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No.4119 【創元社】行商列車−−〈カンカン部隊〉を追いかけて
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2016-04-28 15:49:38
         行商列車
         −−〈カンカン部隊〉を追いかけて


           “鮮度”と“魚食文化”を担いで
          女たちは今日も朝一番の列車に乗る−。
             ワン&オンリーの民俗誌


書  名: 行商列車
       −−〈カンカン部隊〉を追いかけて
著 者 名: 山本志乃著
発 行 日: 2015年12月10日 第1版第1刷
発 行 所: 創元社 http://www.sogensha.co.jp/体  裁: 四六判、400頁
価  格: 3024円(税込)
ISBN: 978-4-422-23036-8
内  容:
 漁付や農村を起点に、行商人を乗せて日々新鮮な食材を都市に届ける行商専用列車。かつては各地に見られたが、モータリゼーションの進展や流通技術の発展により次第に姿を消していき、いまでは伊勢志摩と大阪上本町を結ぶ近鉄の「鮮魚列車」を残すのみ。著者はその稀少な行商に同行取材を敢行、知られざる行商の実態と歴史、さらに行商が育んできた食文化、人々のつながりを明らかにする。後世に遺すべき、唯一無二の行商列車探訪記。


はじめに−鉄道と行商より

 そうはいっても、これほどまでに全国的現象だったカンカン部隊を、このまま埋もれさせてよいはずはない。時すでに遅しといった感はあるが、なんとか復元して記録できないものだろうか。
 そう思い始めた矢先のことである。行商人専用の列車が、今なお走っていることを知った。
 近畿目本鉄道(近鉄)の鮮魚列車。近鉄のホームぺージに掲載されている写真を見ると、正面に「鮮魚」と表示されている。魚行商のための列車であることに間違いなさそうだ。
 これに乗り、今なお行商している人たちがいる。会いたい、会って話を聞きたい、と痛烈に思った。平成二十二年の春のことである。

  ***

 ここから、私のカンカン部隊のおっかけ″が始まった。もっとも、カンカン部隊そのものは、元号が昭和から平成に変わるころには、ほぼ終焉を迎えている。だから、正しくはカンカン部隊の残影を求めるおっかけである。
 まずは、現役で仕事をしている近鉄線の行商人に密着した。
 行商人が住む伊勢湾沿岸と商売先の大阪を往復するうち、他の地域も気になりだした。そこで、かつて行商人が大勢行き来したという、山陰本線の沿線に足を延ばした。近鉄線とは異なり、すでに行商人の姿は消えて久しい。だが、思い出はまだ、生きていた。
[後略]

山本志乃(やまもと・しの)
1965年鳥取県生まれ。旅の文化研究所主任研究員。博士(文学)。法政大学非常勤講師。民俗学専攻。定期市や行商に携わる人たちの生活誌、庶民の信仰の旅、女性の旅などについて調査研究を行っている。著書に『女の旅−幕末維新から明治期の11人』(中公新書)、『日本の民俗3 物と人の交流』(吉川弘文館・共著)、『落語にみる江戸の食文化』(河田書房新社・共著)、『絵図に見る伊勢参り』(河出書房新社・共著)、『乾杯の文化史』(ドメス出版・共著)などがある。


目 次

はじめに−鉄道と行商            3

第1章 大阪の「伊勢屋」         21
 早朝の松阪駅              22
 一番列車の一番組            26
 近鉄の鮮魚列車             32
 伊勢志摩魚行商組合連合会        40
 「伊勢屋」ネットワーク         45

第2章 カンカン部隊の登場        53
 アサリ漁の村              54
 行先は十里四方             61
 カゴからカンへ             64
 足がかりは大和             70
 露店からのスタート           72

第3章 魚アキンドの足跡         79
 烏取駅前マーケット           81
 県境を越える道             85
 列車内での卸売             92
 因美線の行商人             98
 「昭和会」と山陰線の通商自治組合   103
 老漁師たち              108
 泊のアキンド             118

第4章 アキンドに生きる−魚行商体験記 135
 賃労働からアキンドへ         137
 統制時代の物々交換          139
 アキンドになる            140
 得意先の開拓、競争          152
 シイラの季節             159
 さまざまな交流            164
 稼ぎとやりがい            168

第5章 魚を食べる文化         175
 古代にさかのぼる水産物の流通     178
 運ばれたアイモノ           181
 貴重だった魚             186
 年取りの膳と魚            190
 節日のまなぐい            196
 祝い魚の移り変わり          203

第6章 魚を待つ人びと         209
 「伊勢屋」の常連さん         210
 産直の先駆けとして          217
 小さな流通からみえるもの       222
 「伊勢屋」五十五年の歴史       227

おわりに−消え行く行商列車       235

参考文献 247
あとがき 251
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