ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2008-03-17 18:44:17 |
非営利活動法人 名古屋レール・アーカイブス 2008年2月 NRA NEWS No.3 資料保存の重要性 ―理事長就任のご挨拶に代えて― 理事長 津田 和一 昨今、鉄道のみならず各分野において資料の保存の重要性が取り上げられるようになって来た。資料の保存がきちんと出来ているかどうかが、その国の文化程度を示していることがようやく一般に理解されるようになってきた証拠であり、喜ばしいことである。 それ程長くはないので、次の文を見ていただきたい。 「鉄道史料」の創刊に当って 宮本政幸 古い歴史を知るうえに必要とする資料は日常生活の周辺に存在するものが主体をなすものである。月日の経過とともに、これらの資料はやがて日常生活の邪魔物として取扱われ、廃棄焼却の厄にあうのが通例である。 これらの資料の中には廃棄されて当然とするものも多かろうが、やがて歴史的な視野に立ってみれば歴史の研究に極めて必要となるものも少くない。わが国の(鉄道の)歴史もすでに100年をこえると過去の日の再現に困難を感ずることが多い。つまり鉄道史を知るうえにかくことのできない史料が、もはやわれらの周辺から消滅していることが明らかである。このため、この史料の蒐集と保存を目的に会員制として鉄道史資料保存会を結成し、またここに改めて「鉄道史料」を刊行することとなった。 これらの史料は多くの人の捜し求めたものを主体とし、一般の雑誌、刊行物においては掲載できないものを集めて、広く鉄道史の研究はもとより、鉄道に関心をもつ人々に長い歴史のある鉄道の実態を理解できるように留意している。ただ「鉄道史料」といえば学問的な歴史的資料を想定される人々も居られると思うが、その目的にかなうことも、この刊行のひとつの目標であり、鉄道の歴史的知識の把握もまたひとつの目的であろうかと判断している。 多くの会員をえて、その人々の希望や批判にこたえられるものに、この「鉄道史料」の刊行を期待したい。 昭和50年10月14日 良く知られた「鉄道史料」が1976年1月に創刊されたときに、著名な宮本政幸氏が「鉄道史料」の巻頭言として書かれた一文である。1975年当時、鉄道に関心を持っていた方々でもこの様にはっきりとした形で資料の保存の重要性を認識されていた方がどのくらいおられたであろうか。 我々のNRAの設立趣意書と比較してみると、表現は異なっていても意味することは全く同じであり、これが今から30年前近くの頃に書かれたことに宮本さんの偉大さが改めて認識される。更に、鉄道史資料保存会を結成されて以後、現在に至るまで活動を続けてこられた京都・大阪の方々にも、その先見性と意欲に尊敬と感謝を感じるのは資料保存の重要性を意識している鉄道研究家の全ての方に共通した認識であろう。 30年後の現在、我々は宮本氏の考えは当然のこととして、更にこの歴史的な業績を将来の鉄道のあるべき姿を探るベースとして、あるいは地球環境の重要性の観点から一般の方々に鉄道の優位性を知って頂く縁(よすが)になるべく、鉄道に興味を持つものとして社会的責任があるのではないかと感じるものである。 宮本氏の時代と違って、現在では保存した資料をどの様に活用していくかが問われる時代になっている。それは歴史に学べとよく言われるように、先輩方が営々として築き上げてきた技術・知識の集約として存在する資料を今後の社会基盤の整備にどの様に生かしていくのかが我々現在に生きるものの責務である。一般に技術は過去の遺産を継承し、その上に立って更に高度の段階へ到達できる性質を持っている。と言うことは過去の歴史的遺産を検証し、それを理解することで新しい技術・知識を容易に獲得することが出来ると言うことである。即ち、現在或いは将来の社会的要請に立脚して、獲得した技術を駆使して新しい時代に適合した、より高度の技術革新を成し遂げることが出来ることを意味している。 更に、現代社会が所持している技術あるいは学問的な知識を一般に紹介し、更にこれからの生活をより快適に、より便利にするための世論の形成に資することが資料の活用によって可能であることも理解できるであろうし、また、その努力を行わなくてはならない義務が資料を保存するものにあると考える。 これらのことを行うためには、単に資料を集積するだけではなく、その集積された資料を使いやすいように整備し、検討或いは研究し、その上で社会の要請に応えるべく最新の技術を駆使して利用環境を整える必要がある。この様にしてこそ、図書館・博物館とは異なって現代における資料の保存の意味が出てくるものと考える。 この様な目的意識を持って我々が行っているのは、できる限り多くの各種資料を集積し、それらの資料のデータベースを作り、利用しやすくするために、それらをできる限りデジタル化して、何時どの様な要望があっても対応できるように整備することであり、会員の努力によって大変な事ではあるが実行しつつある。 たしかに、資料を集積するという行為だけを見ると博物館・図書館と同じであるが、その先に社会の要請にこたえて利用しやすくし、さらに言えば、地球環境の保護・改善、生活基盤の整備に積極的に役立てるようにすることによって既存の博物館や図書館とは異なった意義をもつ存在になろうとしている。そのために実際に行っていることは、まづ、利用しやすいこと、これは必要とする資料類が簡単な検索で探し出せることである。次に、実際に利用しようとする場合に関連する参考資料が容易に見つけ出せるようにすること、最後にはNRAに相談を受けたときに的確な情報を提供できるようなシステムを構築しているかどうかである。 これらのことが出来るようになることによってNRAが社会あるいは生活のシンクタンクとして認められることができるであろう。我々はそれを目指して絶えざる努力を行っている。 資料の集積と利用とは言えば簡単であるが、実際にこれを行うには会員一同の努力と協力が必要であり、さらには、会員以外の方々の協力をも得られるようにする必要がある。そのためには、同好の方々、或いは一般の方々に広く門戸を開いておくことが肝要であると考えている。そして、会員各位が同好の方々を誘って会員になってもらい、資料収集の面白さ、楽しさを味わってもらうように努力する必要がある。それが、取りも直せず、世の中に資料を保存する意味と価値と楽しさを理解して頂く近道であると考えている。 このような社会的役割を果すことはNRAの重要な役割であるが、その一方、昔の写真を眺めて思い出話をしたり、昔の著名な方の書かれた随筆とか、エピソードを読んで、懐古の情に浸る楽しみ、年配の方々に話をしてもらって昔のことを理解したりする幸せも大きいことは論を待たないことである。NRAにおいては現役を退いた高齢の会員にとっては簡単にそれらに接することが出来るのは、大げさではなく残りわずかとなった人生の大きな楽しみであり生きがいであることも申しそえて、資料保存の意義の紹介としたい。 |
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