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No.7703 (Re:7700) 【国土交通省】別紙1:特別保安監査を通じて確認した改ざんの概況 1
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2014-01-21 22:04:45
         特別保安監査を通じて確認した改ざんの概況

 特別保安監査においては、次の2つの要件に該当した場合に、改ざんが確認されたものとした。
 @ 軌道変位の検査データ等について、現地で実際に計測されたデータ(生データ)等と、補修作業のために社内の保線システムに入力されたデータ(管理データ)等を突合し、監査員が不一致を現認したこと。
 A @の不一致に関し、監査員が関係職員に行った聞き取り調査において、意図的にデータを操作し改ざんした旨の口述が得られたこと。

 特別保安監査においては、改ざん関係の調査を主たる目的としたものとしては、現場では19保線管理室等に、上位組織では本社及び5保線所等に立ち入って調査を行った。この結果、以下のとおり、改ざん及び改ざんの温床となる業務処理の事例を確認した。

1.平成25年9月19日の貨物列車脱線事故に関する改ざん

A 脱線事故現場の軌道変位の検査データの改ざん
(1) 「軌間」の軌道変位の検査データの改ざん
 @ 改ざんの内容
 脱線事故が発生した大沼駅構内2番副本線につき、事故前の直近の検査である6月7日の検査の結果において、脱線事故現場の「軌間」の軌道変位が、整備基準値19mmに対し39mmと記録されていたにもかかわらず、これを補修することなく放置し、さらに、9月19日の事故直後に現場職員が当該数値を25mmと改ざんし、その数値が行政当局等に報告されていた。確認した事実関係は、以下のとおりである。

・6月7日の検査の生データから再現させた当該脱線事故現場の「軌間」の軌道変位の管理データの数値は39mmであった。(なお、管理データとして記録されていたのは39mmであったが、管理データにする際の数値補正に誤りがあり、実際の「軌間」の軌道変位は38mmであった。)
・一方、事故直後の9月22日に行われた特別保安監査の際に、国土交通省に管理データとして提示されたものでは、当該脱線事故現場の「軌間」の軌道変位が25mmであった。
・上記の不一致について、大沼保線管理室及び函館保線所の関係職員に聞き取り調査を行ったところ、9月19日の事故直後に、5m間隔の管理データの1数値と、5m間隔の管理データ算出の基となる50cm間隔の管理データの10数値の改ざんを行った旨の口述が得られた。
・これに関連して、別の大沼保線管理室の職員から、印刷された検査表綴りの該当ページを差し換えた旨の口述が得られた。
・なお、脱線事故現場ではないが、大沼駅構内5番副本線において、「軌間」の軌道変位の生データと管理データの不一致を現認した。これに関して、大沼保線管理室及び函館保線所の関係職員に聞き取り調査を行ったところ、改ざんは行っていない旨の口述があった。
 A 改ざんの動機・背景関係
 改ざんした理由について、当該関係職員に聞き取り調査を行ったところ、大きな軌道変位の放置を隠しておきたかった旨の口述が得られた。
 B 組織的な関与関係
 他の者の関与について、当該関係職員に聞き取り調査を行ったところ、
 ・5m間隔の管理データの数値の改ざんについては、大沼保線管理室の職員が自分の判断で行った
 ・50cm間隔の管理データの数値の改ざんについては、函館保線所の職員及び大沼保線管理室の職員の二人で相談して行った
 ・検査表綴りの差し換えについては、別の大沼保線管理室の職員が自分の判断で行った
旨の口述が得られた。

(2) 「通り」の軌道変位の検査データの改ざん
@ 改ざんの内容
 脱線事故が発生した大沼駅構内2番副本線につき、事故前の直近の検査である6月7日の「通り」の軌道変位について、9月20日に現場職員が脱線事故現場付近の18数値を改ざんし、その数値が行政当局に報告されていた。確認した事実関係は、以下のとおりである。

・6月7日の検査の生データから再現させた当該脱線現場付近の「通り」の軌道変位の管理データと、事故直後の9月22日に行われた特別保安監査の際に、国土交通省に管理データとして提示されたものを突合したところ、一部の数値に不一致があった。
・これに関して、大沼保線管理室の関係職員に聞き取り調査を行ったところ、9月20日に管理データの18数値について改ざんした旨の口述が得られた。
・この18数値について、生データから再現させた管理データと提示された管理データを突合したところ、改ざんされていることを確認した。最も大幅に改ざんしたものとしては、整備基準値19mmに対し実際には49mmであったものを12mmとしていた。

