NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.3169 【JR東・同文化財団】ED40 10とED16 1が重要文化財に
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2018-03-09 23:56:44
                           2018年3月9日
                     東日本旅客鉄道株式会社
                     公益財団法人東日本鉄道文化財団

    2両の電気機関車(ED40形式 10号および ED16形式 1号)が
            国の重要文化財指定へ



 鉄道博物館で展示している ED40形式 10号電気機関車および青梅鉄道公園で展示している ED16形式 1号電気機関車が、文化庁の文化審議会答申(2018年3月9日)を受け、国の重要文化財(美術工芸品)に指定される運びとなりました。(正式な重要文化財への指定は、官報に掲載後となります。)

1.ED40形式10号電気機関車の概要
■製造年 1921(大正10)年
■製造所 鉄道省大宮工場
■全 長 9.8m
■特 徴
 信越本線横川〜軽井沢間(現在は廃止)の急勾配区間用の電気機関車として、1919(大正8)年から製造されたED40形式電気機関車の10号機で、国鉄最初の本線用国産電気機関車。

2.ED16形式1号電気機関車の概要
■製造年 1931(昭和6)年
■製造所 三菱造船株式会社神戸造船所
■全 長 15.4m
■特 徴
 鉄道省が民間と共同設計し、小型の勾配線・貨物列車用電気機関車として1931(昭和6)年から製造され、後の電気機関車国産化の基礎を築いたED16形式電気機関車の1号機。

3.参考 JR東日本所有の重要文化財
 ┌───────────┬───────────┬──────┐
 │名称         │指定年        │保存箇所  │
 ├───────────┼───────────┼──────┤
 │1号機関車(150形式) │1997(平成 9)年   │鉄道博物館 │
 │鉄道古文書      │2003(平成15)年   │鉄道博物館 │
 │ (明治時代の鉄道創業期の鉄道建設・運営に関わる公文書群) │
 │1号御料車(初代)  │2003(平成15)年   │鉄道博物館 │
 │東京駅丸ノ内本屋   │2003(平成15)年   │  −   │
 │ナデ6141号電車    │2017(平成29)年   │鉄道博物館 │
 ├───────────┼───────────┼──────┤
 │ED40形式10号電気機関車│2018(平成30)年(予定)│鉄道博物館 │
 │ED16形式 1号電気機関車│2018(平成30)年(予定)│青梅鉄道公園│
 └───────────┴───────────┴──────┘


(参考)1.ED40形電気機関車について
○概要

 1912(明治45)年に電化された信越本線の横川〜軽井沢間は、ドイツから輸入されたアプト式の10000形(のちのEC40形)電気機関車が蒸気機関車とともに使用されていたが、電化後も輸送需要が増加し、過酷な乗務環境を改善するため全面的な電気運転の実現をめざして電気機関車の増備が計画された。
 増備に当たり輸入も検討されたが、関係者の強い要望もあり国産に決定された。とはいえ当時は本線用電気機関車を製造した経験のある車両メーカーはなく、アプト式という特殊な機構の機関車でもあるため、10000形の組み立てや修繕の経験のある鉄道省大宮工場(現JR東日本大宮総合車両センター)が製作を担当し、10020形(のちのED40形)を製造することになった。
 製作にあたっては10000形を基本にして改良を加えることにし、車体は箱型となり、運転室は横川方のみとされ、軽井沢方には主抵抗器が配置された。集電は、本線では断面積の狭いトンネルに架線を張ることができず、線路横に敷設された第三軌条から集電靴で集電する方式とし、駅構内ではパンタグラフを使用した。軸配置は10000形の3動軸から4動軸として軸重の均等化をはかり、運転整備重量は46.00tから60.70tに増加した。主電動機は240kWのものを2基搭載し、1基はジャック軸、主連棒、連結棒を通じて動輪に動力を伝達する方式で、蒸気機関車で培った技術を活用した。もう1基はラック台車の駆動用となっている。
 1919〜23(大正8〜12)年までに14両が製造されて、1921(同10)年には同区間のすべての列車が電気運転に切替えられた。1列車当たりの牽引トン数も10000形の機関車3両使用で約200tから、4両使用で約300tまで引き上げられ、輸送力を向上させた。
 その後、後継機のED42形の量産が進むとしだいに現役から外され、1940〜51(昭和15〜26)年の間に廃車された。約半数はラック台車を外して南海電気鉄道、東武鉄道、駿豆鉄道(現伊豆箱根鉄道)等に譲渡された。当館で保存・展示のED40形式10号機は、1944(同19)年に軍の要請によって6号機とともに東武鉄道の日光軌道線に貸し出され、急勾配区間のある同線で銅鉱石、銅製品の輸送にあたった。ED4002、ED602と機番を変えながら使用され、1968(同43)年の同線の廃止によって国鉄に戻り、大宮工場で外観をアプト時代の姿に復元して保存された。2007(平成19)年の鉄道博物館館開館にともない、ラック台車を展示用に復元し、保存・展示されている。

