NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.367 (Re:348) 【国土交通省】DMV技術評価委員会の結果
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2015-10-30 22:02:21
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省

「デュアル・モード・ビークル(DMV)に関する技術評価委員会」の結果について

                             平成27年10月30日

 標記技術評価委員会を下記のとおり開催しましたので、その概要をお知らせします。

               記

1.日時 平成27年10月30日(金) 10:30〜11:30

2.場所 中央合同庁舎第3号館6階 鉄道局大会議室

3.委員 別紙「DMVに関する技術評価委員会」のとおり

4.議題 運転保安システムの安全性評価
       中間とりまとめ(案)

5.概要
(1)JR北海道において開発された運転保安システムの安全性について、評価が行われた。
(2) 中間とりまとめ(案)について、了承された。
(3) 今後の委員会について、DMVの技術開発状況等を踏まえ、開催することとされた。

6.中間とりまとめの公表
  別添「中間とりまとめ」をご覧下さい。

                             別紙1

    デュアル・モード・ビークル(DMV)に関する技術評価委員会

主 査 中村 英夫 日本大学理工学部 教授
委 員 古関 隆章 東京大学大学院工学系研究科 教授
 〃  水間  毅 (独)交通安全環境研究所 理事
 〃  中谷 克利 (一社)日本鉄道運転協会 顧問
 〃  早勢 剛 (公財)鉄道総合技術研究所 車両構造技術研究部長
 〃  村本 勝己 (公財)鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部長
 〃  平栗 滋人 (公財)鉄道総合技術研究所 信号・情報技術研究部長
 〃  難波 寿雄 北海道旅客鉄道(株) 技術創造部長
 〃  中山 康二 国土交通省 鉄道局技術企画課長
 〃  浅野 靖夫 国土交通省 北海道運輸局鉄道部調整官
 〃  千葉 順一 国土交通省 北海道運輸局自動車技術安全部技術課長


別添「中間とりまとめ」

                              平成27年10月30日

  デュアル・モード・ビークル(DMV)に関する技術評価委員会中間とりまとめ

 地方線区を運営する鉄道事業者は、鉄道利用客が年々減少していることから、様々な経営改善の努力を図っているものの、従来の鉄道車両と運転方式を用いた鉄道システムの下では経営的に限界に達している状況が見受けられる。
 北海道旅客鉄道株式会社(以下、「JR北海道」という。)は、こうした地方線区の抜本的な経営改善を図ることを主たる目的として、既存の鉄道車両に代えて新しい概念であるデュアル・モード・ビークル(以下、「DMV」という。)の導入を提案し、これまで実用化に向けた開発に取り組んできたところであり、本委員会では技術的観点に基づいた検討・評価を実施してきたところである。


1.本委員会の立ち上げ

◇JR北海道が釧網線においてDMVの「試験的営業運行」を計画するに至ったことを踏まえ、平成18年7月に鉄道局と同社で共同検討会を組織した上で、この「試験的営業運行」のために必要な安全確保方策等を詳細に検討し、その結果を「釧網線におけるDMV試験的営業運行のための安全運行ガイドライン」としてとりまとめることとした。

◇この「ガイドライン」のとりまとめに当たって、本委員会は、平成18年3月に(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構がとりまとめた「DMV活用による利便性向上に関する調査」報告書によって整理された安全性に関わる課題に関して、技術的観点に基づいた検討・評価を実施したところである。


2.釧網線での試験的営業運行及びその後の課題の検討・評価

◇平成19年から20年の2年間、JR北海道において釧網線での試験的営業運行を実施するとともに、平成20年3月に開催された本委員会において、今後のDMV導入拡大に向けて、引き続き技術的観点に基づいた検討・評価を実施することとなった。

◇平成22年6月には、技術評価に対する当面の前提条件を整理し、@専用線区での運行A単車(1両)での運行で検討・評価することになった。

◇平成23年4月には、これまで得られた知見(表1)を踏まえ、「『専用線区』及び『単車運行』の前提ではあるものの、その有効有用性は認められる」と評価した。

(表1)得られた主な知見

走行安全性
・曲線及び分岐器通過性能は、脱線係数、輪重抜け割合ともに目安値以下。
・車体剛性も軌道の平面性の変化に追従。

加減速性能
・粘着性能は鉄道車両とほぼ同等もしくはそれ以上。
・加減速性能も鉄道車両と同等。

耐久性能
・各機器及び部品について分解検査を行い概ね問題ない。

モードインターチェンジ部の安全確保の考え方
・道路と軌道の境界部分について、安全でかつ安価な方法の考え方についてまとめた。

火災対策
・燃焼試験に合格した部材を用いることで、火災対策の基準を満足。


 なお運転保安システムについても、「従来の地上設備による列車検知方法によらない安全な踏切警報制御の見通しが得られた」等とした上で、「専用線区」及び「単車運行」における技術的課題として、本システムに関する4つの事項を示した。(表2)