A 改ざんの動機・背景関係、組織的な関与関係
 改ざんした理由について、当該関係職員に聞き取り調査を行ったところ、函館保線所の管理職級の職員に指示された旨の口述があった。これに関して、函館保線所の当該管理職級の職員に聞き取り調査を行ったところ、数値の改ざんを指示していない旨の口述があった。


B 作業実績記録の改ざん
@ 改ざんの内容
 脱線事故現場を含めて、実際には実施していない軌道の補修作業を実施したかのように見せるため、作業実績記録を改ざんしていた。確認した事実関係は、以下のとおりである。
・大沼保線管理室管内の副本線の作業実績について、保線システムには、事故前の直近では、平成23年5月31日に「軌間直し」が行われたと入力されていた。
・このデータの作成の元になる作業日誌等を確認したところ、当該地点では同日に「遊間(レールの継目部のすき間)直し」の記録はあるが、「軌間直し」の記録はなかった。
・大沼保線管理室の上位組織である函館保線所の管理職級の職員に聞き取り調査を行ったところ、平成25年9月23日に函館保線所の職員に対して作業実績記録を改ざんするよう指示した旨の口述が得られた。
・函館保線所の複数の職員から、当該管理職級の職員の指示により実際には実施していない補修作業の作業実績を作出する作業を行った旨の口述が得られた。また、函館保線所及び大沼保線管理室の複数の職員から、副本線の作業実績記録を改ざんした旨の口述も得られた。
・このような作業実績記録の改ざんは、大沼保線管理室管内の14副本線に関して、少なくとも平成23年3月28日以降の延べ16日分の作業について行われていることが確認された。

A 改ざんの動機・背景関係
 改ざんを指示した理由について、当該管理職級の職員に聞き取り調査を行ったところ、必要な補修作業を長年してこなかったことを隠しておきたかった旨の口述が得られた。

B 組織的な関与関係
 上記のとおり、関係職員に聞き取り調査を行ったところ、本件改ざんの指示は函館保線所の管理職級の職員が行った旨の、また、複数の職員がこの改ざん作業に関与した旨の口述が得られた。

C 提出資料(マヤ車の検査データ関係)の改ざん
@ 改ざんの内容
 運輸安全委員会からの求めに応じ、大沼駅構内の本線上のマヤ車の検査データに基づき平成25年10月11日に資料を作成する際に、その資料の一部を改ざんした上で、10月24日、同委員会に提出した。確認した事実関係は、以下のとおりである。

・9月27日、運輸安全委員会が、JR北海道に対して、大沼駅構内の本線上のマヤ車による25cm間隔の軌道変位の検査データの提出を求めた。
・本社に保存されているマヤ車による検査データの生データと、上記の提出された資料に記載された数値を突合したところ、一部の数値に不一致があった。
・これに関して、本社の関係職員に聞き取り調査を行ったところ、10月11日、マヤ車による2回分(6月3日及び8月22日)の検査データの生データに基づき提出用の資料を作成する際に、整備基準値を超過している計17数値について、整備基準値内に収めるよう改ざんした旨の口述が得られた。また、当該関係職員からは、現場に対し、整備基準値超過箇所について整備基準値内へ補修するよう指示した旨の口述も得られた。
・この17数値について、マヤ車による検査データの生データと提出資料の数値を突合したところ、改ざんされていることを確認した。

A 改ざんの動機・背景関係
 改ざんした理由について、当該関係職員に聞き取り調査を行ったところ、すぐに補修すれば問題ないと考え、運輸安全委員会へ提出する資料の見栄えを良くするために改ざんした旨の口述が得られた。

B 組織的な関与関係
 他の者の関与について、当該関係職員に聞き取り調査を行ったところ、自分のみの判断で行った旨の口述が得られた。

D 提出資料(レールの一般検査等の検査データ関係)の改ざんの疑い
 運輸安全委員会の求めに応じ、10月24日に提出した、レールや分岐器等の損傷、摩耗量等を検査する一般検査等の管理データについて、その数値の一部に改ざんの疑いがあることを認めた。確認した事実関係は、以下のとおりである。

・一般検査等の管理データについて、大沼保線管理室及び函館保線所の関係職員に聞き取り調査を行ったところ、当該管理データを運輸安全委員会に提出する際に、一部の検査が実施されていないことを隠すため、函館保線所の管理職級の職員の指示により、管理データとして架空の数値等を保線システムに入力し、そのデータを提出した旨の口述が得られた。
・改ざんを行ったことを確認するための野帳等は既に廃棄されていたため、突合作業ができなかった。