NEWS RELEASE:JR&私鉄    4
No.1343 【大井川】C12 164 動態復元へ、トラスト財団と寄託契約
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2016-09-28 19:56:14
                                2016年9月28日
                      公益財団法人日本ナショナルトラスト
                      大井川鐵道株式会社


         鉄道文化財の動態復元に向けて合意のお知らせ


公益財団法人日本ナショナルトラスト(東京都千代田区、会長梅ア壽)が所有する蒸気機関車「C12形164号機」及び歴史的客車3両の鉄道文化財4車両に関し、同財団と大井川鐵道株式会社(静岡県島田市、代表取締役社長前田忍)は、2016年9月1日付で「寄託契約」を締結し、将来的に動態復元をめざす方向で調整に入りましたので、お知らせいたします。概要は以下のとおりです。

契約の概要
 契約名          鉄道文化財に関する寄託契約
 契約締結日        2016年9月1日
 契約対象となる鉄道文化財 C12形タンク式蒸気機関車164号
              スハフ43形特急用3等客車2号、3号
              オハニ36形荷物合造客車7号

1.C12形164号機について
1937(昭和12)年製造。上諏訪、岡山、厚狭機関区を経て木曽福島機関区で廃車となりました。1973(昭和48)年9月24日、当時の国鉄より本川根町(現在の川根本町)へ無償貸与され千頭駅構内に保存展示され、大鉄により時折、火を入れられてきましたが、1984(昭和59)年春の運転をもっていったん運転を終了しました。その後、所有が日本ナショナルトラストに移った1987(昭和62)年、ほぼ同時期に国鉄から導入した客車3両編成で「トラストトレイン」としての運転を開始します。しかし、2005(平成17)年、機関車にATS(自動列車停止装置)の設置が義務付けられたことに加え、その後の検査により新たにボイラーの不具合が見つかったため休車となり、現在は新金谷駅構内の転車台上に展示されています。

2.ナショナル・トラスト運動とは?
 〜日本初の市民参加によるSL保存列車「トラストトレイン」〜
ナショナル・トラスト運動とは、19世紀に英国で発祥し、自然環境や歴史的建造物を市民の手により次の世代に伝える活動です。トラストトレインは当時の観光資源保護財団(現在の公益財団法人日本ナショナルトラスト)が消滅の危機にさらされている貴重な文化遺産を守るために開始した「文化財取得保護計画」に基づき、1985(昭和60)年に全国から寄せられた寄付により当時の国鉄から取得しました。鉄道車両が我が国で初めて産業文化遺産としてとらえられ、市民の募金により取得・修復し、動態の状態で保存したのがこのトラストトレインです。1987(昭和62)年7月25日から大井川鐵道にて運転を開始し、以降今日まで多くの方々の寄付やボランティアの皆さまの活動によって支えられてきました。

3.C12の動態復元をめざして
 〜民間企業と公益法人の協働〜
大井川鐵道は日本ナショナルトラストからC12形蒸気機関車を1両、客車3両を預かり、1987(昭和62)年から「トラストトレイン」として運転を開始、現在まで年間5回程度走らせてきました。しかし、C12形が休車となったため2005(平成17)年以後、客車は大井川鐵道が所有するSLかわね路号に連結し、運行されてきました。しかし、今回、両者が協働し、あらためて寄託契約を締結することで、C12形164号機は動態復元への道筋がつき、念願であった全車両連結の形での完全復活に向け始動することになりました。これまで通り、国民的財産としてトラストトレインの所有権は日本ナショナルトラストに帰属しますが、復活工事やその後の車両の運行・管理などは大井川鐵道が主体となって取り組むことになります。

4.今後の計画について
C12形164号機については、約10年にわたり稼働していなかったこともあり、まずは全体的な車両状況の調査に着手する予定です。この調査の結果を踏まえ、今後の資金調達方法、工期計画、永続的な保存運転の為に必要なSLの部品提供を蒸気機関車保有関係先へ打診するなど、総合的に具体的な策を検討していく予定です。
また、客車については引き続きSL列車「かわね路号」に連結して運転するなど、利活用を促進していきます。
最終的には、トラストSL(C12形164号機)がトラスト客車3両をけん引というトラストトレインとして運行することを目指していきます。

5.最後に
今回の合意は、日本の誇る鉄道文化財の継承のみならず、蒸気機関車動態復元に関わる技術の伝承、技術者の育成、さらには鉄道文化財を活かした地域の振興に寄与するものとして大きな社会的意義を持つものです。
日本ナショナルトラストと大井川鐵道は、今回の合意をもとに協働して鉄道文化財の動態保存を推進し、「鉄道文化の継承や発信」をさらに強固なものとし、地域の発展に貢献する所存であります。これからもみなさまのご支援をよろしくお願いいたします。


【公益財団法人日本ナショナルトラストについて】
公益財団法人日本ナショナルトラストは、わが国の美しい自然景観や建造物・町並みなどの歴史的環境を国民的財産として後世に継承するために、1968年に英国の環境保全団体「ザ・ナショナル・トラスト」を模範として設立された公益法人です。現在、SLを含む歴史的車両トラストトレイン(静岡県大井川鐵道)をはじめとし、白川郷合掌造り民家(岐阜県大野郡白川村)や、旧安田楠雄邸庭園(東京都文京区)、駒井家住宅(京都府京都市)などの地域遺産を観光資源として利活用しながら保全活動を行っています。

創立:1968(昭和43年)12月25日
事務局所在地:東京都千代田区麹町4-5海事センタービル
会長(代表理事):梅ア 壽

【大井川鐵道について】
大井川鐵道は静岡県中部を流れる大井川に沿って走る2つの路線、大井川本線(金谷〜千頭39.5キロ19駅)と井川線(愛称:南アルプスあぷとライン千頭〜井川25.5キロ14駅)から成る鉄道です。1976年7月9日、他社に先駆けSL営業運転を再開させ、今年「SL復活40周年」を迎えました。当社は車両整備も自社設備・人材で賄い、年間300日以上の営業運転を毎年継続しています。引退後のSLを再度運転可能な状態に復元する「動態復元」もこれまで計7両実施。例えば1940年製造のC11形190号機は2年の歳月をかけて動態復元しました。運転・整備技術双方が高いレベルにあることから「SL保存運転のパイオニア」として全国の鉄道ファンに認知されています。

創立:1925(大正14)年3月10日
本社所在地:静岡県島田市金谷東二丁目1112-2
代表取締役社長:前田 忍