○ED40形式10号機履歴
1921(大正10)年 3月   鉄道省大宮工場で製造(10029)、横川機関庫に配置
1928(昭和 3)年10月 1日 ED4010に改番(ED40形)
1944(昭和19)年 9月21日 東武鉄道に貸渡、日光軌道線で使用
1947(昭和22)年 1月   東武鉄道に貸渡しのまま廃車
1948(昭和23)年 9月 8日 東武鉄道に譲渡、以後ED4002⇒ED602と改番
1968(昭和43)年 3月   廃車国鉄大宮工場でアプト式時代の外観に復原
1968(昭和43)年10月14日 準鉄道記念物に指定
2007(平成19)年10月14日 鉄道博物館で保存、展示

○おもな諸元
軌  間   1,067o
電気方式   電圧:直流600V
       集電方式:第三軌条式/集電靴(本線)
            架空線式/パンタグラフ(駅構内)
主要寸法   最大長:9,780o 最大幅:22,950o
       パンタグラフ折りたたみ高さ:4,080o
自  重   60.70t
運転最高速度 粘着区間:25q/h ラック区間:18q/h

※小林正義『国鉄アプト式機関車』(上)(中)ネコパブリッシング2011年
 沖田祐作『機関車表フル・コンプリート版DVDブック』ネコパブリッシング2014年
 交通博物館編『鉄道記念物ガイド』1994年等をもとに作成

2.ED16形電気機関車について
○概要

 第一次世界大戦の好景気により国内の貨物輸送量は増大し、鉄道の輸送力増強が課題となる中、工業の発展による石炭需要の増大から長距離区間の鉄道電化が進められることとなった。初期の電化区間では、都市近郊やトンネルの多い急勾配区間を中心に、輸入電気機関車を使用したが、日本の環境に適合せずに故障が多く、海外製であるために車両の取り扱いや保守に問題を抱えていた。そこで、これに代わる機関車として、民間との共同設計による小型の勾配線・貨物列車用機関車としてED16形電気機関車が設計・製造された。
 本1号機は1931(昭和6)年5月に三菱造船神戸造船所にてしゅん工、電気機器は三菱電機製となっている。ほかには日立製作所、汽車会社、芝浦電機、川崎車両、川崎造船所各社が製作にあたっている。設計の前提となった中央本線では、八王子を境に東側が平坦線、西側が勾配線となっており、両区間での走行時の主電動機の温度上昇と回転数のバランスが考慮された設計となっているほか、当初、勾配区間での重連運転にそなえて重連総括制御機能を搭載したが、重連時の空転検出に難があり、短期間で撤去された。車体はリベット接合によっており、車体製作に電気溶接技術が用いられる以前の構造となっている。
 本形式は中央本線八王子〜甲府間の電化開業、上越線の峠越え区間に建設された清水トンネルをはさむ水上〜石打間での電気運転開始に合わせて製造され、運転を開始したが、後者の区間では冬季の環境と輸送量増加にともなう出力不足により早い時期に撤退している。中央本線飯田町〜甲府間を中心に使用され、戦後、10両は関西の阪和線に移り、南紀方面への直通急行列車や貨物列車を牽引して活躍した。
 その後、全車が関東地区に戻り、晩年は立川機関区に配置され、奥多摩地区で産出されるセメント原料(生石灰)の京浜工業地帯の工場への輸送を中心に、青梅、五日市線及び南武線で使用された。
 このほか、安定した性能や取り扱いに優れたことから、勾配区間への対応機能を中心に種々の実験にも使用され、1933(同8)年に中央本線での回生ブレーキ実験、1957(同32)年には奥羽本線板谷峠区間にて直流電気機関車の再粘着実験が行われ、のちの機関車開発に向けたデータを提供した。

○ED16形式1号機履歴
1931(昭和 6)年 5月   三菱造船神戸造船所で製造(電気品は三菱電機)
            甲府機関庫に配置
1953(昭和28)年 4月16日 八王子機関区西国立支区へ転属(以後八王子機関区
            ・西国立支区の間で貸出・返却を繰り返す)
1959(昭和34)年 4月19日 鳳電車区へ転属、阪和線で使用
1959(昭和34)年 9月 5日 八王子機関区へ転属(以後西国立支区〔1968年より
            立川機関区〕との間で転属・貸出を繰り返す)
1980(昭和55)年10月 1日 廃車青梅鉄道公園で展示
1980(昭和55)年10月14日 準鉄道記念物に指定

○おもな諸元
軌  間   1,067o
電気方式   電圧:直流1500V 集電方式:架空線式/パンタグラフ
主要寸法   最大長:15,360o 最大幅:2,810o
       パンタグラフ折りたたみ高さ:3,940o
自  重   運転整備時 76.80t
運転最高速度 65q/h

 ※日本国有鉄道臨時車両設計事務所編『電気機関車形式図』1963年
  浅原信彦『ガイドブック最盛期の国鉄車両7直流旧型電気機関車(上)』ネコパブリシング2010年
  岩成政和「半世紀走った小さな国産電機ED16」(『電気機関車EX』Vol.4イカロス出版2017年)
  沖田祐作『機関車表フル・コンプリート版DVDブック』ネコパブリッシング2014年
  交通博物館編『鉄道記念物ガイド』1994年等をもとに作成
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