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No.51 【鉄道ジャーナル】「マレー半島南部の旅」評
伊 謄(atzz4060) 2007-05-27 21:57:39
 旧聞になりますが鉄道ジャーナルの2006年10月号に、海外鉄道技術協力協会の秋山芳弘さんによる「マレー半島南部の旅」が記載されていました。
 北部は行っていませんが、南部は行っていますのでだいたい状況はわまりますので、記事を追ってみます。

 最初はマレー鉄道(KTMB)の説明ですが、戦中に日本軍が資材を転用した路線の復旧が1954年になったというのは間違いで、路線によってはそのまま廃線となっています。これはイギリスが復旧するよりも道路で十分と判断したような区間で、地質の関係かマレー半島の道路の状態が悪くなかったためです。ただ、それだからといって、1954年復旧完了としてはおかしいわけで、そのあたりも調べてほしかった点ですね。
 さて、実際に乗り込んで、行きと帰りで運賃が違うという話が出てきます。これはシンガポールではシンガポール・ドルで、マレーシアではリンギットで支払うため、料金が倍ほども違います。「なんとも不合理な運賃制度」と石川さんは記されていますが、これはまさにその通りで、ですので、シンガポールで切符を買って乗るのは物好きということになります(笑)。そのあたりは、ちゃんとわかって記されていますね。
 それから鉄道では駅で先ずマレーシアへの入国を手続きして、その後シンガポール北端のWoodlandsでシンガポールからの出国手続きをします。見出しにあるように「出国・入国の順序が逆転」しているわけですが、出入国管理場所の設置の合意がなされていないためで、そのためにマレーシアへの入国手続きに、鉄道利用だと入国スタンプが押されません。ですので、入国を証明するために切符を持ったままでいることが必要ですが、これも知っておられたようです。
 まぁ、無駄と面倒が揃っていますので、普通はバスなどでマレーシアへ入国します。どうしても鉄道にこだわりたいばあいは、北行するのではなく南行にすればいささかはスムーズです。
 列車は1時間遅れでCentral Kuala Lumpurに着いていますから、まぁ順調(笑)です。食堂車は不評のようですが、一般的な評価と同じですね。ただ、リンギットを持たずに乗られていたようで、そうした場合はボラれる危険がありますよぅ。
 車中では華人が賑やかだったようですが、そういった場面で直ぐに「民族性があるかもしれない」などと記すのは軽率でしかありません。単純にいろいろいるで終わりです。自分が気に入らないと民族性を出すのは、差別の深層でしかありません。華人でうるさい奴はうるさいし、マレー人でもそうだし、日本人もそうなだけですね。あっさり書かれているので目に留まりにくいでしょうが、こういったことが徐々に刷り込まれていく懸念がありますから、あえて差別であると指摘します。
 地名などのマレー語の発音ですが、少しアヤシイですね。全部が英語式だったりするならわかるのですが、Seremban=スレンバンという表記は発音に忠実で、日本の書物ではセレンバンとされていることが多いのです。しかし、全部がそういった表記ではないので抜き出しておきます。
 列車名は"RAKYAT"で、これを「ラクヤット」としていますが「ラヤット」です。末尾のトは子音だけですからはっきり発音したらおかしいのですが、カタカナ表記では書かざるを得ないというものですね。
 地名では"Segamat"を「セガマット」ですが、「セガマ」でいいと思います。これも末尾のtが問題で、"RAKYAT"と一致させるなら「セガマット」でよさそうなんですが、微妙に感覚が違います。"RAKYAT"は「ラヤ」だけだと少し変なので、微妙に書き方がずれるというものです。ただ、上記の2例は微妙なものという類です。
 "Gemas"の「ゲマス」はSeremban=スレンバンと同様なので「グマス」でないと、これはおかしいなという例です。
 さて、帰路はバスを使っているのですが、こちらは事情を知らずに使っているようです。
 バス・ターミナルで客引きの男性にバス代として30リンギットを払って帰っているのですが、何か高い気がしています。おそらくはこの男性と運転手のふところに若干のリンギットが納まったのでしょう(笑)。ただ、荷物が多いときには役にも立ってくれて、切符を買ってしかも荷物まで運んでくれたとすれば、まぁチップでいいかなという程度の上乗せです。まぁ、日本人相手は儲かりますが。
 おまけにシンガポールへの入国方法を知りませんから、税関の手続きを済ませてバスに乗ろうとしたところ乗ってきたバスが発車していて怒っているのですが、検査終了を待っているといつまでかかるかわかりませんから、ここのバスはあっさり行ってしまうのですね。ですので、来たバスに適当に乗ればいいので、怒る場面ではありません。
 もっとも、最初から全てが順調では面白くないでしょうから、端から見ていればちょうどいいハプニングという感じで眺めています。何でもありの国ですから。