NEWS RELEASE:JR&私鉄    3
No.8273 【国土交通省】中央新幹線に係る環境影響評価書に対する国土交通大臣意見
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2014-07-19 16:19:28
[出典:国土交通省ホームページ]
国土交通省

      中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書
         に対する国土交通大臣意見の送付について

                              平成26年7月18日

国土交通省は、本日、中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書について、環境影響評価法第24条の規定に基づき、事業者である東海旅客鉄道株式会社に対して別添の国土交通大臣意見を送付しました。

添付資料

別添

 中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する国土交通大臣意見

 中央新幹線(東京都・名古屋市間)(以下「本事業」という。)は、東海旅客鉄道株式会社(以下「本事業者」という。)が、東京都港区と愛知県名古屋市の間(約286km(地上部:40km、トンネル部:246km))を甲府市附近及び赤石山脈(南アルプス)中南部を経由して、超電導磁気浮上方式(以下「超電導リニア方式」という。)により、最高設計速度505km/h で結ぶものである。
 本事業では、更なる高速での大量輸送を可能とすることにより、三大都市圏を一体化するとともに、中間駅の設置とその背後圏の開発により、地域の活性化が図られることが期待されている。また、これにより、いわゆる世界最大のスーパー・メガリージョンが形成され、我が国の国際競争力の強化に資するものである。さらに、超電導リニア方式は、我が国が独自に開発してきた高速鉄道技術であり、これまで人類が体験したことのない新たな輸送サービスを提供することになる。この技術は、世界をリードする技術であるとともに、我が国の技術立国としての自信・自負と将来社会への大きな希望を与えることになる。
 一方で、本事業は首都圏及び中部圏の大都市圏を大深度地下で、南アルプス等を長大山岳トンネルで通過する計画となっており、これらトンネルの掘削に伴う建設発生土量が多いことやその運搬に伴う地域住民の生活環境や自然環境への影響、事業に伴う水資源への影響等、多岐にわたる分野での影響が懸念されており、本事業の実施に当たっては、環境保全に十分な配慮が必要である。
 平成26年6月5日、評価書に対する多岐にわたった詳細な環境大臣意見が国土交通大臣に送付された。示された意見は、「大気環境」、「水環境(水質、地下水、水資源)」、「土壌環境」、「動物・植物・生態系」、「人と自然との触れ合い」、「廃棄物等」(建設発生土)、「温室効果ガス」から成る、いずれも環境の保全に関する環境行政を総合的に推進する観点からのものであった。
 この環境大臣意見においては、本事業の前提として、事業実施に当たり、別紙の措置を講じることにより、環境保全について十全の取組を求めている。国土交通省としては、この環境大臣意見を勘案し、事業者が別紙の措置を講じることにより、本事業に係る環境の保全について適切な配慮がなされることが確保されるよう求める。
 また、国土交通省は、これらの措置に加え、今後の工事実施計画に関する手続き等事業実施に関する審査を行う観点、河川や道路などの社会資本の管理者としての観点などから、以下の措置を講じるよう求める。


1.総論

(1)地域住民等への丁寧な説明
 本事業を円滑に実施するためには、地元の理解と協力を得ることが不可欠である。評価書では、既に追加のデータや情報が示されている事項もあるが、評価書の補正の際には、その後の知見や検討結果等を踏まえ、可能な限り具体的に記載すること。また、引き続き、事業説明会や工事説明会等の場を活用し、地域住民等に対し丁寧に説明すること。その際には、環境保全に関するデータや情報を最大限公開し、透明性の確保に努めること。

(2)関係地方公共団体や地方整備局・地方運輸局との連携による事業の円滑な実施本事業の実施に伴って生じる多量の建設発生土の有効利用に関する調整、発生土の搬出の際の工事用車両の通行に関する調整、河川水等への影響に対する調整など、本事業を実施する上では、公物管理者等との調整も不可欠となる。このため、沿線地方公共団体のみならず、本事業に関係する地方公共団体とは密接に連絡を取り合うとともに、これらの地方公共団体を含む、より広域的な地域での関連事業を所管している地方整備局や地方運輸局と連携しながら、事業の円滑な実施に努めること。

(3)最新技術の導入による環境影響の低減
 本事業では、大深度地下や南アルプス等の山岳部の掘削など技術的に難易度の高い工事において、その時点での最新の技術を積極的に導入し、より一層の環境影響の低減に努めること。


2.各論

(1)河川水の利用への影響の回避
 水資源に影響を及ぼす可能性のある大井川を始めとする沿線の各河川は、水道用水、農業用水、工業用水及び発電用水等に利用されていることから、河川流量の減少は河川水の利用に重大な影響を及ぼすおそれがある。
 このことを踏まえ、必要に応じて精度の高い予測を行い、その結果に基づき水系への影響の回避を図ること。
 また、工事実施前から、河川流量の把握を継続的に行うとともに、専門家等の助言を踏まえた計画を策定した上で、工事実施中から工事実施後の適切な時期までモニタリングを実施すること。
 水利用に影響が生じた場合は、専門家等の助言を踏まえ、適切な環境保全措置を講じること。

(2)災害の発生防止及び河川環境への影響の回避
 発生土置場からの流出土砂による河床上昇や渓床への堆積に伴う災害危険度の増大、崩壊等に伴う土砂災害、濁水の発生に伴う河川環境への影響を最大限回避するよう、発生土置場での発生土を適切に管理すること。

(3)建設発生土の有効利用
 建設発生土については、発生抑制や現場利用を徹底した上で、できる限り他の事業での有効利用を図ることが重要である。
 このため、工事実施前から広域的に公共事業や民間事業等と調整し、有効利用先に関する情報を継続的に収集し、最適な利用先を選定できるよう十分検討すること。その上で、可能な限り早期に多量の建設発生土の利用先を確保すること。

(4)建設発生土の運搬時の環境負荷低減
 多量に生じる建設発生土の運搬に当たっては、地域住民の生活環境への影響を最大限低減するため、適宜発生土の仮置き場を活用しながら搬出量や時間帯を調整し、工事用車両による円滑な搬出に資する措置を講じること。また、貨物鉄道の利用など発生土の工事用車両以外での搬出方法についても検討し、環境負荷の低減に努めること。

(5)磁界に関する丁寧な説明
 磁界の影響については、車内及び車外での磁界の強さが、世界保健機関(WHO)が採用すべきとした国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインを下回っていることが確認されているが、地域住民や利用者の不安感を払拭するため、引き続き事業説明会や工事説明会などにおいて、計測データ等を用いて丁寧に説明すること。