3.運転保安システムの検討・評価

◇このためJR北海道では、上記課題に対応した新たな運転保安システムとして、車両側の車軸パルス距離積算により自車位置を検知するとともに赤外線通信を位置補正に利用し、無線データ通信による制御を行う新しいシステムを開発するとともに、走行試験及びシミュレーション試験を実施し、表2の結果欄に示す対応をとった。

※本システムにおける主な前提条件:専用線区、単車運行、続行運転あり、行き違いは道路上のみ

◇これらの試験結果等について、平成26年10月以降、本委員会において、安全性評価を行ってきた結果、「現行の軌道回路による位置検知に依存しない本運転保安システムを適用することについて、特に問題ない」と結論付けるに至った。


(表2)運転保安システムに関する課題とその対応の結果

技術的課題
・結果

1 システム設計における安全性評価に対応する設計の確認と装置の性能確認
・システム設計が安全性評価に対応している事を確認し、その設計に基づく試作システムを製作した.
・計画した試験項目及び判定方法について妥当である旨の評価を待た。
・試作システムが十分な性能を有し、各機能が確実に動作する事を確認した。

2 新しい方式となる踏切制御の十分な機能確認
・シミュレーション試験により、踏切制御機能が確実に動作する事を確認した.
・硯地での走行試験により、踏切制御機能が確実に動作する事を確認した。

3 GPSを列車検知の位置補正手段として活用する場合、整理した課題の検討および位置補正時に見込む誤差の定量的分折による妥当性の検証
・GPS単独では、課題への対応は技術的に困難であると判晰し、平成22年度の設計では位置補正にGPSを用いないよう方計を変更した。

4 GPSを列車検知の位置補正手段として活用しない場合、代替手段についての検討・検証
・位置捕正に赤外線通信を用いる方法を考案し、システムの仕様を変更した。
・基本的な考え方に問題ない旨の評価を得た。
・赤外線遍信が十分な性能を有し、位置捕正機能が確実に勤作する事を確認した。



4.評価結果の基本的な位置づけ

◇これらの評価は、一定の前提条件の下に成立するものであるとともに、導入するに当たって引き続き検討すべき課題もあり、この結果のみを以て全ての鉄道事業者において即座に実用化が可能であることを意味するものではない。

◇鉄道事業者が、新たにDMVを導入する場合に当たっては、上記の前提条件の確認及び検討課題の解決を行うとともに、事前にDMVを用いた各種性能の確認(車両と地上設備とのマッチング)等を行うことが必要であり、輸送の安全の確保を行う観点からも走行試験をすべきであるといえる。


※DMV導入の際に引き続き検討すべき課題:耐久性能の検証、異常時対応マニュアル等の整備 等


5.今後の課題と展望

◇本委員会では、鉄道施設や車両の安全性に関わる課題に関して、技術的観点に基づいた検討・評価を実施したものである。鉄道事業者が、新たにDMVを導入する場合に当たっては、これまでの本委員会での評価結果をもとに具体的な事業内容を計画していくことが必要である。

◇なお現段階の評価においては、DMVのみの専用線区による単車運行を前提としており、この場合の位置検知については赤外線通信による補正技術を利用しているが、本補正技術に変えて、GPSと慣性センサーを組み合わせた技術を採用すれば、十分な位置検知機能の達成が見込まれ、有用な方法の一つとなり得る。そして、更なる技術開発によって、前提条件によらず、DMVと既存の鉄道車両との混在運行等が可能となれば、DMVの可能性を広げることができる。なおこのように、今回示した前提条件を変更しようとする場合にあっては、改めて試験項目等を検討した上で、各種性能の評価等を行う必要がある。

◇更に、DMVの有効活用を促進するためにも、鉄道事業者とバス事業者の業務分担など事業運営面での検討とともに、輸送力拡大(連結運転等)やコスト低減等についての検討も望まれるところである。


(参考資料)
別添1 釧網線での試験的営業運行及びその後の課題の検討・評価
別添2 運転保安システムの検討・評価
別添3 (参考)導入可能なモデルケース