実施区域内の土壌汚染について、自然由来の重金属等による汚染状況を含め適切な調査を行った上で、汚染土壌による環境への影響が極力生じないよう適切な措置を講ずるよう、検討すること。

(イ)発生土置場の選定要件
 今後、新たに仮置場の設置場所を選定する場合については、自然度の高い植生、湿地、希少な動植物の生息・生育地、まとまった緑地等、土砂の流出があった場合に近傍河川の汚濁により影響が生じるおそれがある区域について必要な検討を行い、影響を回避又は極力低減するとともに適切な環境保全措置を講ずるよう、検討すること。
 また、登山道等のレクリエーション利用の場や施設、住民の生活の場から見えない場所を選定するよう配慮し、設置した際には修景を行うなど、自然景観にできる限り配慮すること。

イ 廃棄物
 工事に伴い発生する廃棄物については、できる限りその発生量を抑制するよう、工法等を検討するとともに、可能な限り再生利用するよう検討すること。また、供用時に発生する廃棄物についても、その減量に取り組むよう、検討すること。

(6)温室効果ガス
 工事に伴う温室効果ガス排出量をできる限り削減するよう、工事における省エネや再生可能エネルギーの利用等の環境保全措置を検討すること。

(以上)