No.670 (Re:625) 【JR海】東海道新幹線の保守用車脱線の原因と対策
ひろやす/伊藤(vnnc8158) 2024-08-06 23:43:18  
                           2024年8月 5日
                           東海旅客鉄道株式会社

東海道新幹線 豊橋駅〜三河安城駅間における保守用車脱線の原因と対策について

 2024年7月22日、東海道新幹線豊橋駅〜三河安城駅間で発生した保守用車脱線について、復旧に時間を要したことでご利用のお客様に多大なご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。調査を行った結果、原因について明らかになりましたので、対策とあわせてお知らせします。

1.概況
 2024年7月22日3時37分、豊橋駅〜三河安城駅間上り線において、東京方の豊橋保守基地に向かう途中の保守用車(砕石運搬散布車編成)が、合流するために待機していた別の保守用車(マルチプルタイタンパ(以下、マルタイという。)に衝突し、砕石運搬散布車編成及びマルタイの一部の車軸が脱線しました【別紙1】。

2.原因
 軌道モータカーに牽引された6両の砕石運搬散布車のうち少なくとも3両(※1)について、ブレーキ力が大きく低下した状態で走行していました。このため東海道新幹線では最大となる20‰の下り急こう配区間において十分に減速することができませんでした。なお、軌道モータカーのブレーキ力に異常はありませんでした。
 砕石運搬散布車のブレーキ力が大きく低下した状態で走行していたのは、ブレーキ力が適正か否かを確認するための指標となるブレーキシリンダーのストローク量(以下、ストローク量という。)が、本来ならば使用停止すべき値となっていた(※2)にもかかわらず、使用前にそのことを認識できなかったためです【別紙2】。その理由は、以下のとおりです。
(1)ストローク量を確認する際、最大圧力でブレーキをかけた状態で行うという保守用車メーカー想定の確認方法を採っていなかったこと【別紙3】。
(2)ストローク量の調整要否の判定について、当社から保守用車メーカーに対して判定方法の確認を行わず、両者の認識が異なり、結果的に誤った方法で判定していたこと【別紙4】。
 その結果、使用停止とすべき砕石運搬散布車を「使用可能」と誤った判断をするに至りました。
 なお、本来は当該保守用車の作業者が夜間作業の前にストローク量の確認を行うべきところ、7月20日の作業者は確認を行ったものの、7月21日の作業者は前日のストローク量をふまえ、確認を省略していました(※3)。

※1 その他の3両については衝突の影響で破損していたため確認できていません。
※2 事故後、正しい方法でストローク量を確認しました。
※3 ストローク量の確認を怠ったことはルール違反です。ただし、仮に確認していたとしても、上記(1)(2)の誤った方法では今回の7月21日の場面で、使用停止と判定することはできなかったものと推定しています。

3.対策
 保守用車の仕業点検におけるストローク量確認時のルールが不明確であるなど、管理体制が不十分であった反省を踏まえ、以下のとおりとします。
(1)ストローク量確認時は最大圧力でブレーキをかけること、ストローク量は数値で確認することを、調整要否を判定する基準値とともにマニュアル等に明文化します。また、その内容を関係する全ての保守用車従事者に教育します。
(2)要調整範囲に入った後の運用方法が不明確であったことから、仕業点検時にストローク量の要調整範囲に入ったことを確認した場合は、ストローク量の調整が完了するまでは当該の保守用車を使用しない運用とします。
(3)保守用車の使用について、全ての保守用車従事者に対するルール遵守の再徹底、及び履行状況の確認を行ってまいります。なお、ストローク量の調整が必要なブレーキ機構を有する他の保守用車(在来線の保守用車を含む)に対しても、上記全ての取組みを行います。

参考)
砕石運搬散布車:レールの下に敷かれている砕石を運搬・散布するための保守用車
仕業点検:保守用車の使用前(日中)に行う、エンジンやブレーキなどの動作状況の点検
ブレーキシリンダーのストローク量:ブレーキをかけた状態における、ブレーキシリンダーの伸び量
撮影日:
撮影場所:
キャプション:
画像サイズ: 1083×3333(30%表示)
発言URL: https://www.railforum.jp/ftrain/app/bbs.php?Xbno=114&Xvno=670